どうも、はちごろうです。


連日寒い日が続いてますね。
部屋でパソコン打っていても手がかじかんで
なかなか思うように進みませんわ。
って、毎回長々書いててどの口が?と
我ながらそう思いますが。
さて、映画の話。




「ウルフ・オブ・ウォールストリート」











本年度アカデミー賞5部門ノミネート。
レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシが
5度目のタッグを組んで送る経済ドラマ。
実在した株式ブローカーの享楽と転落の日々を描く。



あらすじ


1980年代初頭、ベンジャミン・ベルフォードは
ウォール街の大手証券会社に就職した。
就職早々、彼は上司から食事に誘われ、
「優秀な証券マンとはいかに客を儲けさせるか?ではなく、
 いかに客に株を持たせ続けて取引手数料をせしめるか?だ。
 そのためには常にハイテンションでいろ。
 酒、ドラッグ、マスターベーション、どんな手を使ってもかまわない」と、
ウォール街の真の流儀というものを叩きこまれる。
半年間の研修を経て、ついに彼はトレーダーデビューを果たすが、
就任当日に起きたブラック・マンデーの影響で会社は倒産。
彼は新聞の求人欄で見つけた地方の弱小証券会社の面接を受ける。
そこは大手の証券会社ではリスクが高すぎて扱わない、
いわゆる「ペニー株」とよばれるクズ債権を扱っていた。
最初は儲かるのか?と不安に思っていたベンジャミンだったが、
取引手数料50%という破格の条件に惹かれて就職。
早速彼は前の会社で培ったセールストークを生かし、
またたく間にトップトレーダーとなっていく。
その後、近所の食堂で偶然知り合った青年ドニーと意気投合した彼は、
つぶれた自動車修理工場を借りて自前の証券会社を設立。
近所でくすぶってた無職の若者たちをかき集めて、
自身のセールストークのノウハウを教え込んだ。
彼の会社ストラットン・オークモンド社は瞬く間に規模が拡大。
ついにはウォール街の高層ビルのワンフロアを借り切り、
業績拡大の乱痴気騒ぎを繰り広げるまでになった。
噂はウォール街中に知れ渡り、彼は「ウォール街の狼」と呼ばれるようになったが、
FBIもベンジャミンの動向を追い始めるのだった。




ディカプリオとスコセッシの絆の元



「ギャング・オブ・ニューヨーク」「アビエイター」
「ディパーテッド」「シャッターアイランド」と
次々とタッグを組んできたディカプリオとスコセッシ監督。
なぜ二人がタッグを組み続けるのか?といえば、
お互いの抱えている業界内での立ち位置とか、
セルフイメージといったものがかなり似通っているからだろう。
そもそもマーティン・スコセッシという監督さんは
「タクシードライバー」や「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」など
数々の名作・傑作を世に送り出しているものの、
ハリウッドで正当に評価されているとは言い難い。
それは彼の作り出す物語の主人公が正統派のヒーローではなく、
うだつの上がらない男が自らの存在を周囲に知らしめようとして、
粋がった挙句に己の限界を感じ、鬱々としていくような、
いってみれば「負け犬」の本音を描いてきたからだろう。
一方、ディカプリオという俳優もハリウッドでは冷遇されている方である。
彼は高い演技力で早くから若手実力派と目されていたけれども、
「タイタニック」の記録的大ヒットにより
周囲からは演技力よりもそのスター性を求められるようになった。
ここで割り切ってベタな恋愛映画の2,3本でも出ておいて
業界をそれなりに潤していればよかったのかもしれないけど、
彼は「タイタニック」で手にした名声を使って
実力派の映画監督の企画に好んで出演するようになった。
その「オスカーください!」という下心見え見えの仕事ぶりが
逆にハリウッドでの反感を買ってしまったのか、
ゴールデングローブ賞は何度も受賞しているにもかかわらず、
アカデミー賞にはノミネートすらされない、ということが何度となくあった。
つまり、二人は人気も才能も確立していながらどこか充たされず、
「俺はダメじゃねぇ!いつか俺を認めさせてやるんだ!」と
いつまでたっても自分を肯定できない鬱屈した心理を抱えているように思う。
彼らが何度もタッグを組むのはそうした自己肯定感のなさという点で
波長が合っているからではないでしょうか。




「地獄の沙汰も金次第」という現実



さて、本作は実在の株式ブローカーの半生を描いているのですが、
正直なところ「ホントにこれ、やってたの?」っていうくらい
もうめちゃくちゃな日常が描かれてるんですね。
ランチで酒を飲むのは日常茶飯事で、
会社の中でコカイン吸ったり、売春婦とセックスしたり、
しかもそれを会社の経費で落としてたり。
取り締まってる取引委員会の連中には賄賂渡して、
ひたすらあくどい稼ぎを繰り広げる。
そして命運尽きてとうとうFBIに逮捕されるも、
収監された刑務所は大富豪の経済犯専門のもので
刑務所とは名ばかりの豪華な施設で悠々とした服役生活。
そして出所後はニュージーランドで講演活動。
金の儲け方のレクチャーには受講者がひっきりなし、
というデタラメもここまできたら大したもんだという有様。
「金がないのは首がないのと一緒」という、
認めたくないが動かしようのない真実を
これでもかというくらい突き付けてくる作品でした。




それでもディカプリオがオスカーを獲れない理由



確かに本作は演出もディカプリオの演技も最高で、
むしろオスカーを受賞するなら
「ディパーテッド」よりこっちだっただろうと思う。
だが残念ながら今回もディカプリオはオスカーを逃すと思う。
なぜならやはりオスカーは「ヒーロー」を好むんですよ。
誰かのために自らを犠牲にする役が好きだし、
人当たりのいい好青年役に票が集まるんですよ、やっぱり。
確かにディカプリオはいつオスカーを獲ってもおかしくない、
相応の実力を持った俳優だと思います。
ただ、彼が「タイタニック」以降演じてきたキャラクターは
必ずと言っていいほど暗い過去や非道徳な側面を持ち、
しかもそのことを身近な人間にまで隠し通そうとする、
一言でいえば「信用できない嫌な奴」なんですよ。
今回もさんざんやりたい放題やった挙句、
自らの刑期を減らすために仲間を売りまくるわけですから、
魅力的ではあるものの腹立たしいんですよ。
それに彼が結局金儲けに固執したのは
ただ裕福な暮らしがしたかったからではなく、
「金を儲けない自分」は誰からも相手にされないという事実、
その圧倒的な孤独感から逃避したかったからで、
やっぱりそんな人間にはさすがになりたいとは思えないですよ。


一時的ではあるものの社会的成功を収め、享楽の日々を送った男。
だが金も、名誉も、妻も、友人も失って、
彼のもとに残ったものは彼にあやかりたいと願う金の亡者のみ。
ウォール街の喧騒と幻想に踊った者の孤独を
濃密な内容とスピードで描き切った大作です。
上映時間3時間弱ありますがあまり気になりません。
R18ですが面白かったです。是非是非!



[2014年2月2日 ユナイテッド・シネマとしまえん 3番スクリーン]