Chapter13 不動産鑑定評価基準総論 第3章  | 不動産鑑定士&受験生必見!! “不動産鑑定評価基準の解説”

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こんにちは、不動産鑑定士の大島です。
これまでの実務経験、講師経験、実務修習指導経験を活かして、不動産鑑定評価基準の解説をしていきます。
初心者でもわかりやすい、目から鱗の解説を目指します。

第3節 個別的要因


個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。個別的要因は、土地、建物等の区分に応じて次のように分けられる。


(解説)

土地の特性でみたように、土地には個別性(非同質性・非代替性)があり、同一の土地は存在しない。土地は地域の構成分子として地域との間に依存・補完等の関係にあるが、地域内の土地はそれぞれ異なるもので同一のものは存在しない。これは、次に説明する個別的要因の作用によるものであるが、この個別性があるが故に、不動産の経済価値はそれぞれ異なる(個別的に形成される)ものとなる。

個別的要因は、Ⅰ.土地に関する個別的要因、Ⅱ.建物に関する個別的要因、Ⅲ.建物及びその敷地に関する個別的要因に分けられる。地域要因では、建物に関連する要因はなく、個別的要因で建物に関する個別的要因を分析することとなる。これは、価格形成要因の分析の流れを理解しておくとわかりやすい。

まず一般的要因を分析しそれを背景として、地域分析をする。ここで地域の特性が把握されるわけであるが、どのような用途として使われるべき地域なのか(これを「標準的使用」という。)が把握される。次に個別的要因を分析し、今度は対象地がどのような用途として使われるべき土地(これを「最有効使用」という。)なのかが把握される。一般にその地域内にある土地の最有効使用は標準的使用に一致する(詳細は総論第6章で説明する)。ここで、対象不動産が複合不動産である場合には対象地上に建物が存するわけであるが、この現実に存する建物が、最有効使用に一致するかどうか、つまり対象地が使われるべき用途を実現しているか否かを判断する。一致している場合には、最もその土地に適した使用方法を実現しており、その土地の効用を最大限享受することができるので、市場においても最も高く取引され経済価値は高くなる。反対に対象地が使われるべき用途を実現していない場合(現実の建物の用途が異なる場合)には、その土地に適した使用方法を実現していないため、その効用を十分に享受することができず(もったいない使い方をしている)、市場においても安い金額で取引され経済価値は低くなる。

例えば、西新宿の場合、商業施設又は業務施設の種類、規模、集積度等の状態等から高層ビルが建ち並ぶ高度商業地域であり標準的使用は高層の事務所ビルの敷地と判定される。この地域内に存する対象地の最有効使用は、一般には標準的使用と同じ高層の事務所ビルの敷地と判定される。ただし、実際に対象地上に存する建物はさまざまな使用がされている可能性があり、例えば高層の事務所ビルとして使用されていれば土地の最有効使用を実現できているため建物及びその敷地の経済価値は高くなるが容積率を十分に消化していない低層の事務所ビルとして使用されていれば土地の最有効使用を実現できていないため経済価値は低くなる。

 

Ⅰ 土地に関する個別的要因

.宅地

(1)住宅地


住宅地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

① 地勢、地質、地盤等

② 日照、通風及び乾湿

③ 間口、奥行、地積、形状等

④ 高低、角地その他の接面街路との関係

⑤ 接面街路の幅員、構造等の状態

⑥ 接面街路の系統及び連続性

⑦ 交通施設との距離

⑧ 商業施設との接近の程度

⑨ 公共施設、公益的施設等との接近の程度

⑩ 汚水処理場等の嫌悪施設等との接近の程度

⑪ 隣接不動産等周囲の状態

⑫ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易

⑬ 情報通信基盤の利用の難易

⑭ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態

⑮ 土壌汚染の有無及びその状態

⑯ 公法上及び私法上の規制、制約等


 

(2)商業地


商業地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

① 地勢、地質、地盤等

② 間口、奥行、地積、形状等

③ 高低、角地その他の接面街路との関係

④ 接面街路の幅員、構造等の状態

⑤ 接面街路の系統及び連続性

⑥ 商業地域の中心への接近性

⑦ 主要交通機関との接近性

⑧ 顧客の流動の状態との適合性

⑨ 隣接不動産等周囲の状態

⑩ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易

⑪ 情報通信基盤の利用の難易

⑫ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態

⑬ 土壌汚染の有無及びその状態

⑭ 公法上及び私法上の規制、制約等


 

(3)工業地


工業地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

① 地勢、地質、地盤等

② 間口、奥行、地積、形状等

③ 高低、角地その他の接面街路との関係

④ 接面街路の幅員、構造等の状態

⑤ 接面街路の系統及び連続性

⑥ 従業員の通勤等のための主要交通機関との接近性

⑦ 幹線道路、鉄道、港湾、空港等の輸送施設との位置関係

⑧ 電力等の動力資源の状態及び引込の難易

⑨ 用排水等の供給・処理施設の整備の必要性

⑩ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易

⑪ 情報通信基盤の利用の難易

⑫ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態

⑬ 土壌汚染の有無及びその状態

⑭ 公法上及び私法上の規制、制約等


 

2.農地


農地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

(1)日照、乾湿、雨量等の状態

(2)土壌及び土層の状態

(3)農道の状態

(4)灌漑排水の状態

(5)耕うんの難易

(6)集落との接近の程度

(7)集荷地との接近の程度

(8)災害の危険性の程度

(9)公法上及び私法上の規制、制約等


 

3.林地


林地の個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。

(1)日照、乾湿、雨量等の状態

(2)標高、地勢等の状態

(3)土壌及び土層の状態

(4)木材の搬出、運搬等の難易

(5)管理の難易

(6)公法上及び私法上の規制、制約等


 

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