どうも、はちごろうです。
 

 

 

書きためていた映画の感想もあとわずかで。

すでに緊急事態宣言前に観た作品は全てアップ済み。

あとは宣言後の外出自粛中に配信で観た作品がいくつか。

もっと観られるかと思っていたんですけどね。

仕事のジャンルがいわゆる「エッセンシャル・ワーク」、

つまり社会生活に必要不可欠な職種に分類されていたので、

ずっと仕事してたからなんですが。

近いうちにそれらの作品の感想もアップします。

では、映画の話。

 

 

 

「鵞鳥湖の夜」

 

 

 



初監督作「薄氷の殺人」がベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した
中国の新鋭ディアオ・イーナン監督の最新作。
誤って警察官を殺害し、多額の懸賞金を掛けられた男が
警察と裏社会双方から逃れながら、その金を妻子に残すために奔走する。

あらすじ

雨が降りしきる2012年7月19日。
中国南部郊外の駅でバイク窃盗団の幹部チョウ・ザーノンは
妻ヤン・シュージュンが来るのを待っていた。
しかしそこに現れたのは赤いブラウスを着たショートカットの女。
彼女は再開発が滞るリゾート地、鵞鳥湖の海岸で
通称「水浴婦」と呼ばれる売春婦リウ・アイアイだった。
彼女はチョウにシュージュンが来ないことを告げる。
2日前、窃盗団はとあるホテルで大規模なバイク盗難計画を立てていた。
しかし指南役のマーによる受け持ち地区の割り振りに対し、
若い構成員の「猫目・猫耳」兄弟が難癖を付けたことで小競り合いとなり、
チョウの手下の金髪男が猫耳の膝を撃ち抜く事件が起きる。
マーの仲裁で、その夜に盗んだバイクの数で白黒付けることになったが、
勝負の最中、猫目側が仕掛けた罠にハマった金髪男が首を刎ねられ、
チョウも肩に銃弾を追ってしまう。
雨の中、その場を逃走した彼は視界不良の中、
目の前の車の前に立っていた男を撃ち殺してしまう。
しかしそれは交通違反の取り締まり中だった警察官だった。
翌日、警察は威信にかけてチョウの逮捕を目指して捜査を開始。
彼は30万元もの高額の懸賞金を掛けられてしまう。
それを知ったチョウは自分にかけられた懸賞金を
長らく離れて暮らす妻シュージュンに残すことを考え、
義弟のヤンに頼んで彼女を連れ出してもらおうとする。
ヤンはシュージュンの捜索を鵞鳥湖の水浴婦の元締めホアに頼み、
彼はその依頼をアイアイに頼んだのだった。

 

 

 

闇夜に光る命の輝きを追う、イーナン



6月に映画館の営業が再開されたときにちょうどこの予告が流れてて、
なんかこう、シャレオツというか、かっこいいなと思ってですね。
なかなか公開日が決まらなかったんですが、
いい機会なんで観に行ってきました。
ま、ちょうどハリウッド大作の公開延期が続いてて
しばらくは凪の状態が続きそうなんでね。

で、ディアオ・イーナン監督。当然初めて観るんですけど、
一応せめてと思って前作の「薄氷の殺人」の予告をチェックしまして。
ま、なんとなく独特の色使いで見せる監督さんなのかな?と。
全体的に夜のシーンが多くて、そこに街灯やネオンサインなどが
闇夜の中で強調されるように映し出されるというか。
そこで描かれるのは犯罪に巻き込まれていく男と女の話で。
おそらく彼の作品に登場する「闇夜の中に映る光」というのは、
すなわち登場人物の「命の輝き」を意味するんでしょうね。
そしてそれは「闇夜」、つまり「犯罪現場」とか「裏社会」とか、
一般的な社会生活とは違う世界にいるからこそ余計に強調される、
登場人物達の「生」に対する執着を表現しているのかなと。

 

 




で、以前にも何度かお話ししたと思うんですが、
私はアジア映画を観ると出演している俳優が
日本の有名人の誰に似てるか?って考えちゃうクセがあって。

今回はチョウ役のフー・ゴーさん。
この人は俳優の吉田栄作さんに似てるなとすぐ思って。

 

 

 

 


ただそれ以上にヒロインのアイアイを演じたグイ・ルンメイさん。
ベリーショートだったこともあって
俳優の高橋一生さんに似てる!って思っちゃって。

 

 

 


だから頭の中でずっとBLっぽいなぁって思いながら観てましたw


さて、本作の舞台となる鵞鳥湖。
一応リゾート地なんだけど再開発計画が滞っていて、
有象無象が集まりすぎて一種治外法権というか、
警察の目が行き届かない状態になってるようで。
だからこそチョウのような犯罪者が身を隠したり、
アイアイのような売春婦が商売するのにもちょうどいい、みたいな。
しかも再開発による立ち退き勧告で街を追い出される地元民などもいて、
全体的に街も人の心も淀んでるというか、すさんでる感じで。
その、急激に変っていく世の中で淘汰されていく者たちの
一瞬の「生への執着」を描こうとしてるのが本作なんだろう、
ということはわかるんですけどね。


ただ、全体的に登場人物の行動が刹那的というか、
将来に対する希望が見えない故の温度の低さもあって、
結構唐突に見えちゃったんですよね。
みんな表情も暗い、というか諦めたような表情だから
彼ら彼女らを観ていてもこっちまで気持ちが淀んでくるし。
そうかと思えばいきなりラブシーンが始まったりするしで。
またラストもかなり唐突に見えちゃったんですよ。
チョウは警察や懸賞金に目がくらんだ窃盗団の仲間達、
双方から追われた末に警察によって殺害。
彼のもくろみ通り懸賞金はアイアイが一旦受領し、
彼女は待ち合わせしていたシュージュンに金を渡すんだけど、
ふたりはそのまま恋人のように街を散歩し始めるんですね。
「いつそんな親密になったの?」って感じで。
確かにアイアイはチョウの元に連れて行くために
シュージュンを迎えに行ってて面識があるし、
またそもそも二人の境遇自体が
「男たちの都合で振り回されてる」点で共通点があって、
意気投合しやすいのもわからなくはないんだけど
それにしてもさすがに説明不足な感じがしたんですよ。


おそらくイーナン監督は映像的な新鮮さというか、

見た目のシャレオツ感を優先して、
登場人物の心情を描くことはあまり興味が無いのかな?と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2020年10月4日 ユナイテッドシネマとしまえん 7番スクリーン]

 

 

 

 

 

※とりあえずイーナン監督の過去作を