2018年7月のテーマ
夏休み間近!子どもと一緒に読みたい児童書(園児~低学年)
第五回は、
「いやいやえん」
中川李枝子 さく、大村百合子 え 1962年発行 福音館書店
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いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)
1,361円
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スタジオジブリの宮崎駿監督に影響を与えたといわれる、中川李枝子さんの本です。
この「いやいやえん」はやさしい文体で書かれていて、小学校低学年のお子さんなら自分で読めると思います。
"ちゅーりっぷほいくえん"に通う、しげるくんという男の子のお話なので、小学生なら幼稚園や保育園のころを思い出してちょっとお兄さんお姉さんになった自分というものに気づけるのではないでしょうか。
また、現在幼稚園や保育園に通っているお子さん方には、"ちゅーりっぷほいくえん"や"いやいやえん"という舞台が自分たちの通う幼稚園や保育園と同じような園、ということで共感を持てる部分もあるかと思います。
この本をおすすめしたいのは、しげるくんを見て子供たちが必ず何かを感じてくれる、と思うからです。
"何か"と書いたのは、人それぞれでその"何か"は全然別のものだからです。
「あたりまえじゃないか!」と思われるかもしれませんが、もう少し説明させていただくと、しげるくんという男の子はとても元気な子で、しばしばルールを破ったり、友達とけんかをしたり、いじわるをしたり、大人から見ると注意したくなるような行動をします。
その結果、一人で鬼のいる山に残されたり、「いやいやえん」というルール無用の保育園に連れて行かれたり、意地悪していた女の子の真似を自分の意思に反してやめられなくなったり、します。
上記のように書くと、一見、悪いことをして罰が当たったように見えますが、物語全体を読んでいると、しげるくんがそのことによって特別怖い思いをして反省したとか、ルールの大事さを学んだとかいう風には受け取れないのです。
山に一人で取り残されたお話では、ちょっとした冒険をしたといってもいいと思うのですが、しげるくんは戻ってきてからそれで逞しくなったとかそういうことはないのです。ただ、しげるくんなりに何か感じるところはあったろうな、と思わせてくれます。
読んでいる(読んでもらっている)お子さんたちがしげるくんに近い年齢であれば、きっと彼と同じように一つのお話の後で"何か"感じてくれることでしょう。
作者の伝えたい思いを伝える本ではなく、自分の感性で"感じて"もらう本なのだなあ、と私は思います。
余談ですが、この本は、"しげるくんがいたずら(もしくは冒険)をする"というお話ばかりではありません。
やまのこぐちゃんという新しい友達がちゅーりっぷほいくえんにくる話や、くじらを捕まえに年長組の子供たちが海へ冒険に出る話など、楽しいシュチュエーションのお話もありますので、バラエティに富んでいます。
書かれた時代から50年は経っているので、ちゅーりっぷほいくえんのルールが今の時代から見ると厳しすぎるきらいもありますが、そこはそれ。お話の内容自体は古く感じることはないと思います。
私は子供のころ何度も図書室で借りて読んで、大人になってからこの本を買いました。(ちょうどフリーマーケットで見つけまして)
くだものやビスケットなど食べ物も小道具としてたくさん出てくるので、食いしん坊な私にとって忘れがたかったのかもしれません。
食べ物の話はさておき、古びない名作の一つとしておすすめいたします。(*^▽^*)