どうも、はちごろうです。


昨日、考え考えどうにかあの日記を書いたわけですが、
やっぱりきちんと推敲出来てない段階で
日記を書くのは危険だと再確認した次第です。
今後は「迷ったら書かない」を徹底しようと思います。
さて、気を取り直して映画の話。




「ラッシュ/プライドと友情」











1976年のF1グランプリを沸かせた二人の天才レーサー、
ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの戦いを描くドラマ。
主演はクリス・ヘムズワースとダニエル・ブリュール。
監督は「ビューティフル・マインド」のオスカー監督ロン・ハワード。



あらすじ


1976年のF1グランプリの第1戦。
天才レーサーのジェームズ・ハントとニキ・ラウダは
スタート直前の車内で互いの姿を確認していた。
二人は6年前、F3のレースで初めて出会った。
攻撃的なレース運びと天性のカリスマ性を持ち、
人気を集めていたジェームズに対し、
緻密なレース運びと車の構造を熟知したニキ。
ニキはオーストリアの資産家の出身でありながら、
実家に頼らず独自に銀行からの融資を取り付け、
財政難にあえぐF1チームに半ば乗っ取るような形で参加する。
その知らせを聞きつけたジェームズは
彼のレース運びと陽気な人柄に惚れたスポンサーをたきつけ、
自分たちもF1に参戦していくのだった。




ハリウッドでの典型的成功例、ロン・ハワード



監督はオスカー受賞監督ロン・ハワード。
元々子役出身の俳優だったんだけど、
70年代後半から映画監督としてデビューし、
80年代には「スプラッシュ」「コクーン」「ウィロー」などヒット作を連発。
で、彼の監督としての地位を確立したのは
やっぱり91年の「バックドラフト」ですかね。
消防士の世界を描いて日本でも大ヒットしました。
で、そうした興行収入狙いのヒット作の監督の時代から、
90年代になると「遥かなる大地へ」とか「アポロ13」とか
徐々にオスカーレースに絡んでくる大作ドラマを監督するようになって、
ついに2001年には「ビューティフル・マインド」で
念願のオスカー監督となるわけです。
今回改めてフィルモグラフィを調べてみて気付かされるのは、
ハリウッドの映画監督としては理想的なキャリアを積んでるってことです。
自分の中に描きたいテーマがないのではないかというくらい
監督作品のジャンルが多岐にわたってるにもかかわらず、
数々のヒット映画を監督して興行的な成功を収めつつ、
業界的な信頼も獲得してから満を持してオスカーを狙いにいって、
で、きちんとかっさらっていく感じというか。
アカデミー賞ってただ単に実力だけで獲れるものではなくて、
業界内での実績とか、同業者からの信頼とか、その年のトレンドとか、
そういった多角的な要素も含めて審査されるんですよ。
だからおそらく今年もオスカー獲れずに困ってる誰かさんも
もう少し見習った方がいいような気がしますわ。




「アルゴ」の成功が生んだ粗い画質



ここで少し昨年のアカデミー賞の話。
昨年アカデミー作品賞を受賞した「アルゴ」。
70年代のイラン革命に巻き込まれた米大使館員を
奇想天外な方法で助け出した実話の映画化でしたが、
あの作品では当時の雰囲気を再現するために
最近では使用されない16ミリフィルムで撮影して、
それを35ミリフィルムに焼きなおすという手法を取ったんですね。
で、本作は70年代に活躍した実在のレーサーを描いてるんですが、
ちょっと「アルゴ」みたいな感じで画質が粗いんですよ。
実はこの前紹介した「アメリカン・ハッスル」なんかも
やっぱり70年代当時の雰囲気を出すためか画質が粗くて、
ちょっとしたブームになってるみたいです。
昨年暮れに紹介したスペイン映画「ブランカニエベス」が
明らかに一昨年のオスカー受賞作「アーティスト」の影響を受けてたように、
本作も、優秀な作品はさらに優秀なフォロワーを生むという
好循環の一例だと感じました。




成長のための「敵」の重要性



さて、本作では実在した二人のレーサーの生きざまを題材に、
「ライバルの存在」がいかに人を成長せしめるか、
ということを訴えかけてくる。
レーサーとして同程度の実力を備えた二人でありながら、
方や攻撃的、方や緻密で繊細なレーススタイル。
そして、ジェームズが嫉妬するほど車に対する知識や
資金を自ら集める政治力を持つニキが、
激しく嫉妬したジェームズのカリスマ性。
互いが互いを敵視しつつも、同業者としての実力を認め、
次第に互いの存在をレーサーとしてのモチベーションとしていく。
そうして両雄が互いの存在をかけて切磋琢磨していく姿に、
世界中のファンが熱狂していったわけです。
最近はそうしたいい意味での「敵対関係」という構図が
なかなか作られなくなりましたね。
それはなにもF1レースだけに限らず、
スポーツでも芸能でもなんでもそうなんですが、
敵を作らず、業界全体で和気あいあいとやっていこうというのは、
互いが互いを批判しない、慣れあいを生む危険性があるし、
対立関係があることで世間の注目が集まって
結果的に業界全体が潤うこともあるんですけどね。

レース場の中でも外でも、二人の人生は切磋琢磨していく。
人生という長いレースの先に何があるのか、
そして二人は何を学んだのか。
迫力のレースシーンも含めて良質の作品でした。



[2014年2月9日 新宿バルト9 5番スクリーン]