どうも、はちごろうです。

正月休み中、思いっきり風邪をひいてしまいまして、
3日4日と家にこもってHDDの整理をしておりました。
音楽ファイルを外付けHDDにバックアップ取ったり、
このブログに書いてきた映画の感想もメモ帳にコピペしてバックアップしたり。
ブルーレイレコーダーの中身も随分減らせました。
昨日から仕事始め。まだちょっと風邪が残ってますが今年もがんばります。
さて、映画の話。

「宇宙人ポール」

「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」の
サイモン・ペッグとニック・フロストのコンビが再び結集したSFコメディ。
監督は「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のグレッグ・モットーラ。
イギリスのSF作家クライブとイラストレーターのグレアムは
SF作品やUFOに関するゆかりの地を訪ねるためアメリカにやってきた。
サンディエゴのSFコンテンツ博覧会「コミコン」で
尊敬する作家のサイン本をもらった二人は、
キャンピングカーをレンタルしてアメリカ西部を目指した。
そしてついにUFOが飛来したという噂で有名なエリア51付近を走行中、
後続の車が二人の車を抜いた途端に事故を起こす。
慌てて二人が事故を起こした車の元に駆け付けると、
なんとそこには本で見たことのある恰好をした本物の異星人が。
だがポールと名乗るその宇宙人はやたら饒舌で馴れ馴れしく、
60年前に地球にやってきて以来政府に拘束されていたが
やっとのことで施設から逃げ出してきたという。
そして二人に自分の星に帰るため手助けをしてほしいと願い出るのだった。



イギリスから来たぼんくら凸凹コンビ


主演の二人を演じるのはサイモン・ペッグとニック・フロスト。
イギリス出身のこのコンビは「ショーン・オブ・ザ・デッド」と
「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」の二作でもって、
世界中のぼんくら映画少年の心をつかんだ。
どんな作品かというと、「ショーン・オブ・ザ・デッド」ではゾンビ映画を、
そして「ホット・ファズ」ではアメリカのポリスアクションを、
自分たちが生まれ育ったイギリスの片田舎に舞台にして作るという、
どちらもハリウッドの娯楽映画に対する愛にあふれた作品だった。
そんな二人が再び凸凹コンビを結成して作ったのが本作。
今回彼らがモチーフにしたのはズバリ!「スピルバーグ映画」。
しかも彼が娯楽映画監督として一番脂の乗り切っていた
80年代前半に製作された「E.T.」、そして「未知との遭遇」という
スピルバーグ印のSF大作に対するオマージュが一杯詰まっている。



米英ブロマンススターの最強タッグ


そして今回それを迎え撃つのが宇宙人ポールの声を演じたセス・ローゲン。
彼はここ最近のハリウッドコメディの主流である「ブロマンス」、
つまり男同士の友情をテーマにしたコメディ映画でスターになった俳優である。
で、「ショーン・オブ・ザ・デッド」も「ホット・ファズ」も
実はハリウッド映画へのオマージュという側面と同時に
主人公コンビの友情というまさに「ブロマンス」の要素もある。
そのため今回は米英を代表するブロマンス映画のスターが共演した
まさにコメディ映画好きには夢の企画ともいえる。
そしてそんな3人の熱意に応えたのが当のスピルバーグ監督。
彼らが自分の作品をオマージュすることに対して許可を出しただけでなく、
なんと本人役で出演までしているのである。
こうしたいわゆる「パロディ映画」が成立するためには、
一般的に広く知られている「元ネタ」と、
モチーフにすることを快諾する「元ネタの製作者」、
そして特定の作品がモチーフになっていることを知っている「観客」、
この3つの要素が一つでも欠ければ成り立たないので、
こうした作品が商売として成り立つハリウッドの層の厚さというものを
つくづく思い知らされる。



オマージュを捧げるのはいいけれど・・・


しかし、である。
確かにこの作品には80年代のSF娯楽映画への愛が詰まっているんだけど、
それは裏を返せばそれを知らない世代には面白さがわからないことと同じなわけです。
例えばこの作品で主人公たちがポールを連れていく旅の終着点にあった光景や、
そこで彼らに立ちはだかる政府の役人を演じていた俳優は、
30代から上の世代には見た瞬間に爆笑できるネタではあるんだけど、
おそらく元ネタを知らない20代には何のことかさっぱり分からないと思う。
昨年もJ・J・エイブラムス監督が自分を映画監督という職業に導いた
スピルバーグ映画へのオマージュにあふれた「SUPER8」という作品を、
スピルバーグ監督を製作に迎えて作ったのも記憶に新しく、
作品自体も40代以上の映画ファンを中心に好意的に受け入れられたらしいんだけど、
いわゆるスピルバーグの全盛期を知らない世代には
やっぱりどこか置いていかれた感じがするのも事実なわけです。
自分が影響を受けた映画作家やその作品への尊敬の念を
自分の作品でそのまんま再現する形でアピールしてしまうのは、
おそらくクエンティン・タランティーノあたりが
オッケーにしてしまったことなんだろうけど、
それを良しとしてしまう風潮ってのは僕はあまりいいことだとは思わないんですよ。
人間、全くの無からオリジナルを作ることは不可能で
必ず何かしらの影響を受けていることはわかるんだけど、
他の映像作家の影響を受けたことは作品の中では悟られないようにしてほしいし、
もっといえばオマージュをささげてる暇があったらオリジナルで勝負していかないと。
質の高い斬新なオリジナル作品が作られないと若い映画ファンは育たないし、
映画という娯楽がそれこそ年寄りのための伝統芸能になってしまうと思う。

確かにこの作品はコメディとしても、ブロマンスとしても良く出来てるんですよ。
そして30代の映画ファンとして、彼らの元ネタに対する尊敬の念もよくわかります。
ただ、作品の面白さを100%理解するために他の作品の知識が必要というのは、
あまりいいことではないと僕は少し感じました。