どうも、はちごろうです。



もう明日から12月。ホントに月日の経つのは速いですね。
ところで、ええ年こいていまだに深夜のTVアニメをチェックしてるんですが、
今期の作品にはひとつの傾向があるなと感じていまして。
例えば「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、
    辺境でスローライフすることにしました」(長い!)の主人公リット、
「古見さんは、コミュ障です。」の只野仁人、「大正オトメ御伽噺」の立花夕月、
「舞妓さんちのまかないさん」のきよ、「月とライカと吸血姫」のレフなど、
作中で自分自身が先頭に立って主体的に物事を動かしていくのではなく、
行動する目的を持った作品の推進役は別にいて、
そのサポート役に徹しているキャラクターが
実質的に物語全体を掌握しているパターンが多いんですね。
実はこれ、TVアニメだけに限ったことではないと感じてるんですよ。
SNSで流れてくる電子コミックサイトの広告で取り上げられてるものでも、
パーティの中で地味だけど必要な雑務を一手に引き受けていたり、
攻撃担当のキャラのサポート役として活躍してきたキャラクターが
仲間達から過小評価された挙げ句に追い出され、
追い出した側がそのキャラの真の実力に気付いたときには手遅れ、というパターン。
この手の話がちょっとしたブームになっているのは、
おそらくみんな自分が過小評価されてると感じてるからなのかもしれません。
では、映画の話。



「ミラベルと魔法だらけの家」

 

 

 



ディズニーアニメーションスタジオ最新作。
南米コロンビアを舞台に、それぞれ独自の魔法を持つ一家の中で
唯一何の能力も持たない少女が家族の危機に立ち上がる。
「イン・ザ・ハイツ」のリン・マニュエル=ミランダが音楽を担当。

あらすじ

南米コロンビアの奥地にある小さな村エルカント。
そこに住むマドリガル家の人々は皆それぞれ特殊な魔法を持っていた。
マドリガル家の当主アルマは、半世紀前に夫と、
アリエッタ、ペパ、ブルーノの3人の子供たちと共に
戦乱を逃れてこの地にやって来た。
その際、夫は追っ手から家族と仲間を守るために犠牲になり、
彼女は失意の中で不思議な能力を持ったロウソクを手に入れる。
その力によってアルマは自我を持った魔法の家「カミーノ」を手に入れる。
そして子供たちも、アリエッタは料理で病を癒やす魔法、
ペパは天候を自在に操れる魔法を手に入れた。
しかし未来を見る魔法を手に入れた長男のブルーノは
一家の崩壊を予言したことをきっかけに失踪してしまう。
アリエッタとペパはそれぞれ村に住む男を婿に取り、
産まれた子供たちは5歳になると部屋をひとつ与えられ、
そのドアノブに触れることで独自の魔法を手に入れる事が出来た。
しかし、アリエッタの末娘ミラベルだけはドアノブに触れた途端に扉が消え、
家族の中でただひとり、何の魔法も手に入れることが出来なかった。
それでもミラベルは家族を愛し、家族の役に立ちたいと気丈に振る舞うのだった。
それから10年後。
その日はミラベルのいとこアントニオが5歳の誕生日を迎え、
魔法の儀式の準備で村中大忙しだった。
ミラベルも家族の一員として率先して手伝おうとしていたが、
アルマは家族にまた魔法を持たない子が出来るかもという不安から
彼女におとなしくしているように命じるだけだった。
その夜、アントニオは無事に動物と意思疎通を果たす魔法を手にいれ、
アルマを始め、家族も、村人達も喜びに湧いていたのだが、
その姿をミラベルは複雑な表情で眺めるのだった。
アントニオの部屋で他の家族や村人達がパーティーに騒ぐ中、
中庭にいたミラベルはそこで家の壁に大きなひび割れが生じ、
家の最上階にある魔法のロウソクが置かれた部屋まで迫るのを目撃する。
彼女は慌ててアルマたちを呼ぶが戻ってきたときは家は元通りになっていた。
自分の見たものを誰も信じてくれなかったことに落ち込むミラベルだったが、
実はアルマも家の崩壊の危機に気付いていた。
それを知ったミラベルは、家族の危機を救うため行動に出るのだった。

 

 

 

扇の要は動かないことに価値がある



ディズニーアニメーションの最新作なんですが、
実は今年すでに2本の作品がディズニープラスで配信されてて。
見られる状況にあるのになんだかんだで先延ばしにしてて
自分の怠惰を反省するばかりなのですが。
ま、それはそれとして。

予告編の段階でなんとなく感じてはいたんですよ。
「秀でた才能に恵まれた者たちが集まる集団の中で、
 ひとりだけ何の才能もない者が加わる」
というシチュエーションって、既視感がありありでね。
例えば最近だと「僕のヒーローアカデミア」ってのがそんな感じですね。
後にヒーローから能力を受け継ぎますけど、
主人公は当初は何の能力も無い少年ですし。

で、この手の舞台設定で起きる展開は主に二つ。

 「単に才能がまだ開花してないだけで、

     最後の最後で重要な才能を手に入れる」

もしくは

 「才能のある者たちの調整役として活躍する」

このふたつの展開にだいたい分かれるわけです。

まー、どっちかなんだろうなと思っていたら案の上で。
結局ミラベルは他の才能を持つ家族たちが抱える悩みを訊き、
その辛さから解放する手助けをしていくんですね。
そしてその結果、家族崩壊の危機の元凶がアルマだと気付くわけです。
彼女の望む家族のあり方、彼女の望む才能の使い方以外を認めないことで、
家族全体が徐々に制度疲労を起こしていたんですね。
アルマもそれに薄々気付いているけれどいまの体制を手放すことが出来ない、
これまで築き上げてきた家族の歴史を失う恐怖に耐えられないわけです。

あとの展開はもうわかりますよね。
ミラベルがいまの家族の抱える悩み、そして崩壊の危機を生んだ原因が
家族のあり方をアップデート出来ないアルマにあると突きつけるんですね。
それをきっかけに今度はミラベル主導で家族を再建していく。
で、結果的にミラベルが「新たな当主」という才能を得るというね。
まさに「一家の『調整役』という才能を開花させる」話なわけです。


テーマ自体はここ最近全世界的に見直しが進んでいる
「大家族制度」「家父長制」のアップデートってことなんですけど、
これからの「家長」は圧倒的な権力で家族を家につなぎ止めるタイプではなく、
家族それぞれの才能を見極めると同時に、家族自身の望む生き方を尊重する
まさに「調整型」のリーダーが求められるのかなと感じました。

個人的には数年前からいろんな映像作家がテーマにしてるので
そろそろ食傷気味になってきてはいるんですけどね。



 

 

 

 

 

 





[2021年11月28日 TOHOシネマズ池袋 3番スクリーン]

 

 

 



※ではここ最近のディズニーアニメを