どうも、はちごろうです。


昨夜は台風がすごかったですね。
私の住む地域も夜中じゅう、ずっと暴風雨で。
風の音は大きいし、家自体も揺れるしでひどい有様。
今朝は若干眠いです。おそらく私だけではないと思いますが、
くれぐれも皆さまお気を付けて。
では、映画の話。



「若おかみは小学生!」











令丈ヒロ子原作の児童文学シリーズが原作の劇場アニメ。
両親を事故で亡くした小学6年生の女の子が、
父方の祖母が経営する温泉旅館に若おかみとして修行する様子を描く。
監督は「茄子 アンダルシアの夏」の高坂希太郎。

あらすじ

小学6年生の関織子(通称:おっこ)は自動車事故で両親を亡くし、
父方の実家である花の湯温泉の老舗旅館「花の屋」に引き取られる。
そこは祖母の峰子の他は仲居のエツ子、そして板前の康さんの
都合3人の従業員で切り盛りする小さな旅館だった。
離れにある自分の部屋に通された織子は、
その部屋で同年代の男の子の幽霊を見る。
その幽霊は、峰子が子供の頃に幼なじみだった立売誠(通称:ウリ坊)。
峰子の転校により離ればなれになった直後に亡くなってしまい、
それ以降、彼は峰子を見守るために旅館に取り憑いていたのだった。
ウリ坊はおっこに花の屋の後を継いで、若おかみになって欲しいと懇願。
彼女はなりゆきで旅館の手伝いをすることに。
昼間は小学校に通い、放課後は旅館の仲居として仕事をする毎日。
エツ子や峰子の指導と、旅館にやってくる訳ありのお客様との交流によって
おっこは若おかみとして、人間として成長を遂げていくのだった。



作中に流れるジブリの遺伝子



人気児童文学シリーズの映画化作品ということなんですけど、
元々この原作のことを全く知らなくて。
調べると初巻が発売されたのが2003年なんだとか。
元々、子供の頃は全然本を読まない子供で、
児童文学の知識なんて皆無と言っていいほどなんですけど、
さすがに2003年の小説なら知らなくても当然でしたわ。
で、後述しますけど、そもそも私はこの作品にあんまり食指が動かなくて、
だから当初は軽やかに、何の躊躇もなくスルーするつもりだったんですよ。
でも映画駄話会のスターリング・エレファントさんから「観てくれ!」と。
「今年の夏のアニメにがっかりした皆さんにはこれはオススメ!」なんて感じの、
いつものスタさんのテンションでオススメされてしまいまして。
実際問題、ツイッターのTLでも観に行った人は基本的に大絶賛。
もう、こうなってくると徐々に外堀が埋まってきてしまって
結局観に行くことにしたわけなんですけどね。

で、確かに作画チームは非常にいいんですよ。
まず、監督が高坂希太郎さん。
この人は元々スタジオジブリで作画スタッフをやっていまして、
「もののけ姫」あたりからずっと宮崎アニメで作画監督を務めてた人。
高坂さん本人もまた映画監督として一本立ちしていて、
自転車レースの世界を描いた「茄子 アンダルシアの夏」と
その続編の「茄子 スーツケースの渡り鳥」を監督してます。
そのほかのスタッフにも、例えば作画監督の廣田俊輔さんは
高坂監督と共に「風立ちぬ」の作画監督を務めたあと、
新海誠監督の「君の名は。」でも作画監督をしていたり、
編集の瀬山武司さんもTV・映画問わず数々のアニメに携わった人だったりと、
エンドロールを見るとそこかしこに業界の大物が並んでるんですよ。
やはり長年ジブリで背景美術を担当していた男鹿和雄さんの名前もあったりね。
だからキャラクターの見た目はそうでもないんですけど、
画面全体から妙な安心感が出てるんですよねぇ。
「この画なら大丈夫だ!」みたいな。



幽霊のように出たり消えたり



ただ、作画は非常に良く出来てるんですけど、
演出というか、場面の作り方に首をかしげるところがいくつかありまして。
例えばおっこがこの旅館の物置の中から鈴の音がするので、
中に入るとそこにあった箱の中から古い鈴を見つけるんですね。
でもその鈴には千年もの間封印されていた小鬼がいて、
結局おっこは知らずにその封印を解いてしまう、っていう下りがあるんですが、
このエピソードが全体的に唐突なんですね。
まずは旅館の風景から始まって、そこに鈴の音が鳴ってる。
でもその鈴の音には小鬼が鈴の音色を真似する声が被さってるんだけど、
次のシーンはパジャマ姿で歯ブラシを口にくわえたおっこが
不思議そうな顔して物置の中をのぞき込んでるんですよ。
その前にまず鈴の音に気づく場面が必要じゃない?って思いまして。

それと彼女が亡くなったはずの両親と出会うシーンがいくつか出てくるんですけど、
それが夢なのか、亡霊なのか、過去の回想なのかがわかりづらいんですね。
スタさんなんかは「その地続きな感じがいい」みたいに褒めてたんですけど、
ただでさえ彼女の廻りには幽霊が何体も出てくるのに
そこをはっきりさせないといろいろとわかりづらくなる。
特に終盤、おっこが両親を亡くした原因となった事故の当事者と
その家族に知らずに出会うシーンがあるんですけど、
そこで彼女が両親の死を自覚し、取り乱した彼女は
現われた両親の亡霊に泣きながら話しかけるんですね。
それまで両親の幽霊を「幽霊」として描いてこなかったので
このシーンのどこまでが現実で、どこまでが幻なのか
その線引きが非常に曖昧でなおさらなんだかわかりづらいんですよ。
錯乱した瞬間から宿泊客であるその家族はほったらかしになりますし。

おそらく原作シリーズから面白いエピソードをいくつも引っ張ってきて
総集編的にまとめて一本にしてるんだろうなとは思うんですが、
それにしても細かい部分をはしょりすぎてて
一見には話を見失う瞬間がちょいちょい出てくるんですよ。



(続く)






※とりあえず高坂監督の過去作を





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