どうも、はちごろうです。




では、映画の話。



「ビール・ストリートの恋人たち」











本年度米アカデミー賞最優秀助演女優賞受賞。
2017年にアカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」の
バリー・ジェンキンス監督の最新作。
70年代のニューオーリンズを舞台に、無実の罪で投獄された恋人を救うため、
身重の身体で奔走する黒人女性とその家族の姿を描く。

あらすじ

1970年代のニューオーリンズのビール・ストリート。
19歳の黒人女性ティッシュは、幼い頃から幼なじみだった
23歳の黒人男性ファニーと交際していた。
化粧品売り場の店員として働くティッシュに対し、
ファニーは職業訓練校時代に学んだ木工の技術を使って
木材彫刻の芸術家を目指していた。
二人は同棲するためにアパートを借りようとするが、
黒人カップルに部屋を貸してくれる白人の大家はなかなかいなかった。
だがようやく物わかりのいい大家レヴィが見つかり、
二人は新しい生活が始められると大喜びだった。
しかし、その夜。スーパーでティッシュが白人の男に嫌がらせを受け、
ファニーがその男を追っ払おうとしたところを
白人警官のベル巡査に目撃され、傷害容疑で勾留されそうになる。
スーパーの店主である白人女性の弁護で事なきを得るが、
そのことをきっかけに巡査の恨みを買ったファニーは
身に覚えのない婦女暴行容疑で逮捕、拘留されてしまう。
彼のアリバイを証明できる親友のダニエルも不当逮捕され、
被害者である女性は故郷のプエルトリコに帰国していた。
その直後、ティッシュの妊娠が発覚。
彼女は両親たちとともにファニーの無実を証明するため奔走するのだった。



「色」で思いを伝える、ジェンキンス



監督はバリー・ジェンキンス。
2017年に「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞しましたね。
あの受賞発表での大ハプニングが話題になりましたが。
フロリダの貧困地域で生まれ育ったゲイの青年が、
初恋の相手との出会いと別れ、そして再会を描いた作品で。
この作品で非常に特徴的だったのが色彩設計。
つまり作中の「色」の調整が非常に素晴らしかったんですね。


 「月の光に当たると、黒人の肌の色は青く見える


というところから作品のタイトルが決まったように、
この作品では「青い色」がとても重要な要素になってたんですよ。
特に3部構成の第3部。
初恋相手の同級生ケビンとの辛い別れから誰とも心を開けなくなり、
いまは麻薬の売人をしている主人公がその同級生の居場所を知り、
彼が働くレストランで久しぶりの再会を果たす。
そして店が終わった後、二人でケビンの家に行くんだけど、
店の周囲の街灯が最初オレンジ色で、画面も暖色系の色がメインだったのが、
それが彼の家に行く道すがら、徐々に街灯の照明に青が混じり、
到着したケビンの家の周囲には青い照明しか当たっていない。
彼と初めて口づけを交わしたのは月の光の当たる夜の浜辺で、
さらに少年時代に父親代わりだった近所のおじさんが
初めて海で泳ぎ方を教えてくれたときも、
海の色は空の青に負けず劣らずのきれいな青だったんですね。

そんな感じで、前作「ムーンライト」では
青い色に主人公の幸福感を象徴させていたわけです。



スピリチュアルな視点から見てみると



そんな、作中の「色」にこだわりを見せるジェンキンス監督の新作。
今回もやっぱり作中に登場する色にさまざまな意味を持たせていて。

で、実は数年前から映像作品の中の色使いについて
私なりの解釈の方法というか、解釈の基準みたいなものを身につけまして。
スピリチュアルの世界には、いわゆる「チャクラ」という考え方があるんですね。
人間の身体には7つの気の出入り口があるんだとか。
具体的には1番から順に会陰、下腹部、丹田、胸、首、眉間、そして頭頂部。
そしてそのチャクラが滞ったり、また開きすぎたりすると
心身や人間関係に悪影響が出る、という考え方があるんだそうで。
で、その7つのチャクラにはそれぞれそのチャクラに対応する色があるんですね。
それが1番から順に赤、橙、黄、緑、青、藍、そして紫もしくは白・金。
この「チャクラ」の色と照らし合わせて
作品を観ていくといろんなことがわかってくる。

