2018年7月のテーマ

夏休み間近!子供と一緒に読みたい児童書(園児~低学年)

 

第六回は、

「車のいろは空のいろ 白いぼうし」

 あまんきみこ さく、北田卓史 え  2000年 新装版発行

 

 

旧版は1968年初版で、「車のいろは空のいろ」というタイトルでした。

2000年に新装版が発行され、シリーズは全三巻あります。

その一巻目です。

私は子供の頃にシリーズの一、二巻を読んだことがありましたが、

最近三巻目を初めて読みました。

初めて読んだのに懐かしい感じがしました。

 

このシリーズの主人公は松井さんというタクシー運転手さんです。

彼は空色のタクシーに毎日いろんなお客さんを乗せて走っています。

彼のタクシーには時々変わったお客さんが乗ってきたり、不思議な道に迷いこんだりします。

そして、戦争を思い起こさせる出来事も体験したりします。

三冊の中で一巻をおすすめするのは、やはりこの本がシリーズの原点だという気がするからです。

このシリーズの魅力は、タクシーの乗客とのかなり不思議な体験を、実にほのぼのと描いているところにあると思います。

それには松井さんの人柄が大きく影響していると感じます。

 

運転手さんとお客さん。タクシーという密室で二人きりです。

もしもお客さんが人間じゃないとわかったら・・・普通だったら怖いと思うんですが、松井さんはどきどきしながらも人間のお客さんと同じように会話をしたり、聞き役にまわったり。そのうち怖さを忘れて相手とのやり取りを楽しんでしまったり。

一方で、"抵抗なく不思議を受け入れる"というのとはちょっと違っていて、ちゃんと状況や相手の様子を分析しているうちに怖さが薄らいでいくという感じなのが無理がなくて共感できるのかなと思います。

一巻の中で私の好きな話は「くましんし」と「やまねこ、おことわり」です。

「くましんし」では、人間に化けて人間の世界で暮らすくまの悲哀が少し感じられますし、「やまねこ、おことわり」では人間に化けたやまねこが急いで家族のもとに行きたくてタクシーに乗ってくるのですが、"やまねこ、おことわり"って書いてなかったから乗せてもらったというようなことを言うので、人間の世界で遠慮しながら生きているのかなあなんてちょっと同情してしまったりするのです。

松井さんのタクシーには人間に化けた動物が乗ってくるお話がほかの巻にもありますが、たいていが彼の"空色のタクシー"を気に入ってまた乗りたいと言ってくれます。

運転手の松井さんはお客さんを目的地に乗せていくだけなのですが、びっくりしたり、怖い思いをしたり、うれしくなったり・・・そういった感情の動きをやさしい筆致で描いてあるのがこのシリーズなのです。

 

というわけで、ほのぼのとした不思議体験をしてみませんか?(*^▽^*)