2011年5月5日
端午の節句
このGWも結局どこへも遠出はせずにずっとうちに引き篭もっていた。
本当はこの連休は、少し足を伸ばしてどこか温泉へでも子供たちと出かける予定にしていたのだが、母親のところから遊びに来ている遼太に、どこか遊びに行くか?と聞いたところ・・・
「僕、行けへん。なおちんとうちにおる・・・」
と言ったので、僕はすっかり出鼻を挫かれてしまって、結局いつも通り、うちで3人で過ごすことになった。
子供にとっては、親が良かれと思って強要する、人でごった返した行楽地よりも、長い長い渋滞に巻き込まれて退屈極まりない車内よりも、やっぱりうちで楽しくゲーム、そして楽しみにしている回転寿司が良いことを、前に無理やり連れて行ったUSJの経験から、僕もよーく知っている。
でも恒例の映画は、僕、直也、遼太の3人で阿倍野アポロまでお出かけした。
観た映画は「名探偵コナン」
大人が観ても、というより、内容は大人じゃないと難しかろうと思う。
「名探偵コナン」は、かわいいアニメ仕立てにしてあるけれど、ストーリーはとても本格的なミステリー。いつもかなりのひねりがあって非常に興味深い。
なので、僕は十分に楽しめたのではあるが、小学4年生の遼太には、どうも今ひとつ理解し難いようで、あくびしたり、体をくねらせたりと終始退屈気味だった。
無理もない。その動作の度に、僕は後ろや前の席の人に迷惑にならないかとヒヤヒヤさせられる。次はもう少し簡単な、そう、ドラえもんかポケモンあたりがいい。
子供の日ということもあって、いつもは空席の目立つ館内も今日ばかりはほぼ満席状態だった。
でも・・・・
客席は中央の通路を隔てて左右に分かれており、僕たちは、丁度ホールの真ん中辺りにある、通路から右へ順に3つ席を予約しており、開場10分ほど前には、ポップコーンとコーラ片手に僕たちはさっさと席に着いた。
通路から右へ、直也、遼太、そして僕・・・・
もう一方の僕の右隣りの席は、まだ誰も来ておらず、その一つ向こうの席には、家族連れが陣取っていた。
ほぼ満席状態なのに、僕の隣にぽっかり空いた座席は、まるで、やって来るはずのお客さんを心細く待っているような、不思議な雰囲気を醸し出していた。
予告編が始まる前に、僕は、どんな人が隣にやって来るのか、少しだけ期待していた。もちろん下心ありありで・・・
ところが照明が落ちて予告編が始まっても、依然として席は空いたままだった。
そしていよいよ、遼太が、「映画泥棒」といつも呼んでいるビデオカメラを被ったヘンテコなパントパイムのノーモア映画泥棒が終わっても、やっぱりぽっかりと空席のままだった。
ほかの席は全部満席で、おそらく観れない人もいるだろうに・・・・
そのとき僕はハッと気付いた。
この席は・・・本当は、誰の席なのかを。
もしパラレルワールドがあるなら、その世界では、きっとその席には座っていたはずだ。
先ほどから、誰かが足りないとずっと感じていた気持ちの正体は・・・・
もう一つの家で、きっと淋しそうに遼太の帰りを待っているあの人だったのだ。
来るはずもない人を、その席は、最後までずっと待ち続けていたのだ。
映画を観終わって、僕たち3人は、オープンしてほやほやの阿倍野Q’sモールへ行った。
そこで一通り見て回って、あまりの人の多さに少し疲れて、遼太が咽が渇いたというので、一休みしてソフトクリームをみんなで食べる。
たまたまそこでやっていた、マジックやバルーンアートのショーを見学。
まったくの子供だましなんだけれど、やっぱり子供たちは、お返事も元気いっぱい、そのマジックショーをとても楽しんでいる。その様子を見て、大人たちも元気をたくさんもらって、のんびりした休日をとても楽しんでいる。
ただそれだけのことなんだけれど、やっぱりそれって幸せなんだろうと思った。
でもやっぱり、周りを見ては、淋しい気分になる。
この子たちも、口では言わないけれど、心のどこかできっと感じているんだろうな。
「足りないよ?」って・・・・
そう思うたびに、僕は、ごめんなって心で言う。
最後にいつもの回転寿司を食べに行って、そして、僕よりもずっと淋しい思いをしている人の下へと遼太を送り届けて、子供の日はおしまい。
でも遼太が、最後の別れ際に僕にこう言った。
「とーさん、今度の土曜はまた来れる?」
嬉しくて泣きそうになるけれど、僕はこう言い返した。
「ごめんな、今度の週末は、母さんといっしょに居てあげてな。その代わり、また今月末か来月、梅雨に入る前に、今度は、なおちんと、とーちゃんとで長島温泉にでも行こうか。おっきな温泉とか遊園地とかあるとこやで。な?」
遼太は、にっこり微笑んで、そのまま母の待つ家へと帰って行った。
玄関口で出迎える遼太の母は、少し、やつれて見えた。
苦労掛けて申し訳ない・・・・
明日から、また頑張ろう!