どうも、はちごろうです。

今日は暖かかったですねぇ。
週末に東京でも桜が開花するらしいですが、
あいにく土曜日は雨が降るんだとか。
土曜日に雨が降るのは今年何週目でしょうかね?
さて、映画の話。

「マリリン 7日間の恋」

20世紀を代表するセックスシンボル、マリリン・モンローの主演映画の現場に
助監督として働いていた男が書いた回想録を映画化した作品。
主演のミシェル・ウィリアムスはこの作品でアカデミー賞主演女優賞候補に。
1956年、イギリスの名優ローレンス・オリビエが監督・主演する映画
「王子と踊り子」の撮影のためアメリカからマリリン・モンローがやってくる。
その作品で第3助監督の仕事をしていた青年コリン・クラークは
現場でマリリンの身の回りの世話をすることとなった。
セックスシンボルから演技派女優への転身を目論んでいた彼女には
アメリカから夫のアーサー・ミラーや多くのスタッフとともに
演技指導のコーチ、ポーラ・ストラスバーグが付き添い、
彼女の役作りに多くの時間が費やされて撮影は思うように進まなかった。
マリリンが信奉する新しい演技プランに翻弄され、
監督のローレンスはイライラを募らせていく一方、
自分のせいで現場が混乱していることを感じ取っていたマリリンは
次第に控室で孤立を深め、酒や睡眠薬に溺れていった。
彼女の様子をローレンスに報告する役目だったコリンは、
マリリンと共に過ごすうちに彼女から信頼を得ていくのだが・・・。



マリリン・モンロー、ノーリターン


20世紀を代表するセックスシンボル、モンローの実像に迫る本作。
とはいえ、実際問題彼女の作品を知っている世代はすでに少数派だと思う。
特に若い映画ファンで彼女の作品を見ている人って
モンローどんぴしゃ世代が思ってるほど少ないのではないだろうか。
こういったことはモンローに限らず往年のスターはみんなそうで、
例えば石原裕次郎も美空ひばりもすでに亡くなって20年は経ってるわけで、
当然ながらいまの学生なんかは当時の人気だとか、
同時代を生きた世代にとっての価値の重さはわからないわけです。
なにしろアラフォーの僕ですら彼女の出演作を見たのは1本だけ。
それもモンロー見たさに彼女の作品を見たことはないですから。
だから「あのマリリン・モンローの素顔に迫る」という宣伝文句では
もはや大半の映画ファンの興味を惹けなくなっているのではないかと思う。
だからむしろ、演技派への転身を図るスター女優の苦悩という、
比較的普遍的なテーマの方をアピールした方がよかったのではないだろうか。



メソッド演技に悩む女優をメソッド演技で演じる


さて、当時のマリリンが信奉した演技方法というのが「メソッド演技」。
ロシアの演出家スタニスラフスキーが提唱した演技方法で
わかりやすくいえば役者と役柄を同化させる演技法。
例えば風邪をひく役を演じる際に本当に風邪をひいた状態で演技をするとか、
警察官を演じるとなれば警察署までいって本職としばらく行動を共にするとか、
アルコール依存症の役を演じるとなれば本当に酒びたりの生活を送るなど。
役と同化することでより自然な演技を見せることができる反面、
役者本人に対する心身への影響も大きいわけです。
最近の俳優を例に挙げると「ダークナイト」のヒース・レジャー。
彼は悪役ジョーカーをその精神に至るまで完璧に演じ切った結果、
役の心理状態から脱することが出来ずに精神を病んで
結局処方箋薬の過剰摂取で命を落としてしまったわけです。
この映画の主人公マリリン・モンローもまさにこの
「メソッド演技の闇」にハマっていってしまうわけですが、
そんな彼女を演じたミシェル・ウィリアムスもまた、
今回役作りのためにマリリンになりきる「メソッド演技」を採用したわけです。
実はミシェル・ウィリアムスは前述のヒース・レジャーと
長年事実婚の状態で子供までいる仲だったんですね。
愛する人の命を縮めた演技方法を採用してまでマリリンになりきった彼女。
今回彼女がアカデミー賞にノミネートされたのは、単純に演技力の高さだけでなく
そうした実生活での因縁もあってのことだと思う。



マリリンも、演じた女優も素晴らしいんだけど・・・


観る者を惹きつける天性のカリスマ性と繊細な感受性を併せ持ったマリリン。
それを演じたミシェル・ウィリアムスの演技は確かに一見の価値があるんですが、
残念ながらそれ以外の見せ場はあまり見当たらなかった感じです。
まず、この作品は「王子と踊り子」の撮影現場で働いていた
コリン・クラークという男性の回想録を基にしているんですが、
このコリンという男があまり魅力的でないんですね。
名門の家系の中でくすぶっていた男が自立するために映画界にもぐりこみ、
撮影現場で下働きをし始めるわけなんですが、
現場で知り合った衣装部の女の子と恋仲になったにもかかわらず
マリリンと会話を交わす仲になると途端に彼女と距離を置き始めたりして、
男としてあまり信用できないんですよ。
そもそも現場スタッフとして懸命に働いているようでもないし、
そんな男にモンローが心を許すだろうか?って感じです。
そうした彼の胡散臭さが語り部としての信頼度の低さ、
ひいては物語自体の信用度の低さに繋がってる感じがしました。
それと撮影現場を混乱に陥れた原因となったマリリンの「メソッド演技」と、
ローレンス達がやってきた旧来の演技方法との違いがきちんと説明されないから、
どっちの側にも同情しにくいんですよ。衝突する理由がわからないというか。

まぁ、ミシェル・ウィリアムスの演技は一見の価値はあります。
それとケネス・ブラナーやジュディ・デンチなど助演陣の演技も素晴らしいです。
しかし肝心の物語があまり信用できないうえに、
やっぱりマリリンに対する思い入れの浅さもあって
最後まであまり作品にのめり込むことはできませんでしたね。