どうも、はちごろうです。

夏にブルーレイレコーダーを新調したという話は以前書きましたが、
このレコーダー、USBで繋いだ携帯機器に番組を転送、
別の場所でPSPなどを使って視聴することができるんですわ。
で、今日やっとその機能を店番しながら使ったんですが、
30分もののアニメだったらこの方法で十分楽しめることが判明。
本当に技術革新は素晴らしいですね。
さて、映画の話。

「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」

ベルギー生まれの世界的人気のコミックシリーズを
スティーブン・スピルバーグとピーター・ジャクソンがタッグを組んで映画化。
最新のパフォーマンス・キャプチャーを使用して
フルデジタル3Dで送る冒険スペクタクル。
相棒の愛犬スノーウィと共に数々の事件をレポートしてきた少年記者タンタン。
彼はある日、街の露店で立派な帆船の模型を見つけ購入する。
その途端、彼は二人の紳士からその模型を譲ってほしいと言われる。
申し出を断って自宅に戻ったタンタンだったが、
ふとしたはずみでその模型を床に落とし、マストを壊してしまう。
模型の元となった帆船のことを調べることにしたタンタンは図書館へ。
その模型の元となった船、ユニコーン号はかつて軍艦として活躍していたが
海賊レッド・ラッカムによって海深くに沈められてしまっていた。
ユニコーン号には多数の財宝が積まれていたという噂もあったが、
その行方はいままで誰にも解明されたことはなかった。
タンタンが図書館から自宅に戻ると、模型が何者かによって持ち去られていた。
そこで彼は露店で模型を譲ってほしいと願い出た一人サッカリンの元に。
彼はユニコーン号の最後の船長アドック卿が住んでいた城を買い取り、
タンタンの買った模型と寸分違わぬ別の模型を所持していることを知る。
再び家に戻ると、今度は部屋中が何者かにより荒らされていた。
スノーウィがめちゃくちゃになった部屋の中から小さな棒状のものを見つけ、
それを調べたタンタンは中から一枚の羊皮紙を見つける。
それはユニコーン号に隠された財宝を見つけるための暗号が記されていた。
そこに露店で会ったもう一人の人物がやってくる。
彼はインターポールの刑事でタンタンに危険が迫っていることを告げるが、
彼はタンタンの目の前で何者かの銃撃により倒れてしまう。
しかもその直後、タンタンは何者かにより拉致され船へ。
なんとか船倉から逃げ出したタンタンはそこでその船の船長と知り合いになる。
その船長こそ、ユニコーン号の最後の船長の末裔、ハドック船長だった。



反射からの解放


ハリウッドを代表する娯楽映画の王様スピルバーグが、
「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンと手を組み、
最新のパフォーマンスキャプチャーを用いて
フルデジタルの3DCGアニメを作るという、
二人にとっては初めてづくしの企画だったんだけど、
やっぱり実力のある映画監督が最新の技術を使いこなすと
やはりすごいことをやってくるなぁという感じでした。
「パフォーマンスキャプチャーを使うと何ができるか?」ということを考え尽くした結果、
例えばカメラの大きさの制約があって出来なかったローアングルのシーンとか、
物理的に不可能だったカメラワークを使ったワンシーンの長回しとかを
ふんだんに盛り込んだアクションシーンが随所に盛り込まれている。
特徴的だったのは「光の反射からの解放」だったと思う。
つまり、登場人物の姿が鏡やガラスに映り込んだり、
鏡越しに何かを目撃する、なんていうシーンというのは、
その鏡にカメラやスタッフが映り込んでしまうため
なかなか容易に撮影することができなかったわけです。
ところがCGアニメだったら余計なものは描かなければいいだけだから、
露店が立ち並ぶ場所で鏡に映るタンタンの姿や、
海面に浮かぶ泡に映り込む悪党の姿など、
実写作品だったら撮影が困難なシーンや構図が
これまたふんだんに盛り込まれていました。



原作に惚れ過ぎた弱み


しかし、技術的な制約から解放されてさまざまなシーンが作れるようになった半面、
肝心の物語が残念ながら相対的に弱くなっていたように感じました。
実は原作であるこの「タンタンの冒険」シリーズ、
ヨーロッパではかなり人気のある物語ではあるらしいんだけど、
日本を含めたアジアはもちろん、アメリカでもそんなに知名度は高くないらしい。
しかし30年ほど前、「レイダース・失われた聖櫃<アーク>」公開時に
この作品との類似点を指摘されたことをきっかけに原作を知り、
その世界観に惚れ込んだスピルバーグは早速映画化権を買い取ったそうだけど、
あまりにも企画を暖め過ぎたことが裏目に出てしまったのか、
原作に対して適度な距離感が保てていない感じがしました。
実は原作にほれ込み過ぎた映像作家とか脚本家って
こういう失敗を起こしがちなんですよ。
「自分が大好きだからみんな好きになってくれるだろう」とか、
「自分がだれよりも作品の世界を理解しているから
 この面白さを上手く伝えられるのは自分しかいない」とか、
妙な錯覚を起こして冷静さを失ってしまうんですよ。



タンタンの?冒険


具体的に説明するとこの作品、
原作となっているのは「なぞのユニコーン号」という作品なんですが、
この映画の中で使われているのは冒頭の模型を買うシーンから
危機を知らせに来た刑事が撃たれるところぐらいまでで、
物語の大半はこの作品の前に刊行された「金のはさみのカニ」と
「ユニコーン号」の続編の「レッド・ラッカムの宝」のエピソードがほとんどなんですよ。
実はタンタンがハドックと知り合うのもこの「金のはさみのカニ」だったりするんですが。
で、この「金のはさみのカニ」という物語、主人公のタンタンよりも
彼が出会うハドック船長のほうがむしろ出番は多いんですね。
だからこの映画自体もハドックという飲んだくれの海の男が
自分の一族の誇りを取り戻すまでを描いた作品になってて、
主人公のタンタンが完全に脇役に廻っちゃってるんですよ。
だからタンタンの活躍を目当てに観に行くと
ちょっと拍子抜けするような感じになりますね。
しかも原作3巻分の物語をかなり強引に詰め込んだ脚色がなされているので、
話のテンポに対して提示される情報量がかなり多いんですよ。
だからちょっと気を抜くと本当に何やってんだかわからなくなります。
もしかしたらこの作品、吹替えで見た方がいいかもしれませんね。