思い立ったのはまたしても前日

 休みの前日に突然嫁さんから伊勢志摩の鳥羽水族館への日帰り弾丸ツアーを持ちかけられて出かけたのはちょうど一年前でした。
 日頃マイカーで出歩くことが多いのですが、寝ていれば到着する電車の旅も悪くないとその時実感しました。そして鳥羽水族館は見どころ多数で閉館時間まで粘ったにもかかわらずまだまだ見たりない感じで水族館を後にしたことを覚えています。そして息子くんのイヤイヤ発動もあって嫁さんが楽しみにしていた海の幸にありつくこともできませんでした。
 
 そんな心残りがいっぱいの伊勢の地へのリベンジを嫁さんはひそかに狙っていたんでしょうね。珍しく私も嫁さんも仕事が休みとなる土日を前にして、嫁さんから突然泊りがけでの伊勢志摩旅行を持ちかけられます。
 
え?明日行くってこと?
 
息子くんを速攻で寝かしつけて、作戦会議を始めるころには夜10時をまわっていました。
 具体的なプランについてすでにいろいろと下調べはしてくれていました。問題は宿なのですが、さすがに前日となると人気の宿はすべて埋まっています。空いてる宿はビジネスホテルか高級な宿で大人2名+幼児でディナー無しで総額6~7万円。ちょっと手が出ません。
 
あきらめムードのなか、嫁さんが離島の小さな旅館に目を付けました。
 
「ここ食事の評価がすごい高い」
 
鳥羽から市営定期船で20分ほどで着く答志島にある「八島」という旅館です。

 

 

 ぱっと見、昔ながらの旅館といった風情ですが、「竜宮料理の宿」と謳っているだけあって料理に期待できそうです。なんといっても夕食、朝食がついた「海女さん応援プラン」に幼児用の料理をつけて家族全員で総額3万円ちょいという安さは魅力です。ポチっと予約ボタンを押して我々の伊勢リベンジツアーがスタートしました。

 

最強パスポート「まわりゃんせ」

 「まわりゃんせ」とは近鉄が企画する伊勢・鳥羽・志摩への往復乗車券・特急券と22の観光施設への入場券、伊勢志摩エリアの近鉄電車、バス、船が乗り放題になる特典がセットになったスーパーパスポートです。
大人11,000円、こども6,000円のこのパスポート、4日間有効なのですが今回の一泊旅行でははとても特典を使い切れませんでした。それでもどれだけ得になったか計算してみましょう。
 
パスポートを使わなかった場合の大人1名あたりの料金で試算
  • 乗車・特急往復料金(奈良⇔鳥羽)8,520円
  • 志摩スペイン村入場料金 5,700円
  • 駅⇔志摩スペイン村間のバス(往復) 900円
  • イルカ島へのツアー 2,300円
  • 鳥羽水族館入場料金 2,800円
  • 答志島定期船(往復) 1,100円
上記合計で21,320円となるところが、この11,000円のパスポートですべて賄えたので1万円以上お得になりました。すごい!半額ですね。
 
4歳の息子くんはそもそも電車料金は無料なので、このパスポートは不要にも思えたのですが特急車両の座席確保、各種施設の入園料などを考慮してこども用のパスポートも買う事にしました。
 
 このパスポート、主要駅で購入できるのであらかじめ購入しておけばよかったのですが、今回は当日朝に買うしかありません。駅の窓口は朝7:00にしか開かないので志摩スペイン村の朝の開園時間に着く電車には乗れませんでした。

出発、志摩スペイン村へ

 天気予報やその他を考量して、初日は志摩スペイン村、二日目に鳥羽水族館というプランです。息子くんに鳥羽水族館に行くと言ってしまうと初日に行きたいと暴れて面倒くさいことになりそうなので、遊園地に行くと言って息子くんを連れ出します。
 
特急キター!
 
ラグジュアリーな特急「しまかぜ」には朝早い便はなく、ビスタカーの2階席にしました。予期せぬ電車の旅に終始ご機嫌です。
 
車内で朝食をとって、おやつを食べて、車内を探索して
 
あっという間に鳥羽に到着
 
志摩スペイン村の最寄りの鵜方駅に向かう特急に乗り換え
 
鵜方駅から志摩スペイン村まで直行バスで10分ちょいで到着
 
土曜日ですが、それほど混雑していません。
 
とりあえず、ジェットコースターなどのアトラクションが揃っているフィエスタ広場周辺に向かいます。
 
アトラクションの身長制限は90cm、100cm、110cm、130cmの4段階。107cmの息子くんは下から2段階までですが、これで半分以上のアトラクションに乗ることができました。
 
まずは急流すべりのある「スプラッシュモンセラー」に挑戦。大喜びです。
続いてレーザー銃で魔王を倒すというアトラクション「アルカサルの戦い”アデランテ”」に誘いますが、入ったところで「怖い」と断固拒否されて後戻り。
気を取り直して身長90cmから楽しめるジェットコースター「キディモンセラー」に乗ります。
 
この笑顔。はるばる連れてきた甲斐がありました。
 
そこそこスピード出てますが、笑ってる?
 
