どうも、はちごろうです。

ここ数日、スーパームーンとやらで月が大きく見えましたね。
東京だと高いビルとかがあってなかなか見られないですが、
月の出直後の、地表近くに出ているものすごい大きな月が実は好きです。
どこかでいつか見られることがあったらいいな、と密かに思ってます。
さて、映画の話。

「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」

本年度アカデミー賞オリジナル脚本賞ノミネート。
親友から花嫁介添人に選ばれたアラフォー女性の奮闘を描く。
ミルウォーキーに住むアラフォー女性アニー。
全財産をつぎ込んで開店したケーキショップは繁盛せず閉店。
金のなくなった彼女は仕方なく妹のアパートで暮らしている。
プレイボーイのテッドとは体だけの付き合いを続けていた。
そんなある日、幼馴染の親友リリアンが結婚することになり、
彼女は花嫁介添人(ブライズメイズ)のまとめ役(メイド・オブ・オナー)を頼まれる。
アニーは名誉ある大役に選ばれた嬉しさと親友が結婚する寂しさが
ない交ぜになった複雑な思いでその大役を引き受けることとなった。
婚約パーティーに出席したアニーは、そこで他のブライズメイズ達を紹介される。
リリアンのいとこで3人の子持ちのリタ、新婚ほやほやのベッカ、
花婿の妹で重量級のメーガン、そして花婿の上司の妻ヘレンの4人。
美人で大金持ち、何をやらせても起用にこなすヘレンに
アニーはメイド・オブ・オナーの座を守ろうと対抗意識を燃やすのだった。








「ブロマンス」の女性版=「ウーマンス」?


2005年に公開された「40歳の童貞男」のヒットをきっかけに、
「ブロマンス(bromance=brother+romance)」という
男同士の友情をテーマにしたコメディ作品が数多く製作されるようになった。
そこには20代から40代の未婚男性のリアルな本音も織り込まれ、
「気の合う男友達と映画を観に行く」という新しい観客層の獲得にも成功した。
しかし、恋愛や結婚に対する男の本音が描かれているブロマンスは、
女性にとっては決して男性同様に楽しめるものではなく、
むしろ反感を買っているジャンルでもある。
そこで、本作の主役アニーを演じたコメディアン、クリステン・ウィグは
「ブロマンス」の女性版を目指して本作の脚本を書き上げた。
そうして出来た本作は、結婚という女性にとって人生最大のイベントに
女性がどんな思いを抱え、そこから何を感じているのかが
リアルに、そしてとんでもなくバカバカしく描かれている。
この映画のヒットをきっかけに全米では「ブロマンス」に対抗して
「ウーマンス(womance)」という造語が出来たらしいです。



「ブライズメイズ」は大人の親友の証し


さて、本作で主人公のアニーは花嫁介添人に選ばれるわけだが、
この「花嫁介添人」という役割、日本人にはなかなか馴染みがないものである。
日本では結婚式・披露宴やそれに付随するパーティーの企画・運営は
新郎・新婦の二人、もしくは結婚式場が取り仕切るのが一般的であるが、
アメリカの場合は新婦が責任者を友人・知人の中から選ぶのが一般的である。
つまりアメリカ人女性にとって「誰かの花嫁介添人に指名される」ということは、
花嫁にとって信頼のおける人物であるという証しであり、
ましてやその責任者である「メイド・オブ・オナー」に選ばれるということは
花嫁から「あなたは一番信頼できる親友である」と言われていることに等しい、
まさに女性として、社会人として大変な名誉なことなのである。

さて、その名誉ある役割に選ばれたアニーは人生のどん底状態にいた。
唯一のとりえを生かして開店したケーキショップはつぶれ、
出来そこないだと思っていた妹のアパートに居候する日々。
唯一付き合っていると言える男とは体だけの関係。
全くもって社会的に成功しているところが見いだせずにいた。
そんな日々を慰めてくれていた親友のリリアンが結婚を宣言。
彼女は少しの寂しさを抱えながらもメイド・オブ・オナーを引き受ける。
それは自分が大人として成長したと確認できる証しでもあった。
だが、同じブライズメイドにヘレンがいたことで雲行きが怪しくなる。
既婚者で、金持ち。パーティーを開くことに慣れていて、
誰もが素晴らしさを認めるような完璧なプランを提案してくる。
アニーはそんな彼女に対抗意識を燃やしていく。
それはただ単に一番の親友の座を奪われることへの危機感だけでなく、
自分が自立した大人として成長したことの証しを
彼女に横取りされることへの不安でもあった。
このように、結婚というものはたとえ自分が当事者ではなくとも、
多くの人々、特に女性にとって自分の人生を考えさせるイベントなのだろう。



腹の底を「ぶちまける」ことで深まる絆


本作はそんな人生最大のイベントである結婚に立ち会うことになった女性たちが、
様々な経験を通して自分を見つめ直し成長していく姿を
コメディタッチで、それもかなりお下品な笑いで見せていく。
なかでも本作最大の見せ場、新婦と介添人の6人でメキシコ料理店に行った後、
式での衣装を選びにウェディングドレスの高級店に行くシーンは、
コメディ映画史に残るぶっちぎりの下品さで、
女性にとってはかなり閉口する場面ではあるのだが、
この場面で彼女たちはお互いの腹の中をまさに「ぶちまけ」、
それにより彼女たちは強い友情で結ばれていくことになる。
だからこのシーンは実は理にかなったシーンだと思う。
ただ、残念ながら本作で登場する6人の女性について、
キャラクターの造形にバラツキがあったのも事実で、
アニーやヘレン、メーガンに比べると、リタやベッカの見せ場が
後半ほぼ皆無となっていたのはちょっと残念でした。

下品な笑いの底にきちんと敷かれている友情の本質と、
大人の誰もが心の底で抱えている「自分が大人であること」に対する不信感。
日本では無名の役者ばかりだけど、出演者はコメディアンとして一流ぞろい。
とことんバカバカしく、そして同時に考えさせられる一本でした。