どうも、はちごろうです。

何度か日記にも書いていますがパソコンの調子がやはり悪い。
さっきもいきなり強制終了するし、しかも再起動後も動作が重い。
どうやらメモリに問題が生じているらしいのだが
メッセージが英語なのでよくわからない。
やっぱり買い替えを検討すべきだろうか。
ま、とりあえず映画の話を。

「ヘルプ 心がつなぐストーリー」

本年度アカデミー賞4部門にノミネートされ、
オクタヴィア・スペンサーが最優秀助演女優賞を獲得したドラマ。
1960年代の米国南部の田舎町、ミシシッピ州ジャクソン。
大学を卒業し、地元に戻ってきた作家志望の女性スキーターは、
新聞社に就職し、家庭欄の家事コラムを担当することになる。
だが幼いころから実家の家事は黒人のメイド、コンスタンティンの仕事で
彼女自身は家事をした経験がなかった。
スキーターは彼女にアドバイスを頼もうとしたのだが、
コンスタンティンはスキーターの知らない間に家から出ていっていた。
そこでスキーターは高校時代の友人エリザベスの家のメイド、
エイビリーンに協力してほしいと願い出る。
彼女は仕事に差し支えなければとスキーターの依頼を受ける。
地元に戻ってから人種差別が残る町の実態に疑問を抱いたスキーターは、
黒人のメイドたちの実態を描いた告白本の執筆を思い付き、
エイビリーンにインタビューさせてほしいと願い出る。
当時まだ人種差別が色濃く残っていたジャクソンで
黒人のメイドが自身の日常を語ることは命がけだった。
最初は断っていた彼女だったが、最終的に彼女は依頼を引き受ける。
それは彼女の信仰と、親友のミニーのためでもあった。
ミニーはスキーターの友人で地元婦人会のリーダー、ヒリーの家のメイドで、
屋敷のトイレを使ったことで解雇されてしまったのである。
スキーターは人目を忍んでエイビリーンの家に出向き、
インタビューを続けていたが、ある日ミニーに見つかってしまう。
だが彼女は逆に二人の計画に賛同し、インタビューを引き受けるのだった。







真のテーマは差別ではなく・・・


1960年代の米国南部が舞台で、黒人メイドの実態が題材ということで、
当時の人種差別について語られていくのかと思ったんですが、
彼女たちがどれだけ劣悪な待遇だったのかということはもちろん、
当時の町の様子もあまりきちんとは語られない。
しかもこの作品で一番盛り上がるシーンが、
解雇されたミニーがヒリーにとんでもない仕返しをする場面なので、
余計に彼女たちメイドの切実な実情が伝わってこないんですね。
だから、おそらくこの作品で描きたかったテーマは人種差別ではなく、
むしろ女性の社会進出が一般的になりつつあったアメリカで、
それまでの保守的な女性像が変革にさらされていく中、
当時の女性たちがどう対処していったか?
つまり社会の価値観の変化に対する女性たちの反応が
この作品の本質的なテーマだったのではないかと思う。



変化に従う者、拒否する者、そして戸惑う者


さて、そうした社会の変化を受けた人々の反応を表現するのに
この作品は絶妙かつ的確なキャラクター設定がなされている。
まず主人公のスキーター。彼女は大学を卒業した若い白人女性で、
進学による経験から自身の地元の価値観がかなり遅れていることを知る。
つまり、これからの女性は家庭にとどまり、家事はメイドに任せ、
自身は近所の主婦仲間と社交に明け暮れるといった
それまでの親世代がしてきたような生き方は許されず、
手に職を付け、社会の中で自立していくことが求められることを学んでいるわけです。
そんな彼女にとってエイビリーンやミニーといったメイドたちは、
安価な賃金で不当に扱われているといった点を除けば、
自分の才能できちんと生活費を稼いでいる自立した女性である。
一方、対照的なのはスキーターの友人であるヒリー。
彼女はメイドを雇う白人家庭にメイド専用のトイレの設置を法制化するため
婦人会の会長として政治家に働きかけようとするなどして、
それまでの保守的な価値観を守ろうと奔走している人物。
そんな彼女にとっては自分の意に背いたミニーやエイビリーン、
そして黒人のメイドを家族の一員のように扱うスキーターに
脅威に感じて排除しようとするわけです。
一方、ヒリーに解雇されたミニーはシーリアという若い女性に雇われるんですが、
彼女は元々白人の中でも貧困層で生まれ、黒人に対する差別意識も薄い人物。
したがってミニーのメイドとしての才能を素直に感動する人物であり、
スキーターとはまた違ったかたちで進歩的な人物。
そしてスキーターの友人でエイビリーンを雇っているエリザベスは、
スキーターたちの進歩的な価値観とヒリーの従来の価値観との間で揺れ動き、
結局自分で何も決められず困惑するしかない。
といったように、この作品には様々な立場のキャラクターが
的確なバランスで配置されているのである。



ハイレベルな女優陣


そして、それを演じている女優陣はほぼ全て見事な演技。
料理好きで毒舌家のミニーを演じオスカーを獲ったオクタヴィア・スペンサーに、
息子を亡くし心を閉ざしたメイド、エイビリーンを演じたヴィオラ・デイヴィス、
そしてミニーとの絆を深める白人女性シーリアを演じたジェシカ・チャステインといった、
オスカー候補になった3人だけでなく、主演のスキーターを演じたエマ・ロバーツに、
ヒリーを演じたブライス・ダラス・ハワードの若手女優陣はもちろん、
スキーターの母シャーロットを演じたアリソン・ジャネイに
認知症を患うヒリーの母を演じたシシー・スペイセクという、
親世代を演じた二人のベテラン女優の演技も見事だった。
特にシャーロットを演じたアリソン・ジャネイが個人的には一番。
彼女は政治ドラマ「ザ・ホワイトハウス」で報道官役をやっていましたが、
本作では長年仕えていた黒人メイドをある理由で解雇する羽目になった女性の苦悩を、
繊細な演技で表現していて素晴らしかったです。

スキーター達が発表した一冊の本が小さな町を、そして社会を変えていく。
それは社会が変革する過程においては
成功と同時に、少なからず痛みも伴うものである。
完全なハッピーエンドではなくほろ苦い現実も伝えるラストシーンに
この作品の奥の深さを感じました。おススメです!