やっぱり笑っていました。
 
どのアトラクションも待ち時間表示は長くて20分。実際にはもっと短い時間で乗ることができました。USJの混雑に慣れた我々にとっては快適そのものです。
 
ここで、嫁さんが最恐コースター「ピレネー」に乗りに行ったので息子くんと次のアトラクションを選ぼうとしていたら…。
 
ガウディ建築風の広場「フィエスタ広場」に吸い寄せられていきます。
 
なんてことはない広場なんですが、大喜びで駆け回ります。
 
モザイク状のタイルにお気に入りの色を見つけては「隠れた財宝発見!」などと喜んでいます。
 
大人は子供が喜ぶだろうと決めつけて遊具やアトラクションに連れて行きがちですが、こんなにも広場を楽しめるなんて思いませんでした。
 
園内のレストラン「アミーゴ」のテラス席で昼食をとりながら、パレードを待ちます。
 
ちょっとしたことでご機嫌ナナメとなった息子くん、「パレードは見ない」と首を背けてました。イヤイヤ期、終わったとは言えたまに面倒くさくなるのは相変わらずです。
 
昼食後向かったのは屋内の3Dシューティングアトラクション「オバケハンター3D」。定員13名の完全入れ替え制で、360度円形スクリーンの真ん中に座り3Dメガネをかけて学校内に次々と現れるオバケを撃って得点を競うものです。オバケを倒すだけでなく”ソウル”となった魂を吸い取ることで高得点となるルールで、正直息子くんには操作が難しかったと思うのですが、体験自体が楽しかったようで、今回一番楽しかったアトラクションはこれなのだそうです。
結局、フィエスタ広場周辺だけで昼過ぎまで遊んでしまいましたが、ここは園内全体の1/4にも満たないエリアです。今夜の宿がある答志島へ渡る船の乗船時刻から逆算するとそんなに遅くまでは滞在できないので、とりあえず広く浅くでも園内を回ろうということになりました。
 
カルメン通りのイルミネーションライド「くるみわり人形」をゆるーく体験。人形の顔マネしてくれました。
 
そのままサンタクルス通りに向かいます。遠くに「ハビエル城博物館」が見えますね。
 
ところどころに映えスポットがあります。
 
坂道をずんずん下っていきます。
 
そんなに下って行っちゃうと戻る時大変だよと思ったのですが、このまま進んで正解でした。
 
コロンブス広場まで下りきったところでそのまま池を時計まわりにまわってハビエル城博物館のほうから戻るルートにすると
 
「太陽の洞窟」を抜ける上り坂区間にはエスカレーターがあるのです。Uターンしなくて進んでよかったです。
 
がらんとしたコロシアム。キャラクターミュージカルが催されるんだそうです。
 
マヨール広場まで戻ってきました。壁画に囲まれて不安そうです。
 
異国情緒が味わえます
 
シベレス広場です。広場を取り囲むように場所取りして座り込んでる人たちがいました。何か始まるんでしょうけど、時間がありません。
 
いっぱい歩いてちょっと疲れてきましたかね?
 
これにて志摩スペイン村は終了。じっくり遊びつくすにはもう一日必要でしたね。
ここから鳥羽までバスと電車で戻り、鳥羽駅近くの鳥羽マリンターミナルに向かいます。
 
定期船を待つ間も広場で遊んでました。どうやら疲れていなかったようです。
 

旅館へ到着

 定期船に乗って20分ほど、答志島で下船します。旅館「八島」へは子供でも十分歩いて行ける距離ですが、お迎えの車が待っていました。そして旅館の人たちの温かさ、感じの良さが敷居をくぐってすぐに伝わってきました。ロビーには自由に部屋に持って行って遊べるおもちゃが山積み。子連れにも優しいようです。部屋はオーシャンビュー。ただ建物自体の設計の古さは隠しようがなく、各部屋には風呂もトイレもありません。エアコンや共用のトイレ等の設備自体はちゃんと手をいれてる様子がうかがえます。嫁さんは部屋にトイレがないのは辛いと漏らしていましたが、そんな不満も圧巻のおもてなし料理を前に消しとびます。
 
