さて、11月の"閑話休題"です。

2018年11月のテーマ

元気が出るかも!?な(心理学、ハウツー、自己啓発の)本

はいかがでしたでしょうか。

"元気が出るかも!?"を基準に選んだので、ラインナップに入れなかったのですが、今回どうしてもご紹介したい本があるので、ここで書かせていただきたいと思います。

 

「夜と霧」<新版>

ヴィクトール・E・フランクル 著、池田香代子 訳

みすず書房 2002年発行

 

夜と霧 新版 夜と霧 新版
1,620円
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です。

この本は、ドイツの強制収容所に収容されていた精神医学者の著者が、収容所という特殊な環境下で被収容者がどのような心理的危機に直面したかを、自らの体験に基づいて綴ったものです。

収容所での劣悪な待遇や過酷な労働、とても人間に対するとは思えない対応の数々についても書いてありますが、フランクルは被収容者でありながらも、精神医学者として少し距離を置いて被収容者の心理面について記録しています。

「内側から見た」収容所の記録として非常に貴重な文献であるとともに、人間の心というものの強さも弱さも見せつけられます。

 

一旦強制収容所に入ると、文字通り何もかも奪われます。

持ち物はすべて奪われ、体中の体毛を剃られ、与えられた服を着せられます。

名前ではなく番号で呼ばれ、個性というものが一切なくなり、個の存在から集団の一部になってしまう。

この本には、ホラー小説のような残虐な殺戮の描写はありません。

けれども、命が軽々しく扱われる環境で、人間の心と体が次第にすり減っていく様子が、生々しく描かれています。

 

なぜ、この本のことを取り上げたかったかというと、「自分の運命を何一つ自分で決められない状態にあっても、人は生きている。」というところに心揺さぶられたからです。

現代は、人生の意味や、どのように生きていくか、考えることを求められる時代です。

考えること、選択することは、時につらいものですが、「夜と霧」を読んだ後では、選択できる自由のありがたさに気づくことができます。

また、"未来に目的を持てないこと"が被収容者の心を蝕んだというようなことも書いてあります。

生き残った被収容者たちがどのようにこの試練と戦ったのか、想像もつきません。

ひとりひとりの名もなき人々の"生きる"という戦いに、ただただ感動しました。

同時に、身が引き締まるような思いもあり、精いっぱい生きたいという気持ちにもなりました。

 

戦後まもなくフランクルによって書かれたこの体験記は、日本でも1956年に旧版が発行され、2002年に新版が出ました。

それだけ長い間、日本人の間で読み継がれてきたのです。

心理学の本、と言ってしまうには抵抗がありますが、ご紹介したかったので、いささか強引ですが、11月のテーマに絡めておすすめさせてください。

 

さて、12月のテーマについてですが、私の大好きなアガサ・クリスティーの本の中からご紹介しようかと思います。

かつて、まだクリスティーが存命中、晩年のクリスティーはクリスマスに合わせて年一冊のペースで新作を発表しました。

そこで、冬になると出版社が「クリスマスにはクリスティーを」のキャッチコピーで新刊の宣伝をしたそうです。

というわけで、

2018年12月のテーマ

クリスマスにはクリスティーを!

でおすすめしていきたいと思います。(*^▽^*)