どうも、はちごろうです。


先日のキングオブコント2014の話を。


今年は昨年までと決勝戦のルールにかなりの変更があり、
昨年までの「決勝8組がコント2本やってその合計点で決める」から、
「決勝に勝ち残った10組で1対1の対決を5試合やって、
 勝ち残った5組がラストマンスタンディング方式で決める」に変わった。
審査方法に関しては例年いろいろと批判が起きる。
今回のも前回までの方式同様、1組目が不利になるルールのため
「チョコレートプラネットがかわいそう」という意見が多発した。
しかし、そもそも数値化できないお笑いに優劣を決めるという、
それ自体がかなり無理があるわけです。
そして審査をする芸人や構成作家側の感覚と、
観客や視聴者の感覚にもずれも生じているので、
これはもう、致し方ないような気がします。


さて、今回の決勝1回戦。シソンヌvs巨匠。
「生活保護費をパチンコですったダメなおっさんが
 戒めのために臭いラーメンを食べに来る」話と、
「公園で古新聞の中にパチンコ玉を入れて丸め、
 これでおじさんを作ってると豪語する男」の話と、
どちらもブルーカラーの、かなりのダメ男が登場する。
実はこの後に登場する、さらば青春の光のネタも
「実は下ネタの苦手な定食屋の常連客のおっさん」という、
やはり民度の低そうな舞台設定となっていて、
芸人さんたちが暮らす生活の荒れっぷりというか、
庶民生活の荒み具合みたいなものが垣間見えるネタがいくつかありました。


あと、今回の大会で一番印象に残ったのは、
いま芸人に求められているものは「身体性」だということ。
今回のキングオブコント、決勝で披露された15本のネタは
どれも甲乙つけがたいほど完成度の高いものばかりでした。
これはここ30年にわたってお笑いのネタに関して研究が進み、
もう大抵の笑いのパターンが出尽くしてしまった感があって、
実はもうどんなネタを作ってもオリジナリティは発揮しにくい現状がある。
つまり、ネタの新鮮さではもう勝負がつかない状況になってる。
となると結局は演者の質、つまり演技力で差をつけるしかなくなってくる。

センスの笑いから、動きの笑いへ。

これが如実に表れていてのがバンビーノの1本目。
「踊りながら狩りをする部族」という架空の部族を描いたネタだったんだけど、
意味不明の言語と大きな動き、捕まえた時に神々しく立ち尽くす様など、
子供がすぐさま真似したくなるような分かりやすく可笑しいネタだった。
もっと純粋に演技力、キャラクターのなりきり力でいえば
シソンヌのボケ担当のじろうさんの演技力が出色。
一本目のパチンコで有り金すったダメおやじと
2本目のタクシーに乗った失恋したての女性、
パッと見で同じ人がやってるとは思えないくらいの完成度だった。
他にも、「後輩の手品のために貸した1万円を取り戻すため、
後輩をパンツ一丁にしてしまう男」のネタをやった犬の心の1本目や、
チョコレートプラネットの1本目の「ポテチの袋を開ける業者」のネタなど、
ありえない状況に説得力を持たせるだけの演技力を持ち合わせている一方、
「潜入先の企業で出世した産業スパイ」のネタをやったリンゴスターは、
緊張からか経験不足からか、ツッコミの平田さんがスベりぎみで、
やはり今回は、演技力の差が評価の差にそのまま表れていると感じました。


一方、犬の心の2本目。
「後輩に女子高生の妹がいることを知った妹萌えの先輩が
 その後輩を猛烈に羨ましがる」というネタだったんだけど、
ラクロス部に所属する、髪の長い妹が部活の時にはポニーテールに、
家にいるときはツインテールにしているという話を聞いた先輩が突然、

「京都アニメーションのアニメの話してんじゃねえよ!」

と言って怒り出すんですね。
京都アニメーションというのは日本を代表するアニメ制作会社で、
代表作に「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん!」など
深夜アニメを量産してる業界のトップランナー。
「深夜の、オタク向けの、可愛い女の子がいっぱい出てくるアニメ」の
代名詞として用いられたわけなんですね。
つまりこの後輩の妹、17歳で、ラクロス部で、髪長くて、
もはや現実にいるとは思えないような要素を持ち合わせてると感じて
先輩は「その妹はホントにいるのか?」という意味で言ったんだろうけど、
この「京都アニメーション」という名詞の認知度が実はいまいちで
このくだりはやや受けで終わってしまったわけです。
有名人や企業名など、固有名詞の持つイメージは
ある意味非常にいい武器になるんだけど、
そのためには「みんなが知ってる」という前提がなければ成立しないし、
そういった意味ではここで使われた「京都アニメーション」という単語は
斬新だったとはいえ、まだ早かったのではないか?と思いました。


結局、今回のキングオブコントは、
「カラオケの歌詞に出てくる当て字がうざい」というチョコレートプラネットや
「女子高生の妹を持つ後輩に嫉妬する先輩」という犬の男を抑えて、
今大会演技力ナンバーワンのシソンヌが優勝したのは
現在のお笑いを取り巻く状況を象徴するような大会だと感じました。