夫の知り合いのお葬式に参加してきました。
場所はアキムのチェビ(Kyebi)というところで、亡くなったのはその方のお父様。
たしか80は超えていた方なので大往生と言っていいでしょう。
そこの力のある王族のおひとりなんだそうで、自身の出身地ということもあり
現大統領も参列されるような大きなお式でした。
そのため朝早くから警察やら軍隊やらがてんこ盛りで周辺道路や
会場をチェックしまくっていました。
こちらはまだ開催前の静かな(?)会場。
ガーナのクリスチャンのお葬式カラーは赤と黒です。葬式用の服にはそれに茶色が加わります。
黒、赤、茶、単色でも複数ミックスでもOK。
遺族は別に、亡くなった方の年齢にあわせて黒オンリーとか黒と白、白オンリー等々
おそろいの布地で喪服を作成します。
その時に作った服は他のお葬式に着ても問題なし。
私も義両親の時にそれぞれ作った喪服を他人様の式典にも着て参加しています。
王様の銅像。
恐らくウィキのこの方のようです。
代々王様が住んでいるらしい宮殿。
この建物の裏手の方にも超ゴージャスなお屋敷があり
ご遺体はそちらに安置されて参列者に公開されておりました。
強制ではないのですが、だいたいは式の開催前にご遺体のお顔を
拝見しに行きます。
ガーナのクリスチャンのお葬式ではよく聞く話だと思いますが
お葬式への諸々の準備やら親族の集合時間やらを設けるために
遺体は数週間から数ヶ月単位で冷凍保存されます。
そしていざ葬式当日になるとその体に分厚く死に化粧が施されるため
いつ見ても質感的にご遺体というより蝋人形が飾られているようで
不思議な感覚になります。
こちらは現在の王様。
傘の下にいますが、四方をお付きの方にがっつり固められているので
この写真ではお顔は見えないです。
傘がふたつあるのは、前の傘の下にご母堂がいらっしゃるから。
やはり大きな王族の式というだけあって、お金がかかっているのはもちろん
軍隊や警察のバンドが交互に演奏していたり、伝統的な舞踏団がいくつか雇われて
ダンスを披露していたり、参加されている方々の服装がファッションショーさながらに
華やかだったりと庶民と違うなーって感じでしたが、しょせんは葬式は葬式。
夫の地域のそれとは全然勝手が違って戸惑う部分もあり、これいつ終わるんだろうと
思っていた矢先、この方が出現しました。
ガーナの葬式にダンスはつきもの。プロの舞踏集団、遺族、参加者、誰でも
踊ることができます。特にバンドはひっきりなしに演奏していますから。
この人は最初松葉杖をつきながら踊っていて、参加者のひとりなのかと
思っていたら、すぐに仲間に杖を手渡してそのまま踊り始めたので
どうやらこういったタイプのパフォーマーのようですね。
広いグラウンドを縦横無尽に20分程度片足で踊り続けられる
その筋力、バランス力、スタミナもさることながら、この人の一番すごいのは
絶えず笑顔で「踊るのが楽しくてたまらない」という表情でいるところ。
だからまったく悲壮感がなくて、逆に場が盛り上がるんですよね。
楽しく踊って明るく亡くなった人を送り出す、という趣旨にぴったりなので
たいていのお葬式の場では歓迎されるでしょう。
ガーナにはおひねり文化のようなものがあって、相手がプロでも素人でも
そのパフォーマンスが気に入れば見ている人がお金を出します。
ガーナは毎週末どこかで葬式をやっていますし、そこで彼が踊れば
必ずお金を誰かが払うだろうし、誰も嫌な気分にならない
賢いお金の稼ぎ方だと思いました。
普通はおひねり(?)は足元に置いたり頭の上から紙幣を
サラサラ数枚かけたりするのですが、彼の場合はみんな手に直接
手渡してますね。
普通の方法だと拾うの大変だろうと気遣うガーナ人優しい。
プロの舞踏集団の方もお金を彼に渡していて、ダンサーとしての
リスペクトを感じました。
アクラの中にいると、スケボーに乗って物乞いをする人が目立つ一方
(でも裏ではみんなで元気にサッカーしてたりっていうね)
地方に行くほどそういうのが目につかなくなるのは、物乞いで
暮らしていけるような地域じゃないってことなのかもしれないけど
彼のように自分で出来る方法で自分で稼ぐ、という姿は
やはり見ていて清々しいと感じます。
またどこかの葬式でお見掛けするかもしれませんね。
ここからはちょっと余談話。
今回亡くなったお父様ですが、実はかなり品性に欠けるタイプの方
だったんだそうで、あまりに人に対してのリスペクトのなさに
見切りをつけた奥さん(夫の知り合いのお母さん)は離婚したんだそう。
で、夫の知り合いであるその息子はお父さんそっくりの性格である、と。
ということは、息子はお母さんについていかずにお父さんと暮らしていたってこと?
「 それが一緒に暮らしたこともなければ、ほぼ会ったこともないらしいんだ 」
・・・・なにそのホラーみたいな話。
でもほとんど会ったことのないお父さんのために、こんな盛大な葬式するなんて
すごいよね、まあ全部自腹ってこともないんだろうけど、と言ったら
「 でもあいつ、ずっとあちこち歩きまわってるだろ?
普通遺族は遺族席に座っているもんだ。つまりはそういうことってことだよ 」
うーん、華やかな裏になんとやら。
参加しなきゃしないで後でなんか言われるんだろうし、しがらみ強すぎる
世界って大変。