さて、十一月の「閑話休題」です。

 

2019年11月のテーマ

「和製ファンタジー」

でおすすめしてまいりました。

 

日本の作家さんによるファンタジー作品は、児童書からヤングアダルトのジャンルで特に多いと個人的には感じています。

それは、ファンタジーというものが、やっぱり夢のあるジャンルだからだと思います。

非現実的な世界、存在しない生き物や植物、剣と魔法、騎士や姫君の活躍するおとぎ話。

ファンタジーならば難なく取り入れられる要素は、遠い世界への憧れをかきたてる一面を持っていると思うのです。

 

その一方で、ファンタジーは単なるおとぎ話とは全く別の物だといえます。

現代の文学上の定義はどうだか知りませんが、

「姫がいて、悪い魔法使いや怪物がいて、騎士の活躍で最後はハッピーエンド」とか、

「いたずらっ子が失敗から学ぶ教訓のお話」とか、

子供に読んで聞かせるためのお話がいわゆる"おとぎ話"だと私は思っています。

 

ファンタジーは必ずしも子供に読み聞かせるための物語ではありません。

非日常的な世界のお話でありつつも、登場人物たちの思いや悩みは現実世界を生きる我々と変わりなく、身近で心を寄せやすくなっています。それは、読者が登場人物に自分を重ねやすいということでもあり、物語の中を登場人物の目線で旅することができるということでもあります。

 

小説や漫画を読むとき、物語に入り込んで主観的に読む場合もあれば、物語全体を俯瞰するように一歩引いて客観的に読む場合もあると思います。

それは個人差ばかりではなくて、作品の種類だったり、作家さんの工夫によるものだったりもすると思うのです。

 

例えば、私の場合、ミステリーを読んでいるときは比較的客観的に読んでいます。

やはり謎解きや犯人当てを楽しむジャンルということもあり、主人公になりきって嘘の手掛かりに振り回されるよりは、自分の目線で主人公よりも早く謎解きしたいという欲求が生まれるからだと思います。

 

その点でいうと、ファンタジーは客観的に読むことはちょっとつらいジャンルだといえます。

作品の世界観が楽しめないと、そもそも読みたくなくなってしまうからです。

主観的にならないと作品の世界には入り込めません。

非日常の世界にどっぷりつかりたい…そんな人でないとはまらないジャンルかもしれません。

 

日本でファンタジー作品がこれだけ多く生み出されているということ、ハリー・ポッターや指輪物語などの海外作品の人気も高いこと、などを考え合わせると、日本ではファンタジーが愛されているといっていいのではないかと思います。

 

もちろん苦手な方もいらっしゃると思いますが、先ほど述べたように、読み方の違いで合わないということもあると思います。

私は、現代の奈良が舞台の小説、「鹿男あをによし」を、ファンタジー作品として紹介しました。

おとぎ話の要素はありつつも、大部分は現代の女子高が舞台の青春小説です。

SFと同様に、ファンタジーも実は広ーい分野にまたがっていると思いますので、ファンタジー苦手という方もどこかできっと出会っているはずです。

 

現実世界に疲れたら、ちょっと別世界に浸ってみるのもいいんじゃないでしょうか。

ゲームもファンタジー物、多いですしね。そちらで冒険されている方も、機会があれば本の世界のファンタジーに触れてみていただければと思います。

 

では次回は、去年に引き続き

2019年12月のテーマ

「クリスマスにはクリスティーを!」第二弾

でおすすめしたいと思います。

 

ご興味あればのぞいていただけると嬉しいです。(*^▽^*)