どうも、はちごろうです。

 

 

 

先にご自身のブログで書かれていたのでご存じの方もいるかと思いますが、

この前の土曜日に「か和もっち」で久しぶりに三角絞めさんとお目に掛かりまして。

先週アップされていた「先週の備忘録」で「土曜日に行くかも」と書かれてたので

もしかしたら会えるかな?と思っていたのですが、

土曜日にツイッターで「か和もっちに行くか、ブログ書くか、映画観るか」という

緊急アンケートを採られていたんですよ。で、結果は「映画に行く」の圧勝で。

だから来ないだろうと思っていたら、会計してるときにちょうど来店されまして。

前回お目に掛かったのがコロナ禍直前の2月だったので、

結局一度立った席にまた座り直して深夜まで話し込んでしまいました。

いろんなお話をさせていただき、楽しい時間を過ごしましたけど、

なぜか最後の方は「マッチングアプリをやれ」としきりに言われてたような・・・

では、映画の話。

 

 

 

「オン・ザ・ロック」
 

 

 

 



「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラ監督の新作。
NYで暮らす女性作家が、夫の浮気を疑ったことをきっかけに
プレイボーイの父親とその真偽を確かめるために調査を開始する。
出演はビル・マーレイ、ラシダ・ジョーンズ、マーロン・ウェイアンズ。

あらすじ

NYで映画プロデューサーの夫ディーンと、
二人の娘とともに暮らす作家ローラ。
ディーンは最近新たに会社を立ち上げて毎日忙しい一方、
彼女の方は新作の執筆が暗礁に乗り上げていた。
ある夜、帰宅したディーンが就寝中のローラにキスしたとき、
一瞬ハッとしたような表情を見せたことに彼女は不信感を抱く。
数日後、出張から帰ってきた夫のスーツケースから
女性ものの化粧ポーチが出てきたことでさらに不信感を募らせることに。
本人に訊くと「同僚のカバンに入りきらなくなったから」と答えるが、
その数日後、彼の会社のパーティーに出ることになったローラは
そこで彼の同僚フィオナを紹介される。
ローラは二人の様子から、夫の浮気相手は彼女なのでは?との疑念を抱く。
そこでローラは画商をしている父親フェリックスに相談する。
彼は若い頃からプレイボーイで、男女の仲に精通しているものの、
それが原因で母と離婚。現在は独身貴族で悠々自適な生活をしていた。
フェリックスはすぐさまディーンの浮気を確信。
「きちんと証拠を押さえるべきだ」とローラにアドバイスをするのだが・・・。



世界で一番パパが好き、ソフィア・コッポラ



監督はソフィア・コッポラ。
父親は言わずと知れた巨匠フランシス・フォード・コッポラ。
あの「ゴッドファーザー」とか「地獄の黙示録」の監督ですね。
彼女に限らず、多数の親類がハリウッドで活躍してますけれども。
彼女自身は初監督作「バージン・スーサイズ」から頭角を現し、
本作で主演を務めるビル・マーレイが主演した
「ロスト・イン・トランスレーション」で多くの賞を獲得。
親の七光りとは言わせない非凡な才能を発揮してます。
ここ最近の作品は未見なんですけど、
作品の内容から若干ファザコンの気質がある印象というか、
父性に対する強いこだわりを感じるんですね。
昨年公開された「カーライル」という、高級ホテルに関するドキュメンタリーで、
子供の頃にルームサービスで1杯50ドルもするオレンジジュースを
何度も頼んで父に叱られたというエピソードを語ってるんですが、
彼女が幼い頃から大人の世界で過ごしていたことが垣間見えるんですね。
だから余計に自分を全面的に庇護してくれる大人の男性への渇望、
特に「父親」への思いが強く反映されている印象の監督さんです。


そんなソフィア・コッポラ監督の新作。
もう、冒頭から父親LOVE!っていう願望が炸裂してて。
映画はローラがディーンと結婚する場面から始まるんだけど、
でもその前に父フェリックスの
「お前が結婚しても世界で一番愛してるのは俺だ!」
みたいなナレーションからスタートするんですね。
ホントもう、大丈夫かしら?と思って。
で、本編は夫の浮気に悩む女性がそれを父親に相談し、
父親は結婚した愛娘と過ごせる良いチャンスだとばかりに
「夫の素行調査」の名目で彼女と夜の街に繰り出すわけです。
しかも本編でははっきりとは説明されないんですけど、
フィリックス本人はNYでかなり成功した画商で人脈も豊富。
しかも人たらしで、どこに行っても人が寄ってくる感じ。
浮気の尾行調査にもかかわらず高級車で街を疾走し、
張り込み中に高級キャビアを用意するような、とにかく洒落男なんですよ。
そんな調子だから当然若い頃からかなりモテていた様子。
で、それが原因というか、そもそも結婚に向かなかったからか、
妻と子供、つまりローラがいながらべつの女性と関係を持ち、
それが原因で離婚してしまったわけです。
一方、本筋であるディーンの浮気疑惑は完全な取り越し苦労で。
ただ単に仕事が多忙だったために彼女を放っておいたように見えただけで、
全くもってローラ一筋だったことがわかり、
彼女は逆にフェリックスの不誠実さというか、
大人の男性としての未熟さに改めて気付かされるんですね。


おそらくこれ、ソフィア監督にとってはどっちも「理想の男性」なんですよ。
父親のフィリックスも夫のディーンも、どちらも社会的に成功していて子煩悩。
ただ洗練度というか、レベルの高さはやはりフィリックスの方に軍配が上がる。
でも夫としての誠実さというか、適性には欠けるため、
家庭を築くならやっぱりディーンがいいというね。
それでですね、結局このフィリックスとディーンの良いところを合わせたのが、
実の父親であるフランシス・フォード・コッポラ監督なんだろうと。
この人、ハリウッドでは意外と珍しい愛妻家で、
一人の女性とずっと結婚生活を続けてるんですね。
しかも映画監督として一時代を築いただけでなく、
現在はワイナリーのオーナーとしても大成功してるんですよ。
社会的に成功して、文化的に洗練され、しかも一人の女性に一途な大人の男性。
幼い頃からそんな父親と共に過ごしてきたんだから、
そりゃあファザコンにも成るってもんですね。
一方、ソフィア・コッポラ監督は映画監督のスパイク・ジョーンズと離婚歴があり、
だからこそ余計に「やっぱり私の父親がベスト」って思ってるような気がします。


ソフィア・コッポラ監督は今後もずっと「理想の男」を描きながら
作品の中で「父」を追い求めていくんでしょうね。
そんな彼女のファザコンな部分が思いっきり発揮されてる一本でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2020年10月11日 新宿武蔵野館 1番スクリーン]

 

 

 

 

 

※ではソフィア・コッポラ監督の過去作を