どうも、はちごろうです。


「家事ハラ」という言葉をご存知でしょうか?


最近また登場した新語なのですが、正確には「家事ハラスメント」。
少し前に旭化成ホームズの公式サイトで
「旦那さんの受けた『家事ハラ』体験談募集」みたいなことをやってた。
投稿した旦那さんたちは

「掃除を手伝ったらやり方が違うと怒られた」
「料理をしたらまずいと怒られた」

など、「旦那さんが奥さんから家事について怒られた経験」が寄せられたそうだ。


しかし、この「家事ハラ」という言葉、そもそも意味が間違っている。
和光大学教授竹信三恵子氏が提唱した「家事ハラスメント」という言葉、
本来の意味は

「社会通念上、家庭の中で家事の負担を押し付けられている女性が
 それがために社会的な自立を妨げられている、
 もしくは家庭内で発言権を奪われている状態」

を指す。

 「食わせてもらってるくせに文句をいうな!」

旦那さんからこう言われて悔しい思いをした女性はまだ大勢いると思う。



ちょっと前にも指摘したことなんですが、
こうした、本来の意味とは違う意味で言葉が広まるケースは多い。



例えば、「中二病」という言葉。

これは20年ほど前にタレントの伊集院光さんが提唱した概念で
具体的には

「中学二年生頃、つまり思春期に差し掛かった男女が
 自分の中に芽生えた美意識や個性、他人と差をつけたいという思いから、
 結果的にいささか非常識な言動をしてしまう心理状態。もしくはその言動」

を指す。

例えば

・ アニソンしか聴かなかったのに急にビートルズを語りだす。
・ 父親のオーデコロンをたっぷり付けて登校する。
  もしくは、わざと寝癖を直さずに登校する。
・ 日記に自作のポエムや小説を書く。
・ 女の子なのに自分のことを「僕」と言い出す。
・ 修学旅行を欠席して、同じ日程と行程で一人旅をする(伊集院光)
・ 一浪した日芸の入学試験を野球のユニフォームで受ける(爆笑問題・田中)

とまぁ、こういった感じの「イタい言動」なわけです。

そもそもこれを提唱した伊集院さん本人は

「中学も2年生くらいになるとみんな変なことし出すよね。
 ほとんど一過性の熱病でさ。かかったかな?と思ったら中二病みたいな。
 まぁ、俺なんかは中二病こじらせて大人になってまだイタいことしてるけどさ」

と、こうした言動を半ば好意的に捉えていたわけです。
ところがこれがネット上などで広がるにつれ、いつの間にか

「思春期になるといきなり背伸びをし出して
 他人を下に見るようになるやつっているよね。
 本人みっともないのに気付いてないし、
 やだねぇ、中二病!」

と、否定的な意味合いに代わっていき、
結果、青少年が自分を高めようという行為そのものを
バカにするような意味合いで使われるようになった。

その結果、2年ほど前にラッパーのZEEBRAさんが

「中二病なんて言葉を考えたのは伊集院光か。
 全く余計なことをしやがって。島国根性丸出し!」

と、自身のツイッターで伊集院さんを批判。
まぁ、ヒップホップ的に言えばdisるという事件が起き、
ネット界隈などではちょっとした騒ぎになった。


こうした例を見るにつけ、
言葉がこちらの意図したとおりに伝わることは
実はむしろ確率的には低いのではないか?と思ってしまう。

人間は自分の使いたい解釈で言葉を使ってしまう。
そこに自分をよく見せよう、相手を貶めようという
悪意があればなおさらだ。



結局、当の旭化成のホームページでは

本サイトでは「男女の家事シェアを促進する」という趣旨で、
意欲はあるものの夫の家事がうまくできていない現状を
顕在化させる広告表現として
‘家事に対する何気ないダメ出し’のことを
「家事ハラ」とネーミングして使用しております。
 一方で、和光大学教授竹信三恵子氏の著書で
「家事ハラ」については既に用いられており、
その内容の差異を掲出する目的でご紹介をしております。

(原文ママ)

と、「私たちはこの言葉を本来とは別の意味で解釈しました」と開き直り、
旭化成側の解釈の方が都合のいいオヤジ系週刊誌が
その誤訳をさらに広めてる現状です。