2019年8月のテーマ

「ぞっとした本」

第二回は、

「罷嵐」

吉村昭 作

新潮文庫 1977年発行

 

羆嵐 (新潮文庫) 羆嵐 (新潮文庫)
562円
Amazon

です。

 

吉村昭さんという作家さんについて、お恥ずかしながら私はあまり知りません。

というのも、この一冊しか読んだことがないからです。

しかし、名前は図書館や書店などで目にしたことがあり、印象として、「ノンフィクション作家もしくは歴史小説家」「骨太の作品を書く作家」というイメージがあります。

「ノンフィクション作家」と私が思ったのは、この作品が実際に起こった事件を元に書かれたものだったからというのと、吉村さんの他の作品名からの類推です。

また、作風についての印象も、この作品を読んで感じたことと、(私が読んだ本はカバーが外されていて表紙のデザインを見ることがなかったのですが)新潮文庫の表紙の、この迫力…。こういった本の装丁から来ています。

ですので、吉村昭さんのファンの方がもしこのブログをご覧になって、的外れだと感じられましたら、すみません。

 

で、この『羆嵐』という作品なんですが、先ほども少し書きましたとおり、かつて実際に北海道で起こった事件の推移を小説として描いたものです。一頭の大きなヒグマによって、開拓民の村が一つ消えてしまうほどの被害がもたらされたという事件。残っている記録や資料を詳しく調べて書かれている、というところが、リアリティがありすぎて怖かったです

 

内容には詳しく触れませんが、ヒグマは北海道の自然の驚異だと感じました。

そして、ヒグマに恐怖を感じてぞっとしたと同時に、大自然を開拓して北海道の大地に定住を果たした開拓民の方々に脱帽しました。

 

それにしても怖かった。

怖くて、途中で読むのをやめられませんでした。

早くこのクマを何とかしてええええ(T△T)…という気持ちでした。

 

実際、この作品は私にとってトラウマになっています。

動物園でクマを見たときに、「かわいい!」とはもはや思えなくなってしまったのです。

小さいクマが一頭か二頭で飼育されている分にはまだ恐怖とまではいきませんが、体の大きいホッキョクグマだったり、たくさんのクマが広い運動場で多頭いた場合には、この作品を思い出してしまい、早々に立ち去ります。

 

また、余談になりますが、この作品を読んで、不意に子供の頃見たアニメの記憶がよみがえってきました。

『銀牙-流れ星 銀-』という、北海道でヒグマと闘う犬達の物語でした。

うろ覚えの記憶をかき集めて説明しますと、(おそらく)マタギの家でヒグマと闘うために育てられた犬の銀(主人公だったと思う)が父を殺したヒグマに復讐を誓い、仲間の犬とともにヒグマと闘う…というアニメです。

犬同士の会話は人間のように交わされていて、熱血青春漫画風のストーリーだったと思いますが、敵として出てくるヒグマが子供心に怖かった…(T△T)。

なんで観てたんでしょうね。怖いのに。

 

私の場合、『羆嵐』がトラウマになってしまったのは、子供の頃のアニメから受けた恐怖というものが下敷きにあったからかもしれません。

 

今回、怖い怖いとばかり書いて、あまり作品の紹介になっていなくて申し訳ありませんが、この作品の一番怖いところは「リアリティがあること」です。一度読んでみてください。(*T△T*)