2018年10月のテーマ
ちょっと怖い魔女が出てくる本
第二回は、
「蒼ざめた馬」
アガサ・クリスティー 著、高橋恭美子 訳
ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 2004年発行
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蒼ざめた馬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
929円
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です。
作者のアガサ・クリスティーは言わずと知れたミステリの女王。
説明不要なくらい有名ですよね。
クリスティーの作品といえば、ポアロやミス・マープルといった名探偵のシリーズを思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、シリーズものになっていない長編作品もたくさんあり、その内容もスパイ物から恋愛物とバラエティーに富んでいます。
その中でもこの「蒼ざめた馬」はいわばオカルトミステリーといった作品になります。
クリスティーの作品を読んでいると、一昔前のイギリス人はオカルトが大好きだということがよくわかります。
大の大人が集まって降霊会をやったり、魔女伝説のある丘に人が集まったり、田舎の小さな村には"魔女"と目されている一人暮らしの変わり者のおばあさんがいるといったエピソードがたくさん出てきます。
「蒼ざめた馬」にでてくる"魔女"は、いわゆる"昔ながらの田舎の魔女"に当たるのですが、もう少し説明しますと、"田舎の魔女"はちょっと風変わりだけどいたって普通のおばさんです。でも近所で子供がけがをしたときなんかに「あの子はこの間うちの猫に悪さをしたんだ。その罰が当たったんだよ。」などとつぶやいたり、気に入らない相手をじっと見つめて不吉な言葉を投げかけたりと、薄気味悪い行動をとって周囲からちょっと浮いています。村人たちは完全に彼女が魔女だと信じているわけではないのですが、彼女に恨まれて祟りがあってはたまらない、というわけでときどきケーキなんかを差し入れて機嫌をとったりします。
そう、「蒼ざめた馬」の"魔女"は前回の「魔女がいっぱい」と違って、ちゃんとした人間のおばさん達なのです。
霊媒の能力があるとか、魔女の血筋だとか、オカルトチックな能力があるとほのめかすおばさん達です。
三人いるのですが、このおばさんたちが呪いをかけた相手は死んでしまう・・・それも死因はバラバラで明らかに病死。果たして本当にそんなことができるのか?
しかもそれがビジネスとして闇で行われている?
主人公のマーク・イースターブルック青年がその謎を解き明かそうと奮闘します。
ミステリー小説であることはあるのですが、普通の生活を送っているおばさんたちが邪悪な呪いの儀式をしているなど、ぞっとする要素がたくさんあって、オカルト色の強い作品です。
そして文句なしに面白いです。
また、この小説にはアリアドニ・オリヴァ夫人というミステリー作家が出てくるのですが、このキャラクターはクリスティーの分身的なキャラクターといわれていまして、ポアロのシリーズを含めてクリスティー作品にたびたび登場しては読者を楽しませてくれる個性豊かなキャラクターなのです。ぜひご注目ください。
クリスティーの傑作オカルトミステリー。ぜひおすすめいたします。(*^▽^*)