どうも、はちごろうです。

 

 

 

このご時世、オフ会もオンラインでやってまして。

映画駄話会とタマフルオフ会。

で、先日実験的にオンライン駄話会の告知を

タマフルオフ会の面々にも出してみまして。

ありがたいことに参加者多数で、

当初の予定を大幅に延長して盛り上がりました。

ただ、ラスト1時間は「TENET」のルールを

互いに確認していただけでしたが。

では、映画の話。

 

 

 

「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」

 

 

 



京都アニメーション製作の人気TVアニメの、劇場版完全新作。
戦時中、孤児として拾われ、兵器として育てられた少女が、
戦後、行方不明になった上官の帰還を待ちながら
自動書記人形(ドール)として過ごす日々を描く。
声の出演は石川由衣、浪川大輔。

あらすじ

大陸を二分した戦争が終結し、平和へ向かう国ライデンシャフトリヒ。
その首都ライデンにある私営の郵便社「CH郵便社」で
自動手記人形(ドール)として働く少女ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
戦争中、彼女は孤児として拾われ、感情を持たない「兵器」として育てられるが、
陸軍少佐ギルベルト・ブーゲンビリアに預けられたことをきっかけに、
読み書きから礼儀作法など、人としての一通りの知識と教養、
そして「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という名前まで与えられる。
しかし戦争を終結させる最後の戦いでギルベルトは瀕死の状態のまま行方不明になり、
彼を助けようとしたヴァイオレットは両腕を失う重傷を負い、
国に帰還後、彼女は両腕に義手を付けた生活を余儀なくされていた。
ギルベルトの親友で、帰還後のヴァイオレットを社員として雇った
郵便社の社長ホッジンズは彼の生存を諦めているが、
ヴァイオレットは頑なにギルベルトの帰還を信じていた。
彼が最後に彼女に告げた「愛している」という言葉の意味を知るために。

それから数年。
ヴァイオレットはドロッセル王国王女シャルロッテが政略結婚する相手、

ダミアン王子と交わす「公開恋文」を担当したことがきっかけで、
郵便社でトップの指名を誇る優秀な自動手記人形(ドール)となっていた。
そんな彼女に同僚のアイビスはライバル心を燃やすが、
科学技術の発展で情報伝達手段としての「郵便」の地位は斜陽を迎えており、
路上の街灯の動力はガスから電気に替わり、街には近々電波塔が完成する予定で、
郵便社にも電話線が引かれるなど、確実に時代の流れが彼女らにも迫っていた。
そんなある日、ヴァイオレットはユリスという少年から依頼を受ける。
不治の病で自分の死期を悟った彼は、両親と幼い弟、
そして見舞いを断ってしまった親友のリュカに手紙を書いて欲しいと願う。
一方、CH郵便社に残っていた差出人不明の手紙の中から、
ホッジンズは見覚えのある筆跡の手紙を見つけ・・・

 

 

 

例え時代とともにその手段が替わっても・・・



本来なら今年の1月に公開される予定だったのですが、
昨年夏の痛ましい事件、そしてコロナの影響で2度も公開延期となった本作。
昨年9月に公開された外伝の時にも話しましたけど、
やっぱりそういう外的要因が作品の出来、そして評価に影響してしまわないか、
とても心配していたのですがそんなことは全くなくて。

とはいえ、TVシリーズを観てないと理解しづらい部分があるのは確か。
特に序盤に登場する郵便社の面々のエピソードとか、
今回大きく話に関わってくるギルベルトの兄ディートフリートと
ヴァイオレットとの関係なんかも知っておいた方がわかりやすい。
じゃあ、だからといってTVシリーズ全13話を
いまから予習するのも骨が折れるので簡単に説明すると、
今回の新作に関わってくるのは
TVシリーズの1話、2話、4話、そして8話から最終13話まで。
ここだけ観ておけば本作の人物相関図はだいたい理解できます。
ってエピソードが9つもありますけどね。
(もちろん1話から見始めてイッキ見してもらうと嬉しいですが)

で、本作はヴァイオレットが偶然引き受けた少年ユリスの依頼、
そしてホッジンズが郵便社で偶然見つけた手紙の話、
この2つの話がメインなんですけど、作品全体を俯瞰するように
全く別の主人公の物語が冒頭から始まるんですね。
それはTVシリーズの10話がベースになってるんですけど。


あのー、話はちょっと違うんですが、
仕事をしながらラジオの人生相談コーナーなんかを聴いてると、
親しい相手、例えば親とか兄弟姉妹、親しい友人の目に余る言動を
どう注意したらいいのか?なんていう相談に対し、
「手紙を書く」という回答を出すことが結構多いんですね。
つまり面と向かって言うとお互い感情的になって話がこじれるから、
文書にして渡せば相手もいくぶん冷静に考えるだろうという判断なんでしょうが。
そういった具合に、直接言うと何かと差し障りのある考えを伝えるために
「手紙」という手段は非常に有効でして。
そして、だからこそ手紙というものには書いた本人の
より深い本心というものが反映されるわけです。