閑散期だからでしょうか?料理はお隣の空き部屋に用意されていました。
 
伊勢海老ど~ん
 
船盛りにも伊勢海老のお造りに生きたエビ、あわび、ヒラメの活け造り
 
牡蛎ばーん。私、牡蛎は苦手なんですが、これは美味しくいただけました。
 
旬のトロサワラのお刺身、鯛の塩焼き、えび、てっちり!、写ってないけどフグの唐揚げもありました。
 
もともと小食な私たちにとって、もう食べきれないっていうくらいのボリュームですが、意外と胃袋に収まります。しっかりご飯までいただいてもう満腹。
 
お風呂は昔ながらの男湯と女湯で規模に大小がついてるタイプでしたが、翌朝は男女入れ替え制となってました。
 
満腹と疲れもあって、息子くんも添い寝をするまでもなく独りで眠りにつきます。
 
翌朝胃もたれするかと思いきや、すっきり。新鮮な魚介料理は消化もよく体にもやさしいのですね。部屋からは港が見えました。
 
で、朝食がまた美味しくてご飯がすすみます。昨晩の伊勢海老のお頭が、みそ汁に入っていい出汁が出ています。
 
 当初息子くんも「これがホテル?」と怪訝そうだったのですが、アットホームな接客と雰囲気にすっかりなじんで、帰るころにはロビーのソファで宿のおじいさんの横に自ら座りに行って気楽に話しかけていました。
 
ほんんとにいい宿でした。
 
港に行くと、収穫したワカメを処理していました。
 
定期船で鳥羽マリンターミナルに向かいます
 

鳥羽湾めぐりとイルカ島ツアー

 「まわりゃんせ」のパスポートで参加できる「鳥羽湾めぐりとイルカ島ツアー」、ちょうど定期船のつく鳥羽マリンターミナルから出発します。大型の遊覧船は豪華なつくりです。
 
後部デッキに人が集中しているので見に行くと、エサ目当てにカモメが大集結していました。エサは船内で販売されているかっぱえびせんです。
 
トンビも乱入。
 
放り投げたかっぱえびせんを
 
見事にキャッチしていました。
 
イルカ島へは15分ほどで到着。のんびりと下船して失敗しました。イルカに餌やりができる「イルカのおやつ」は先着順ですでに申し込みの長い行列ができていました。
並ぶ間もなく完売。申し込みに漏れた人たちはイルカショーのイベントまで待ち時間を消化するためにみなさん展望リフト(これは有料)で山頂に消えていきました。
 
ぽつんと残された私たち。
 
えさやりをちょっと覗いてみます。
 
 イルカのプールは思ったよりも狭く、ショーを待つよりも鳥羽水族館に時間を割いたほうがいいだろうと次の便でそそくさと戻ることにしました。船は「真珠島・水族館前」に寄ってれるので移動は楽です。

鳥羽水族館

2回目となった鳥羽水族館。息子くんもワクワクが止まりません。前回気に入った「奇跡の森」を楽しみにしています。
 
水族館前に着いたのが10時50分ごろ。入館切符売り場には長蛇の列ができていました。パスポートを持っている我々は不要だろうと入場ゲートに並ぶと切符売り場で手続きが必要とのことで並びなおします。
 
ちょうどアシカショーが始まるタイミングだったのでまずそちらに向かいます。奇跡の森に行きたいという息子くんに「あとでな」。会場は満席で立ち見も出ている混雑でした。
 
これが終わると、今度は一日一回しかないペンギン散歩の時間。観客の大移動が始まります。しかし息子くんは「奇跡の森」ゾーンに行きたいといって譲らず大荒れ。あまりの言いたい放題ぶりに私もキレてしまい大泣きさせてしまいました。
 
結局ペンギン散歩は人込みから離れたところで号泣している間に終わり、観覧から戻った嫁さんが険悪なムードを察してタコをタッチできるエリアに誘導してなんとかとりなしてくれました。
 
ジュゴンも人だかり
 
ラッコのお食事タイムも長打の列。かぶりつきで立ち止まって見ることができるゾーンと立ち止まれないけれども少し高いところから見ることができるゾーンにわかれていました。
 
我々は出遅れたので立ち止まることが許されていないゾーンを行きます。ベストショットは狙えませんでしたが、かわいい姿は観ることができました。
 
ラッコは現在国内で3匹しかおらず、そのうち2匹がここにいます。海外からの輸入も途絶えているために国内でラッコを観ることができるのもそんなに長くないのです。
 
息子くんが楽しみにしていたイロワケイルカにも再会しました。
 
昼過ぎになるとジュゴン前の人込みも少し減ってきました。
 
ようやく「奇跡の森」エリアに到着
 
いろんな生き物が飼育されています。
 
スナドリネコ
 
息子くんが夢中になっている隙に嫁さんには消化できてない水槽を観にいってもらうことにします。
 
海遊館と違い、ルートが決まっておらず好きなところを何度でも見て回れるので夢中になっているとあっという間に時間が経って帰る時間がきてしまいました。息子くんも完全に機嫌も戻ってニコニコしたまま水族館を後にします。
 
帰りの特急を待合室で待っている間に眠りに落ち、自宅近くの在来線に乗り換えるまで爆睡。こうして長いようで短かった伊勢志摩一泊旅行は終わりました。
 
今回、突然企画した割にはうまいぐあいに各施設をまわれました。ただ、志摩スペイン村はまだまだ未消化ですし、鳥羽水族館は何度でも行きたくなる魅力にあふれています。そう遠くない将来、その威力にあらためて驚かされたスーパーパスポート「まわりゃんせ」を活用してまた訪れることになりそうです。