2019年11月のテーマ

「和製ファンタジー本」

第二回は、

「妖精国(アルフヘイム)の騎士」全27巻

中山星香 作、

秋田文庫 2001年発行(第一巻)

 

です。

 

長編ファンタジー漫画です。子供の頃、コミックスを集めていた友達から借りて読んでいましたが、長いお話なので、貸してくれていた友達と進学などで別れてしまってから数年の空白。最終回にたどり着く前に大人になったしまい、秋田文庫から出版になったものを成人してから買いました。(笑)

どうしても結末まで読みたかったのです。

 

作者の中山星香さんは日本のファンタジー界(漫画・小説含めて)の第一人者だと思います。

この作品はハイファンタジーで、妖精や魔物が出てくる伝説の世界のお話ですが、まず作品の世界観が徹底していて、その上に作者独特の美しく幻想的な絵で物語がつづられていきます。

世界観が徹底している一例としてあげますと、登場する様々な人物や国、アイテムの名前がもうファンタジーです。

 

・妖精の翼と呼ばれる薬草→日金花(ニールニカ)

・白妖精(ライトアルフ)

・妖精国・妖精の森(アルフヘイム)

・古代の聖なる国・剣の王国(アルトディアス)

 

などなど。

これに中山星香さんの繊細な絵が加わるとファンタジー以外の何物でもありません。

少女漫画ではありますが、ファンタジーファンならば老若男女楽しめる作品だと思います。

メインの主人公が女性なので、そこはやはり少女漫画だなと感じるところではありますが。

 

ざっくりいえば、伝説の三ふりの魔法の剣とその使い手に選ばれた三人が闇に覆われつつある世界を救う話です。

 

さわりだけ少し紹介しますと、古王国アルトディアスで保管されていた魔法の剣、銀月の剣(シルヴァン)光の剣(ルシリス)の使い手として双子の王子と王女が選ばれます。

三本のうち光の剣(ルシリス)はちょっと特殊な剣で、魔法の石(サフィール)がはめ込まれています。この剣だけは光と闇の両方の属性を持ち、光の剣でありながら破滅の剣とも呼ばれています。

 

国を滅ぼされ旅に出た光の剣(ルシリス)の使い手・王女ローゼリィは兄ローラントや同行の従者とはぐれ、妖精の森で保護されて数年を過ごします。やがて閉ざされた森を出て、もう一本の魔法の剣、陽の剣(ソレス)の使い手・アーサーと出会い、自らの運命に立ち向かいます。

時代を覆う闇、活発化する魔物たち、離ればなれの兄、祖国を滅ぼした相手への怒りと復讐心。

苦難に満ちたローゼリィの旅ですが、愛や友情、師弟の絆に支えられ一歩一歩進んでいきます。

本筋はシリアスな物語ですが、ところどころユーモアも交えてありますし、コメディタッチのシーンもありますので、暗くはありません。

 

ここで、秋田文庫版の1巻の解説で高千穂遥さんが書かれていることを引用したいと思います。

『「妖精国の騎士」、これは日本のファンタジーの金字塔的作品です。「ナルニア国物語」にも「指輪物語」にもけっしてひけをとりません。そう断言することができます。』

 

完全に同意です。

はじめてこの解説を読んだときに、そう感じているのが私一人ではなかった。文学界で活躍されている方が同じように思っているんだということに感激したものです。

 

ですので、ぜひともおすすめしたい作品です。本格ファンタジーが好きでまだ読んだことないという方、もったいないですよ。手に取ってみてください。(*^▽^*)