例えば本作で基本となる色は橙色、もしくは黄色。
チャクラで言うと第2、第3チャクラの中間ぐらいの、
暖色系の色彩がメインになるんですね。
第3チャクラについては後述しますが、
この第2チャクラというのは基本的に「創造性」や「セクシャリティ」を司り、
不快な状況からの変化と心の安定の促進を目指す、
という意味合いがあるんですね。
で、これがまさに「人種差別」という理不尽からの変化と、
主人公カップルが性的に結ばれる事による心の安定を象徴してるわけです。

次に冒頭。
デート中のティッシュとファニーが着ている服の色が、
ペアルックってわけではないのですが、どちらも黄色と青なんですね。
黄色は前述した第3チャクラのイメージカラー。
このチャクラは「自我」とか「尊厳」を司るものなんですが、
同時に不安や恐怖など、ネガティブな感情と対峙するために重要な部位。
一方、青は第5チャクラの色で、
これは「コミュニケーション能力」や「表現力」を司るものなんです。
つまり冒頭の二人は、将来への不安や恐怖を抱えつつ、
それでも目の前の相手とわかり合いたいという感情を抱えてる、
そういうことが画面の中の色からわかるわけですよ。

で、中盤。
二人が初めて結ばれる夜のエピソードがあるんですが、
この日ティッシュは全身黄色のワンピースを、
そしてファニーは赤の上着を着てるんですよ。
赤というのは第1チャクラのイメージカラーで、
これは「生命力」とか「本能」を司る部位なんですね。
もう、人間の生理的欲求の源といってもいい。
だからこの時点でもうファニーはやる気まんまんなわけですよ。
しかもデートで彼女を連れて行ったレストランの内装も赤が基調で。
そしてレストランを出た二人はファニーのアトリエへ行くため、
画面奥のT字路を右折するんですが、画面奥の建物の照明が緑。
緑は第4チャクラのイメージカラーで、
このチャクラが象徴するのはずばり「無償の愛」。
そして自我や自信と共に不安を象徴する黄色を身にまとうティッシュと、
本能の象徴である赤を身にまとうファニー、
この二人を象徴する赤と黄色を混ぜると第2チャクラの橙になる。
まさに「セクシャリティ」を象徴する色だったりするわけです。
そして妊娠が発覚したことを両親に告げるシーンで
ティッシュが着てる服は緑と黄色のチェック柄。
気持ち的にもファニーへの愛情と、将来への不安が重なり合ってるわけです。

そして後半。
収監されたファニーを助けるためにティッシュの母シャロンがプエルトリコへ。
そこで現地のマフィアのボスと話を付けるシーンがあるんですが、
ボスのいるレストランに現われた彼女は白のワンピース姿なんですね。
白は第7チャクラの色でこれは「無欲」を象徴するんですね。
このときの彼女は自らの危険を顧みずに現地に飛んで、
裏社会の人間と交渉までしてるわけで、
まさに「白」を身にまとっているのは理にかなってたわけです。
元々このシャロンは、紺に近い青いシャツに赤のパンツ姿で登場するんですね。
紺は第6チャクラのイメージカラーで、
「知恵」とか「直感」を司る部位なんですが、
青と赤を混ぜると出来上がるのは紫。
これは第7チャクラのイメージカラーのひとつなんですね。
やはりここでも彼女の無欲ぶりというか、
子供のために自分を犠牲にする覚悟が象徴されているわけです。


といったような具合で、
本作はスピリチュアルな色彩感覚から見ると
非常に理にかなってる色使いをしてるなと感じます。



(続く)






※このチャクラ的な色使いをしている作品は結構あって