どうも、はちごろうです。


今日は真夏日になったところも多かったようですね。
仕事場の気温も30℃をばっちり超えてきました。
とはいえ、明日は朝から雨で、気温もかなり低くなるみたいです。
どちらさまもお身体ご自愛ください。
さて、映画の話。




「ブルージャスミン」










お馴染みウディ・アレン監督の最新作。
NYのセレブだった女性が夫の逮捕を機に没落。
サンフランシスコの妹の元に転がり込んだことをきっかけに
精神的に追い詰められていく様をコメディタッチに描く。
主演のケイト・ブランシェットが見事アカデミー最優秀主演女優賞を受賞。



あらすじ


大学在学中に大金持ちの夫ハルに見初められて結婚。
長いことNYでセレブ暮らしをしていたジャスミン。
しかし夫が証券詐欺で逮捕されたことをきっかけに没落。
無一文になった彼女はサンフランシスコで暮らす妹、
ジンジャーのもとに転がり込む。
ジャスミンは元々本名をジャネットというのだったが、
夢見がちでプライドの高い彼女は現実を受け入れようとせず、
いつまでも贅沢な暮らしを改めることができない。
しかも貧しい暮らしをしているジンジャーや
彼女が付き合う男たちをどこまでも見下し、
「もっといい男と付き合いなさい」と説教までする始末。
そんなジャスミンは再びセレブの座に返り咲くために
インテリアデザイナーの資格を取ることを目指すが、
学校に通うことが許せない彼女はネットでの通信教育を考える。
だがそもそも彼女はパソコンの使い方すらままならず、
パソコン教室に通うために歯医者の受付の仕事に就くことに。
やることなすこと思い通りに行かないジャスミンは、
次第に精神のバランスを崩していくのだった。




やんごとなき女優ブランシェット、ご町内に降臨



本作で見事アカデミー賞主演女優賞を受賞したケイト・ブランシェット。
一般的には「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの
エルフの女王ガラドリエル役が一番有名ですかね。
本作のパンフレットに詳細なフィルモグラフィが載ってたんですが
(今回のパンフレットは資料としてホントよく出来てる!)、
改めて彼女の出演作品を確認してみると非常に興味深い経歴なんですよ。
例えば彼女が映画スターとしてブレイクしたのは
初のオスカーノミネートを果たした歴史大作「エリザベス」。
英国女王エリザベス一世を圧倒的な存在感で演じてました。
あとは先述の「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフの女王に、
初めてオスカーを獲得したマーティン・スコセッシ監督の「アビエイター」。
あれで彼女は伝説の女優キャサリン・ヘップバーンを演じたのかな。
あと異色なところでは「アイム・ノット・ゼア」という作品で
まだ存命の伝説のミュージシャン、ボブ・ディランを演じていました。
といったような具合で、彼女の演じる役はどこか浮世離れしてるんですよ。
現世の苦労とは無縁の世界で生きている役ばっかりというか。
というか、そういう役しか似合わないんですよ、彼女は。
私が観た彼女の出演作品の中で唯一の現代劇「狂っちゃいないぜ」。
これで彼女は航空管制官の恋人役で出てくるんですが、
他の出演者に比べるとどうにも「一般人」に見えないんですね。
我々と同じ町内に住んでいるようにはとても見えない。
それだけ彼女自身に「お姫様」のような高貴な品格が備わってる、
そういうやんごとなき雰囲気を醸し出せる稀有な女優さんなんですよ。
で、今回ウディ・アレン監督が彼女に用意したのが
「落ちぶれたセレブリティ」という役。
彼女のイメージを損ねることなく現代劇に起用するには
まさにうってつけのキャラクターだったと思います。




欲望という名の電車にしがみつくジャスミン



さて、「お姫様のような暮らしをしていた女性が没落し、
貧しい暮らしをしている妹の元に身を寄せ、
次第に精神を崩壊させていく」という物語と聞くと、
お古い映画ファンならピンと思い浮かぶのが「欲望という名の電車」。
テネシー・ウィリアムズ原作の同名戯曲を監督エリア・カザン、
主演ビビアン・リー、マーロン・ブランドで映画化した傑作ドラマで、
旧家を継いだ女性ブランチが没落し、無一文になった彼女は
家を出た妹ステラを頼って街にやってくる。
だがステラの夫で粗野なスタンリーは
彼女の上品な立ち居振る舞いが気に入らず、
ブランチが実は故郷でふしだらな生活をしていたことを知ると、
過去を隠してスタンリーの友人ミッチと結婚しようとしていた彼女を責め、
ついにブランチは精神を崩壊し、施設に送られてしまう、という話。
で、本作は細かい設定はかなり変わっていますが
物語の展開自体は「欲望という名の電車」とほぼ一緒です。
(ちなみに、「欲望という名の電車」の映画版の物語は
 原作の戯曲に比べると結構刺激を弱めているみたいですね。
 観てみると「あれでも?」って思いますけどね)
ですが、元ネタの「欲望という名の電車」の主人公ブランチに比べると、
本作の主人公ジャスミンには多分に自業自得な感じが付きまといます。
本作は彼女がサンフランシスコに移り住んで精神を崩壊させていく様と、
NYで派手な暮らしをしてた彼女が没落するまでを交互に見せていくのですが、
彼女自身が破滅していく姿に全く同情できないんですよ。
それだけ彼女の生き様が姑息で、自分勝手なんですね。
まぁ、一言でいえば「嫌な女」なんですが、
ここまで突き抜けていると笑えてしまう感じですわ。




我々の中にいる「ジャスミン」



自分を、そして現実を偽らなければ生きていけない弱い人というと、
数年前に「クヒオ大佐」って作品がありましたね。堺雅人主演の。
あれも自分を高貴な出自の国際線のパイロットと偽った男が
実は悲しい生い立ちを背負っていた、という話だったのですが、
とはいえ、本作のジャスミンのような人は実社会で結構いるんですよ。
つまり自分にとって都合の悪い現実からとことん目をそらし、
時には自分を偽ってまでぬるま湯みたいな生活にすがる人。
皆さんにも心当たりがあるんではないでしょうか?
例えば、健康診断で「要検査」判定が出ているにもかかわらず、
調べて病気が発覚するのが怖くて再検査から逃げる人、なんてのもそうですね。
まぁ、一番わかりやすいのはいま話題の「美味しんぼ」騒動ですわ。
あれも結局、作品の内容についてその真偽を具体的に検証することなく、
ただ「風評被害を助長するな!」の一点張りで批判してる点でいえば、
やはり現実を知りたくない、知って悪い結果が出たら嫌だから
「悪い噂は嘘だ!」と決めつけることでやりすごそうとするわけです。
その結果、我々に待っているのは、
もしかしたらジャスミンのような末路かもしれないですね。


本作は現実から逃げ続けてきた女がついに現実に取り込まれ、
空想の世界に逃げてしまう姿をコミカルに描いているんですが、
もしかしたらこれは先の見えない、悪くなる一方の現実から目をそらし、
耳触りのいい現実にすがってしまう
姑息な我々を描いた作品なのかもしれないですね。
そういった意味では、ちと笑えないですが(^^;






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[2014年5月11日 シネ・リーブル池袋 1番スクリーン]