どうも、はちごろうです。


とうとう7月になりまして、早いもんで今年も後半戦です。
本来なら日本の映画界は今月からサマーシーズンということで
次々と大作・話題作が登場していたんですが、
供給元のハリウッドのサマーシーズンが5月からなので、
10年前ならこの時期から公開されているはずの作品があらかた公開済みで、
もはや持ち球をほとんど使い果たしている状態ですね。
特に今年の8月興行はかなり寂しいものになりそうだなぁと感じます。
さて、映画の話。




「トランセンデンス」











「ダークナイト」シリーズのクリストファー・ノーラン製作総指揮で送る、
天才科学者の脳をコンピュータに移植したことで起こる騒動を描くSFスリラー。
主演は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジョニー・デップ。



あらすじ


人工知能研究の世界的権威ウィル・キャスター博士は、
妻で研究者のエヴリンとともに出席した講演会の帰りに銃撃される。
犯人は反テクノロジーを掲げるテロ組織「RIFT」で、
彼らは国内の5つの施設を同時多発的に襲撃。
国内の人工知能研究に致命的なダメージを与えてしまう。
ウィルは病院で一命を取り留めるが、銃弾に放射性物質が仕込まれていたため、
彼は放射能中毒を起こして余命1カ月と宣告されてしまう。
エヴリンは失意の中、ある同業者の研究に注目する。
それは生物の脳神経をデータ化してコンピュータに移植するというもの。
すでに猿による実験がある程度の成果を上げていることを知った彼女は、
ウィルの脳を最新鋭の量子コンピュータに移植することを決意する。
実験は成功。コンピュータ上にコピーされた「ウィル」は、
自らの研究を進めるために自分をネット接続するよう求める。
協力していた友人の科学者マックスの制止を振り切り、
エヴリンは「ウィル」をインターネットに接続する。
世界中の膨大な情報を世界最速の演算能力で処理し始めた「ウィル」は、
休むことなく研究を続けるのだったが・・・。




「人工知能性悪説」という欧米的な発想



先週紹介した「her/世界にひとつの彼女」に続いて
人工知能(AI)をテーマにした作品ですが、
SF映画のなかではこの「人工知能」というのはもはや定番ジャンルですね。
スピルバーグが文字通り「A.I.」という作品を作ってますし、
キューブリックの「2001年宇宙の旅」のコンピュータHALや、
「ターミネーター」のスカイネットなんかもまさにそうです。
日本でも古くは鉄腕アトムやドラえもん、アラレちゃんなど
自我を持った人工知能は数えられないくらい登場してます。
しかし、人工知能に対する考え方は日米ではかなり異なっていて、
前述したハリウッド作品に登場する人工知能は
どれも人間に危害を加えたり、また人間から恐れられたりする一方、
日本の漫画やアニメで描かれている人工知能は
人類の役に立つ、また人類と友好的な関係を築けると信じられています。
この違いはやはり宗教的な価値観の違いでしょうね。
欧米のキリスト教的な価値観では、命というものは神以外は生み出せない。
だから人間が人工的に作り出した生命は「悪」という考えが根強い。
そのために欧米ではロボットアニメってあまり受け入れられなかった。
一方、日本などは古くから八百万の神がいるとされていて、
どんなものにも神が宿ると考えられていたわけです。
だから人工物が人のように魂を持つ、という発想も受け入れやすいわけです。
本作は製作総指揮が「ダークナイト」のクリストファー・ノーランだけに
SFではありながらも限りなくリアルに「人工知能のある世界」を描こうとしてます。
そのため、やはり作品のトーンはあくまでサスペンス重視で、
先週紹介した「her」がファンタジー寄りの「人工知能性善説」だとすると、
「人工知能性悪説」に立った作りになっていると感じます。




「ヒト2.0」を受け入れる覚悟は?



とはいえ、今回の場合は新たな「人格」を一から作るのとは違い、
すでにある人間の頭脳のすべてをコピーするというやり方。
結果的には、肉体はないけれども頭脳や思考パターンが残った感じ。
再生医療が発達したとはいえ完全な肉体を一から作ることはまだ無理だけど、
人間の脳の神経パターンをデータ化してコンピュータに移植する方が
現時点ではより現実的な「不老不死」のような気がします。
しかし、そうなると新たな問題が出来るわけです。
まず、コピーされた「人格」を社会が一個の個人として認めるか?というもの。
つまり人を人たらしめるためには「肉体と精神」がセットになっているわけですが、
その肉体がなくなり、精神だけが存在し、他者と意思の疎通が出来た場合、
そもそも「ヒト」というものを再定義する必要が生じるわけです。
そしてもう一つ、これが本作では主な問題になっているわけですが、
人工知能が独自の進化によって生み出された技術を使って
人間の能力が急速に進化したとする。
それが社会の教科書にあるような、猿人がヒトになるよりもっと早く、
もっと劇的に進化する事態になったとき、
その進化を受け入れる覚悟があるか?ということです。
本作では「ウィル」が開発したナノテクノロジーによって
現代医療では治療不可能だった病気が治るようになっただけでなく、
治療を施された人間は驚異的な身体能力と治癒能力を持ち、
しかも意識の共有も出来るようになってしまうわけです。
本作でのこうした事態はまだまだ絵空事の段階ですが、
これは将来的に必ず問題になってくると思います。
その議論のたたき台として本作はそのきっかけになるように思います。




素顔のジョニデは見たくない?



でも本作、結構お客さん入ってないんですよねぇ。
内容が難しいと思われたのかもしれないですが、
いまをときめくジョニー・デップ主演でこの体たらくという。
でもこれはある程度予想できたことでして。
実はここ最近の彼の作品を思い出してみるとなんとなくわかるんですが、
彼が出演して大ヒットを記録してる作品というのは、
「パイレーツ・オブ・カリビアン」「チャーリーとチョコレート工場」
「アリス・イン・ワンダーランド」とたいていがキャラもので、
奇抜なメイクをしていない一般人の役を演じた作品は
「ネバーランド」や「シークレット・ウィンドウ」「ラム・ダイアリー」など、
ほとんどが大コケしてるんですね。
おそらく多くの観客は今回のメイクなしのジョニー・デップに対して
物足りなさを感じてしまったのかもしれないです。


死の床にいる愛する人の人格をコピーする形で生き返らせる、という意味では
ホラーの古典「フランケンシュタイン」と共通するところもあるのですが、
人工知能という新たな技術に対して希望を感じるか、不安を感じるかで、
作品の評価が違ってくるような感じがしますね。



[2014年7月6日 T・ジョイ大泉 6番スクリーン]





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