本作の主人公ヴァイオレットは元々孤児で、
拾われた軍人によって「兵器」として育てられたために
人としての扱いを一切受けてこなかった。
そのため、大多数の人間なら備わっている「感情」というものが欠落しているんですね。
空を見て美しいと思ったり、花が枯れて悲しいと思ったり。
そしてそれは上官となるギルベルトに預けられ、
彼から知識や教養を教えてもらっても芽生えることがなくて。
ギルベルトは一生懸命「年相応の女性」として育てようとするんだけど、
結局ヴァイオレットは戦争が終わっても「軍人」として、
「兵器」としての自分が抜けないまま社会復帰することになるわけです。
そんな彼女が感情を学んでいく手段として
まさに「手紙」というものが機能しているんですね。
多くの人が他者に対して無意識のうちに隠してしまう本音が込められた手紙を、
依頼人とともに書き上げることで「感情」をロールプレイしていくわけです。

それと同時に、このシリーズ全体を通して
「戦争」というものが暗い影を落としてまして。
ある者は戦争によって望まぬ人生を送ることになったり、
またある者は最愛の人とつらい別れを経験したりと、
特に主人公のヴァイオレットは戦争孤児という「被害者」であると同時に、
「戦闘人形」として数々の敵兵を殺害した「加害者」の側面もあるんですね。
だから彼女が自動手記人形として人々の感情を学ぶ課程で、
笑顔や喜びといったポジティブな感情だけでなく、
悲しみや喪失感、罪の意識など、負の感情も取り戻すことになるわけです。
この切ない展開を1話の段階からにおわせてくるんですよ。
もうね、TVシリーズは話が進めば進むほど
涙腺に対する攻撃力が増してくる、そんな作品で。


で、本作。
昨年秋に公開された外伝の中で、ライデンの街に電波塔が建設されるシーンがあって。
その時点で郵便社の経営が近い将来立ちゆかなくなること、
そうなるとヴァイオレット達も仕事を失っていくことが匂わされていて。
じゃあ、彼女たちはどうなるのか?ってのが本作の中心になるんですね。

それで今回はヴァイオレットが受けた死の床にある少年ユリスの依頼と、
郵便社で見つかった手紙の持ち主を探す話の
二つのエピソードが同時進行で語られていくんですが、
それをさらに俯瞰するように、ヴァイオレットたちとは面識のない、
デイジーという少女の物語が語られていくんですよ。
この少女の素性はTVシリーズの10話と関係してるんですけども。

このユリスが最期に遺す手紙の代筆がヴァイオレットの最後の仕事となり、
そして郵便社の面々も自分たちの仕事が完全に斜陽になることを
確実に悟っていくきっかけになるわけなんですけどね。
確かにこの展開がまー、泣かせるんですよ。
物語の前半、郵便社の社員でアイリスという少女が出てくるんだけど、
彼女は自分がヴァイオレットに替わって
社で一番の自動手記人形(ドール)になると公言するんですね。
ただ、社長や古株のカトレアはすでに自分たちの仕事に先がない、
早晩電話に仕事を奪われることを予想してるわけです。
で、ユリスの件で彼女もまたそれを悟っていくわけです。
早晩手紙という「手段」は電話に取って代わるけれど、
人の思いを伝えるという「目的」は替わらないし、
自分たちの仕事はその「目的」を達成するためにあるのだというね。

そして郵便社で見つかった手紙のエピソード。
要は「未帰還兵」扱いで、ホッジンズもディートフリートも
死んだと思っていたギルベルトが生きていたって話で。
彼は自分のために両腕を失ってしまったヴァイオレットへの罪悪感から、
運ばれた病院を退院後に「ジルベール」と名前を変え、
マナルカという小さな島に移り住んでいたんですね。
そこは男たちがみんな徴兵され、老人と女性と子供しかいない状態で。
そこでギルベルトは教師として子供たちに勉強を教え、
農夫として島の設備を整えたりしてる。
しかもギルベルト本人も片腕と片目を失う重傷を負っていて。
そしてやっとの思いで彼の元へやって来たヴァイオレットも
「合わせる顔がない」として拒絶するわけですよ。

このユリスとギルベルトのエピソード、
両方とも「会いたいけれど会えない」「会えないけど会いたい」という
矛盾した思いを抱えてる点で共通してて。
そしてどちらもその本心を「手紙」という手段が解決していくというね。


ただ、作品にどこにも隙が無かったかというとそんなことはないんですよ。
ユリスのエピソードに関しては、前半でもっとアイリスの反発を描いた方が
終盤に「電話」というものを彼女が受け入れる展開が盛り上がったかなと思うし。
でも全体的にはこの物語の完結編としてふさわしい一本だったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2020年9月27日 新宿ピカデリー 1番スクリーン]

 

 

 

 

 

※配信はNetflixでやってますが、盤も出ております。