どうも、はちごろうです。

今日は天皇誕生日。とりあえずおめでたいことで。
これでもうあとは大みそかまで一気に向かうという感じでしょうか。
毎年、この時期になるとなんか気が滅入るんですよね。
なんなんでしょうねぇ。いろいろバタバタしていて
風邪をひきやすいからでしょうか。
さて、映画の話。

「50/50」

ある日突然がんを宣告された青年の闘病記。
主演は「(500)日のサマー」で注目を集めたジョセフ・ゴードン・レヴィット
シアトルのラジオ局に勤める青年アダム。
酒もたばこもやらず、日課のジョギングを黙々とこなし、
事故を起こさないためにと車の免許も持たない真面目な男。
そんな彼がある日、背中の痛みを訴えて病院に。
診察の結果は「悪性神経鞘種 神経線維肉腫」。
早い話が脊椎に悪性のがんが発見されたのだ。
ネットで検索すると5年生存率は50%。
転移後の生存率はわずか10%という深刻なものだった。
早速同棲中の恋人レイチェルに話すと彼女は彼の闘病をサポートすると約束。
アルツハイマー病を患う父親の看病をしているアダムの母親にも告白。
母親はアダム以上に取り乱し、一緒に住むことまで提案してくる。
一方、大学時代からの親友で同僚のカイルにも報告するが
彼は「がんになれば女にもてるぜ」とナンパに連れ出そうとする始末だった。
アダムは病気療養のため会社を休職することとなった。
日々の抗がん剤治療で知り合ったがん患者、
そして新米の心理カウンセラーのキャサリンとともに
アダムは本格的に闘病生活に入るのだった。



注目の若手演技派俳優、ジョセフ・ゴードン・レヴィット


若くしてがんを告知された青年の闘病記なんですが、
この作品で注目なのは何といっても役者陣。
現在のハリウッドで注目を集める若手俳優がいい仕事をしています。
まず主演のアダムを演じたジョセフ・ゴードン・レヴィット。
元々彼は子役出身らしいんですが、
彼が一躍注目を集めたのが2009年に公開された「(500)日のサマー」。
ポストカード会社に勤める草食系青年の恋のてん末を
斬新な語り口で描いた恋愛映画の傑作なんですが、
(ちなみに今年話題になった日本映画の「モテキ」に登場する
 ミュージカルシーンはこの映画からインスパイアされている)
そこで主人公の青年トムを演じているのが彼だったんだけど、
一つの恋愛の始まりから終焉までの間に起こる心の機微を
非常に丁寧に演じていてとても素晴らしかった。
本作でも突然がんを宣告された青年が最初は平静を装いつつも、
闘病生活の中で心境が変化していく過程を実に見事に演じていました。
彼は来年クリストファー・ノーラン監督のバットマンシリーズ最終作
「ダークナイト・ライジング」にも出演が決まっていて
今後要注目の若手俳優の一人です。
そして彼のカウンセラー役を演じるアナ・ケンドリックも要注目。
彼女もやはり2009年の「マイレージ、マイライフ」で
やり手の新人OL役を演じてオスカー候補になった。
今回は「マイレージ、マイライフ」とはむしろ逆の、
有能だけれどちょっと頼りない新米カウンセラー役を好演している。



セス・ローゲンという男


しかしこの作品で一番光っていたのは親友カイルを演じたセス・ローゲン。
日本で公開された彼の出演作で一番有名なのは
今年の1月に公開された「グリーン・ホーネット」。
あの作品で新聞社の社長のどら息子役を演じていたんだけど、
実は彼、「40歳の童貞男」や「無ケーカクの男/ノックト・アップ」など、
いわゆる「男の友情(ブロマンス)」を題材にした作品を得意とする俳優で
いまのハリウッドでトップクラスのコメディ俳優なのである。
で、実はこの作品、ローゲンの友人で脚本家のウィル・ライザーが
がんを宣告されたときの実体験を基にした作品なので、
まさにカイルのモデルはローゲン自身なのである。
だからこの作品の彼を見ればどれだけ彼が魅力的で、
しかも真っ当な大人であることかが伝わってくる。
もちろん彼はこの作品の制作も買ってでている。



病とともに見えてくるもの


さて、この作品はがんを宣告された青年の闘病記とはいうものの、
深刻になることなくむしろ笑いがこみあげてくるような作品となっていて、
しかも主人公のアダムはがんに侵されているとはいえ
目に見えて痩せこけるといったような身体的変化は起こらない。
(作品途中で彼はスキンヘッドになるけれどそれは抗がん剤の副作用ではなく、
 ナンパ目的で抜ける前に剃っただけである)
つまり、そうしたがん患者のリアルな身体的変化の描写がおざなりなのは
この作品で描きたかったことが別のところにあるからである。
この作品で描きたかったことは実は主人公の闘病記そのものではなく、
「がんになったことで見えてきた他人との関係」であり、
むしろ「近しい人間が日常生活に支障をきたした時の人の反応」なのである。
現代社会においては、大多数の人は自分の生活を守るだけで精一杯で
困ってる人の手を差し伸べたいとは思っていてもなかなか出来るものではない。
そしてそうした困ってる人に寄り添うことに対する労力、
なによりも覚悟を持つことがいかに大変かということが伝わってくる。
先の見えない闘病生活の中でアダムが知る知人の心境の変化。
そして誰が自分を大事に思っていてくれたのかを悟る過程が
丁寧に、なおかつ努めて明るく描かれていくのが本当に上手かったし、
自分と知人との関係について、反省も含めて思いを巡らせずにはいられませんでした。

今後が期待される若手俳優の演技も堪能できるし、
自分の人間関係を振り返るきっかけにもなる本作は
今年の正月映画の中でも見て損はない作品の一つ。おススメです!