連投します。←珍しい…
ではでは。
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「翔ちゃん大丈夫?」
良かった~、天使の方だ。思わずホッとする。
「あぁ、大丈夫。ごめんね、智くんは巻き込みたくなかったんだけど…」
「何言ってんの。逆だったら同じ事してたでしょ。それよりさ、ピアノ弾いて?俺踊るから。」
「はぁっ⁈」
「声おっきいよっ。」
「だって、智くん踊るって……アナタ踊れるの⁈」
「え?俺ここに入る前はダンスやってたってじーちゃんに聞いてなかった?」
「いやいや、聞いてたけどそれってもう8年くらい前の……」
「ね、こんな話してる場合じゃないから。んーと、アナ雪!あれ弾ける?ありの~♪ってやつ。」
確かにギャラリーの皆さんの視線を一身に集めている俺たちに長々と話をする余裕は無い。
「弾ける……けど。」
友達の子供にせがまれて覚えたから、あれなら弾ける。
「じゃあ出来ればジャズっぽく弾いて!無理ならいいから。サビで俺飛ぶから、そこは盛り上げてよ!」
それだけ言うとまた極上スマイルでギャラリーの方を向いて行ってしまった。
幸いピアノは歩いていける距離にあったので、俺も腹をくくる。
俺が蒔いた種を、智くんが処理しようとしてくれてるんだ。
弾ききるしかない!
「びっくりさせてすみませんでした!嵐粧堂の大野と申します。ささやかな余興を用意致しましたので皆様の時間をお預かりして、披露させて頂きます。では。」
そう言ってエスコートするナイトのように智くんが深々と頭を下げたので俺は演奏をスタートさせた。
原曲より少しアップテンポに、音を増やしてジャズっぽく。
今日初めて音合わせをしたとは思えない正確なステップでクルクルと回転しながら智くんが踊る。
指先までピンと伸ばして、その動作の1つ1つが優雅で美しい。ジャンプも、まるで鳥が枝に止まるかのように重力を感じさせない。ギャラリーから感嘆の吐息が聞こえた。
時折、ギャラリーの前まで行ってタッチをしたり手を取って一回転させたり、いつも人と対面するのを苦手とする智くんが、こうも積極的になれるのかとびっくりした。
友達の子供に感謝したい。覚えさせられたお陰で鍵盤を見る事なく弾けるから、俺も智くんが踊っているのが見れる。
サビに近付いて、どう飛ぶのだろうと思案してたら、俺のそばにさっき智くんと一緒にいた男と斎藤が来た。
男は斎藤に
「わかった?飛んできたバレーボールを受ける感じで足が乗ったら、思い切り手を上に上げる!」
と何やら話をしている。
男は斎藤を後ろからがっちりホールドして、斎藤の手も上から包んでいた。
そこに曲に合わせて智くんが踊りながら近付いてくる。
サビになって、斎藤の手のひらに飛び乗ってそのまま後方宙返り!着地はやっぱり重力を感じさせない。
ギャラリーの気分も最高潮になって拍手が沸き起こった。
そのまま華麗なダンスを続けて曲は終了。最後は指でピストルの形を作ってバンッとギャラリーを撃ち抜いて極上スマイル。
みんなやられたなこりゃ。
拍手が沸き起こる中、斎藤と男を引っ張ってきて4人で無理やり挨拶をすると
「逃げろっ!」
という智くんの掛け声のもと、会場を後にした。
「はぁっ、はぁっ……ふぅ。」
人気のない所まで走って、やっと立ち止まった。
「ね、智くん、、はぁ、、さっきからさ、、気になってるんだけど。」
息を整えながら顔を上げる。
「この人誰?」
差した指の先には斎藤が大声を上げた時から智くんのそばにいる男。
「あぁ(笑)んーっと……名前何だっけ?」
「えぇ?」
「やっぱり名前も忘れてるんだね。久我だよ。久我瑞樹。」
「だって。」
名前も知らない人とどうやったらアナタは知り合いになれるのか……
「それよりコイツ誰。」
斎藤を指差した智くんの眉間にシワが寄る。
「あ~、本社の人間で、斎藤。俺の同期。」
何となく、智くんを怒らせたくなくてシドロモドロな言い方になってしまう。普段怒らない人間が怒るのは未知数だから、怖いんだよな。ブレーキ無さそうで。
「さっきのは何なの?うちの櫻井がアンタに何かした?」
へたり込んでる斎藤に片膝をついて智くんが顔を覗き込む。目が……また据わってる。
「別に……」
目を合わせられない斎藤が床を見ながら小さな声で答えた。
「別にじゃわかんねーよ。翔くんの事何でも出来るとか言ってたな。やっかみかよ⁈」
襟元を掴んで斎藤の顔を上げさせたから慌てて智くんを止めに入った。
「智くんっ!もういいよ!疲れたし、帰ろ?」
が、そんな俺の言葉は聞こえないのか、掴んだ襟元も離さない。相当……怒ってる。
「俺の仕事奪ったんだよコイツが!俺じゃなくコイツがチヤホヤされて!俺の成功なのにコイツの成功みたいになって!だから恥かけばいいと思ったんだよ!悪いかっ‼︎」
開き直ったのか、斎藤もデカイ声で智くんに喰ってかかった。
智くんは掴んでた襟元を振り払うと
「馬鹿じゃねーの。そんなのお前より翔くんが頑張ったからじゃん。翔くんは『何でも出来る』んじゃないんだよ、何でも出来るように努力してんだよ。」
……智くん……。
「それにさ、ここで翔くんに恥かかせてお前のスキル上がるの?人を陥れる事より自分を磨けよ。何でも出来るように、自分がなれよ。周りの評価より自分がどうなりたいかを考えろよ。お前が戦うべき相手は、翔くんじゃなくて周りのせいばっかにしてる自分自身だろっ。」
口ベタな智くんにしては珍しく、強いセリフがどんどん出てくる。きっと、常日頃から自分に言い聞かせてるんだろう。
斎藤は何も言い返せなくなって、俯いてしまった。
「行こ、翔くん。」
斎藤の事がちょっと可哀想になってしまった俺がその場から動けなくなってるのを感じたのか、智くんが俺の腕を引っ張っていってくれた。