2019年4月のテーマ

「動物が好きになるかもな本」

第三回は、

「ドリトル先生アフリカゆき」

ヒュー・ロフティング 作、井伏鱒二 訳

岩波少年文庫 1951年発行(2000年 新版発行)

 

です。

 

はい。児童書です。それもかなり古典。井伏鱒二さんの訳で1951年初版ですから、ロングセラーです。

一応、対象年齢が、小学3、4年以上となっています。ドリトル先生シリーズの1となっていますので、この本をあげました。

というわけで、今回は、

 

「主にお子さんたちが動物に興味を持ってもらえるかなー…」

 

という本をチョイスしてみました。

 

大人の方は、懐かしいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

動物と会話ができる名医、ジョン・ドリトル先生が、サルたちを疫病から救うためにアフリカに向かうお話です。

今、さら~っと"動物と会話ができる"って書きましたけど、児童書の中からドリトル先生シリーズを選んだ理由の一つがここにあります。

児童書って、絵本も含めて、動物を擬人化している作品、多いですよね。

そして多くの場合、本の中では動物たちが人間みたいに生活していて、他の種類の動物同士が同じ言葉でしゃべって意志疎通していますよね。

 

もしくは、人間の言葉を話す動物が、人間と普通に会話する。この場合だと、文化の違いみたいなものはあるけれど、コミュニケーションはとれる、という設定になっているわけです。

 

でも、ドリトル先生は違います。ドリトル先生は、動物の言葉を習ってしゃべれるようになるんです。初めてしゃべれるようになったのは、鳥語。オウムのポリネシアが先生になって教えてくれました。ドリトル先生の世界では、動物同士は互いに動物語でしゃべって意志疎通が可能です。ですから、犬語とか、ブタ語とかを個別におぼえる必要はないわけですが、それでも動物語を勉強してマスターします。そして、動物の言葉が話せるお医者さんは、動物の世界で有名になります。だって、普通の獣医さんは、動物の言葉が分からないので、頓珍漢な治療をされることになるからです。

ドリトル先生の家にはたくさんの動物が同居しています。アヒルのダブダブ、犬のジップ、ブタのガブガブ、オウムのポリネシアなどです。

動物たちとドリトル先生のやり取りは、ユーモアにあふれていて愉快です。また、ドリトル先生が無類の動物好きだということも伝わってきます。

 

この本には出てきませんが、シリーズ中でドリトル先生は動物語だけでは飽き足らず、虫ともコミュニケーションが取れないか試行錯誤を重ねます。

 

動物と友達になるために、言葉を覚える努力するというのが、たくさんの、動物が登場する他の本とは違うところかなと思います。

 

私は大人になってからドリトル先生シリーズを読みました。小学生の頃に読んでいたらもっと好きになっていたかもしれないと思いました。実は、小学校時代の友達に、「好きな本は、ドリトル先生の本」と言っていた子がいるんです。その子は私にも読むよう勧めてくれたんですが、学校の図書室にありませんでした。また、田舎に住んでいたので、図書館は子供が一人で自転車で行けるような距離にありませんでした。友達は誕生日だがクリスマスだかのプレゼントでもらったそうで、大事にしている本でしたので、気軽に「貸して」とは言えず、それっきり読む機会を逸してしまったのです。

 

その後、その友達は「人間のお医者さん」になりました。職業の選択と、ドリトル先生の本との関連はたぶんないでしょうが、ドリトル先生が「動物のお医者さん」であるだけに(その子からどんな本なのかは聞いていました)、なんとなく印象深く覚えていたのです。それで大人になってから、たまたま図書館で目について読んでみましたが、奇想天外でユーモラスな物語に引き込まれました。

 

というわけで、大人のみなさまも興味のある方は、読んでみて損はないと思います。

 

蛇足となりますが、ドリトル先生の逆バージョン…つまり、動物が人間の言葉を習得して人間の仕事に就いちゃった、というお話もあります。

この作品だけではないと思いますが、私のおすすめは

 

「きつねものがたり」

です。

 

拾われて農場で世話されていたきつねが、人間の言葉と文字を練習して習得します。農場の犬たちに追い出されて野生の生活に戻りますが、最終的に「森番」という森の番人の仕事に就き、人間のように手紙を書いたり森をパトロールしたりします。

そんなきつねは他にいないので、人間たちは驚きます。

 

ドリトル先生とは全く趣が違いますが、どちらも「努力して動物と人間の間の壁を越える」というプロセスを踏んでいるところが面白いなと思います。ウサギもリスもブタもゾウも人間もはじめから会話ができてみーんな仲良し。というのでは、「動物に興味をもつ」とはいかないと思うんですよね。今回のテーマはあくまでも「動物を好きになるかもな本」ですので。

 

ドリトル先生シリーズ、おすすめいたします。ちなみに、今は新訳版が、角川つばさ文庫から出ていますので、そちらの方がお子さんには読みやすいかもしれません。内容はおなじですけどね。(*^▽^*)