どうも、はちごろうです。


新宿・歌舞伎町にある商業施設「新宿ミラノビル」が年内いっぱいで閉館。
それにより、ビルに入っていた東急系の4つの映画館も閉館されます。
特に新宿ミラノ座(現・新宿ミラノ1)は都内最大の映画館で、
一時期は1200人以上の客席数を誇っていました。
東京国際ファンタスティック映画祭などのイベントなども開催して、
昭和の映画ファンには思い出深い映画館でありました。
とはいえ、今回紹介する映画を観たのはミラノ座の地下、
新宿ミラノ2(旧・新宿東急)だったんですが。
では、映画の話。




「ザ・レイド GOKUDO」











2011年に世界中のアクション映画ファンを熱狂させた
インドネシア発の格闘アクション「ザ・レイド」の続編。



あらすじ


麻薬王リアディのアジトである高層マンションを陥落させた警察官ラマ。
だがそのことで彼はマフィアの目の敵になりつつあった。
警察の内部調査官ブナワルはそんな彼に目をつけ、
彼をインドネシア最大のマフィア、バングンの元に潜入させる。
彼はバングンと手を組んでいる警察幹部の摘発を目的としていた。
ラマは最初は断るが、兄が何者かに殺されたことで覚悟を決め、
妻と生まれたばかりの子供をブナワルに守ってもらう代わりに任務に就いた。
彼は服役中のバングンの息子ウチョに接触するため、
ウチョを刑務所送りにした有力政治家の息子を半殺しの目に合わせて服役。
元々敵の多いウチョを刺客から守るなどして信頼を得たラマは
出所後、ウチョを通してバングンの元で構成員として働き始める。
一方、リアディの後釜を狙っていた新興組織の若きボス、ブジョは
父親から冷遇されていると感じていたウチョに密かに接触。
バングンと休戦協定中の日本のヤクザ・ゴトウ組を戦争状態に持ち込み、
二人で世代交代をもくろもうと提案を持ちかける。
そのため、バングンの元で長年働いていた殺し屋プラコソを殺し、
それをゴトウ組の仕業であると偽るのだが・・・。




(日本を除く)世界が熱狂したアクション大作の続編



麻薬組織とSWATチームとの攻防戦を描いた前作「ザ・レイド」は
世界中の映画ファンを魅了したというのだが、
案の定、日本ではあんまり盛り上がった印象はなかった。
公開規模も小さくて、ホントに一部の映画ファンだけが盛り上がってた感じ。
実は私も劇場で観ないでソフト化されてから借りたんですが、
そもそもそんなにアクション映画に素養がないもんだから
「これ、言うほどすごいか?」って印象でした。
(まぁ、借りたブルーレイが再生不良を起こしたというのもあって・・・)
まぁ、それはストーリーがあってないようなものだったからってのもあり、
銃撃戦と、インドネシア発祥の格闘術シラットを駆使した
格闘に次ぐ格闘の連続はすさまじいものがありました。




型がないからこそ強い武術、シラット



とはいえ、シラットという武術がどういうものなのか?
日本人にはなじみの格闘技、例えば空手とかカンフーとか、
そういった何度も見たことのある格闘技なら
観た瞬間に「あぁ、これはあれだな」ってわかるわけですが、
シラットはまだ日本には浸透していない格闘術なので
何をもってして「シラット」なのかはいまいちわからないのも事実。
というわけで、パンフ読んだりネットで情報拾ったりしてみたんですが、
実はシラットという武術、あくまで武術を行うための心構えの部分がメインで、
格闘の型そのものは結構なんでもありな感じらしい。
だから素手での近接格闘だけでなく、道具を使った格闘もあり。
例え青龍刀を使っても中国武術ではなくシラットになるらしい。
敵にダメージを与えるのが主目的で、そのための手段は個人の裁量で。
だからかどうかわかりませんが、本作の格闘シーン、
とにかく観ていて「痛そう」なんですよ。
結構えげつなく殴ったり、蹴ったり、折ったり、ひねったり。
アキレス腱はナイフで切られるためのものだし、
攻撃されて吹っ飛んだ敵が壁の角に激突するのもあり。
観ていて「ホントにこれ、死んでないの?」ってくらい。
その昔、オーストラリアのアクション映画もこんな感じで、
とにかくむちゃくちゃ危険なスタントアクション多かったけど、
インドネシアのアクションもまさにそんな感じですわ。
しかも今回は前作の銃撃戦や格闘戦だけでなく、
本格的なカーチェイスもふんだんに盛り込まれていてすごかったです。




爪を隠せる賢者、爪を研ぎたがる愚者



さて、我が敬愛する立川談志師匠が高座で話していたんですが
(あれは確か「堪忍袋」か「天災」のまくらだったと思うんだけど)、
師匠があるヤクザの親分と話していた時に
「ヤクザとして大成するために重要なのは何ですか?」と訊いたら、
その親分が「忍耐です」と答えた、というのがありまして。
一般人から見れば毎日喧嘩ばかりしてるイメージの渡世人の業界で
「我慢が出来るやつ」が一番出世する、というのは皮肉なもんですが、
考えてみれば「能ある鷹は爪を隠す」というやつですね、これは。
北野武監督の「アウトレイジ」でも、最終的に生き残ったのは
必要最低限の暴力しか使わなかった連中だけなんですよ。
何が言いたいのかというと、本作もまさにそういうテーマを含んでいて、
ボスのバングンは日本のヤクザ組織ゴトウ組と友好関係にあり、
警察と組んで、とにかくもめ事を回避することに腐心している。
で、これが息子のウチョにはとにかく気に入らないわけです。
「自分たちの国なのになんでヨソ者に気を使ってるんだ?」と。
しかしバングンの立場にしてみればこれが最善の策であり、
無駄な戦いをするくらいなら共存共栄した方がお互い死人も出ない。
そういう判断が出来るからこそバングンはボスとして君臨してきたわけです。
ところがきちんと統治されている組織というのは
当然ながら人材刷新の機会はなかなか生まれないもので、
そこに敢えて波風を立たせようとしたのがブジョ。
彼は同じようにくすぶってるウチョをたきつけて、
バングン達とゴトウ組に戦争させているすきに
自分が次世代のボスの座に収まろうと画策するわけです。
結局、「戦争」というものを望むのは何も政治家ばかりでなく、
「平和だとしても硬直化している日常」を変えたいと願う者なのだと
改めて考えさせられました。まぁ、本作にとっては余計な思考ですが。


しかしながら本作で言いたいことがないわけではない。
今回の続編、とにかく上映時間が長いんですよ。146分。
いくら気合の入ったアクションのフルコースでも、
さすがに2時間半は長すぎますわ。
それと後半のある展開からラストに至るまで観ていくと、
どうやらこの作品、まだまだ続きを作る気満々で。
なかなか中途半端な感じでエンドロールが始まるので、
「ここまで付き合ってこれか!?」って感じになります。
とはいえ、未体験のアクションシーンは一見の価値あるし、
興味があれば観に行ってみるのもいかがでしょうか?



[2014年11月23日 新宿ミラノ2]





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