2020年2月のテーマ

おいしい物がたくさん出てくる

第一回は、

「お茶と探偵12 オーガニック・ティーと黒ひげの杯」

ローラ・チャイルズ 東野さやか 訳

コージーブックス 原書房 2013年発行

です。

 

ローラ・チャイルズはアメリカのミステリー作家です。広告業界で仕事をし、後に自らマーケティング会社を起こしたという経歴の持ち主。

彼女の描くミステリーは、コージーミステリーの代表格といってもいいくらいの心地よさです。

 

今回ご紹介する、お茶と探偵シリーズ主人公、セオドシア・ブラウニングは広告業界を辞めてティー・ショップ経営に乗り出したビジネス・ウーマン。頭が切れて、芯が強く、おもてなし精神に富んだ魅力的な南部女性です。

舞台はアメリカの南部、サウスカロライナ州チャールストン。古い街並みが歴史地区として残り、歴史や芸術を愛する人々が住む観光都市です。

 

アメリカで南部地方というと、何かと忙しい現代社会においても、ゆったりした生活ペースが主流の地域らしく、南部女性は言葉の音節を伸ばしたのんびりとした話し方をする、というイメージがあるようです。

ニューヨークを舞台としたアメリカのドラマなんかを見ていると、南部出身の女性はゆったりと貴婦人のようにふるまい、甘ったるい話し方をするキャラクターに誇張されて描かれていることもしばしば見受けられます。

 

セオドシアの経営するインディゴ・ティーショップチャールストンの歴史地区の一角にあり、店内はお茶に関係するあれこれでディスプレイされており、200種類近くのお茶が常備されて、絶品物のスコーンやティー・サンドイッチがいただける人気店です。

 

ミステリーとしてのストーリーもさることながら、ティーショップで出されるメニューの数々や、<テーマのあるお茶会>の特別なコースメニュー、イベントやパーティーへのケータリングメニューの魅力が、私の場合、この作品を読みたくなる動機の半分を占めています。

 

ミステリーとしては、いわゆる本格ミステリーと呼ばれる、作者との知恵比べが楽しめる作品を愛する方には物足りないと思います。

奇抜なトリックや、密室の謎、といったものはあまり登場しません。『この謎が解けるかな?』と言うようにフェアにヒントをちりばめてあるわけでもありません。

 

その代わり、歴史的秘宝や美術品、南部の逸話なんかがストーリーに絡められています

「ダ・ビンチ・コード」のように、歴史的背景をガッツリ調査して事件の要に据えられている、というわけではなく、さらっと表面をなでてストーリーに花を添えているという感じではありますが、知的好奇心がくすぐられます。

お茶に関するうんちくもさることながら、美術品や歴史に関するうんちくもたくさん出てきます。

 

ミステリー作品ではありますが、ティーショップ経営に力を注ぐセオドシアの魅力や、チャールストンで繰り広げられるイベントやパーティの魅力、インディゴティーショップのおいしそうな食べ物の魅力といった、本筋以外の魅力が非常に大きく、読んでいて居心地の良い作品です。

 

今回ご紹介した「オーガニック・ティーと黒ひげの杯」はお茶と探偵シリーズの12冊目なんですが、11冊目までは今はなき出版社、ランダムハウスで出版されていたので、中古でしか手に入りません。その為このシリーズをご紹介するにあたって原書房からの発行第一弾にあたる「オーガニック・ティーと黒ひげの杯」を選ばせていただきました。

 

コージーミステリー好きの方ならば、一冊読んだら、シリーズ作品を読みたくなること間違いなしだと思います。

読んだことない方、おすすめです。(*^▽^*)