どうも、はちごろうです。

新年明けましておめでとうございます。
とはいうものの、現在風邪っぴきまっただ中でして
映画を観に行きたくても外に出られません。
新年早々、映画一本諦める羽目になりました。
さて、気を取り直して映画の話。

「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」

トム・クルーズ主演のスパイアクション第4弾。
米政府管轄の極秘諜報機関IMFの諜報員イーサン・ハントに
ロシアのクレムリンへの潜入指令が下る。
ロシアの核兵器の起動スイッチと暗号コードが盗まれ、
主犯格と目される“コバルト”と呼ばれる黒幕の情報を
本人に消去される前に押さえることだった。
イーサンは同僚諜報員のジェーン、ベンジーと共に計画開始。
ロシアの軍当局者になり済まし潜入に成功する。
しかし何者かにより無線が傍受されやむなくその場から逃走。
その直後、クレムリンが大爆発を起こす。
ロシア当局はガス爆発事故と公式に発表するが、
爆破に巻き込まれたイーサンは当局にテロ容疑で逮捕されてしまう。
なんとか病院から抜け出したイーサンはIMFに連絡。
ちょうど訪露していたIMF長官に助け出される。
だがすでに米政府は大統領命令でIMFを解散。
イーサンは国家からもテロリストの汚名を着せられてしまう。
汚名を晴らすためイーサンはジェーンとベンジー、
そして新たに諜報員のブラントを仲間に加え、
孤立無援の状態で“コバルト”の存在を追うのだった。



怪我の功名による「原点回帰」


アメリカの人気TVシリーズを原作にしたこの作品ですが、
過去3作はやっぱりトム・クルーズのスター性に頼っていたところが多く、
原作本来の持ち味である「チームプレイの楽しさ」というのが少なかったわけです。
なにしろ1作目の悪役はTVシリーズのファンを怒らせるような人物でしたしね。
しかし本作はケイティ・ホームズとの結婚と、その直前のTV出演の際の奇行により、
トムのイメージがすこぶる悪くなっている状態、
つまりいい意味で「トム・クルーズ」というブランドに頼れない状態で
4作目の製作がスタートしているので、
自然と群像劇というか、脇役にも一定の役割が与えられている状態。
つまり、原作ファンには原点に回帰した印象を感じられるかもしれない。
ただ、この映画の成功で「トム・クルーズ」ブランドが名誉回復したことは
良くもあり悪くもありってところなんだろうけど。



スパイ映画でのコメディリリーフの重要性


さて、今回はそのチームプレイが生かされているという意味でいえば
イーサンと行動を共にする脇役のキャスティングの層が厚い。
「ハート・ロッカー」でオスカー候補になったジェレミー・レナーが
イーサンの過去を知る諜報員として出演してるのもいいんだけど、
今回注目はベンジー役のサイモン・ペッグ。
実は3作目にも出てるらしいんだけど、実はあんまり記憶にない。
(というか3作目そのものがあんまり印象に残らなかったんだけど)
だが今回はシリアスになりがちな頭脳戦の応酬の中で
コメディリリーフ的な役回りで登場していて、
観ているこっちもいい感じで息抜きが出来て有難かったです。
確かにスパイ映画で息詰まる丁々発止のやりとりってのもいいんですが、
やりすぎると観客が展開についていけなくなってしまうので、
こうした観客に近い立場のキャラクターというのは貴重ですね。



「娯楽映画」のなかで政治問題を扱う際の距離感


で、今回の作品の目玉の一つがUAEのドバイにある世界一高いビル、
ブルジュ・ハリファでの撮影シーン。
最新鋭のIMAXカメラで撮影された、ビルの外壁を登っていくイーサンの姿は
命綱をつけて撮影して後でCGで消しているってことがわかっていても
やっぱり身がすくむような思いがしてくる。
それと同時にこの作品ではロシアのモスクワ、ハンガリーのブタペスト、
そしてインドのムンバイなど世界中でロケが行われているんだけど、
今回、「娯楽映画」としてのスパイアクションのあり方というか、
「スパイ映画」の中の現実と実際の現実との距離感というのを
この作品を観ていて少し考えさせられました。
どういうことかというと、同じスパイ映画の老舗に「007」シリーズってのがあって、
最近の「007」はどんどん現実の政治的問題を扱うようになってるんです。
例えば「慰めの報酬」って作品には発展途上国の水道事業を
その国の政府と結託して外国の営利企業が担うという話が出てくるんだけど、
実はこの「公共事業の民営化」という問題は世界的な政治課題になってて、
その弊害を糾弾したドキュメンタリー映画まで作られているわけですよ。
確かに娯楽映画の中で現実の社会問題を扱って
広くその存在を知ってもらうという理屈はわからなくもないんだけど、
それではただの「お勉強映画」になってしまって気楽に楽しめないんですよ。
しかし、今回のこの「ゴースト・プロトコル」の場合は、
核兵器とはいかないまでも、旧ソ連の兵器が発展途上国に横流しされているという、
「ロード・オブ・ウォー」って映画にもなった政治問題を扱ってはいるものの、
あくまでそれは表面的に、「こんな問題があるみたいですよ」的な距離感で扱いつつ、
ドバイやムンバイなど、「いま一番、金と活気がある国」の景色を
やはりあくまで表面的に、彩りとして上手に取り込んでいるという、
その距離感というか、バランスの良さが非常によく出来ていると感じました。

今年の正月映画、いろいろありますけれど
やっぱり何だかんだいってこれが一番無難です。
「007」よりも「007」らしい、「娯楽映画」としてのスパイアクションの王道に
見事におさまっている感じがしました。おススメ!