どうも、はちごろうです。

先週末からプロ野球の日本シリーズが始まりましたね。
クライマックスシリーズというものがとどめを刺してくれて、
もうすっかり野球には興味をなくしてしまいました。
いまでも「好きな球団は?」と訊かれたら「阪急」と答えてます。
さて、映画の話。

「マネーボール」

米大リーグの貧乏球団が独自の選手査定理論を用いて
少ない予算で効率的にチームの強化に成功したという
実話をもとにした野球映画。主演は製作も兼任したブラッド・ピット。
2001年の米大リーグ、アリーグ優勝決定戦。
オークランド・アスレチックス(通称As)は
敵地ニューヨークでヤンキースに敗退する。
ゼネラルマネージャー(GM)のビリー・ビーンは、
スカウト陣とともに早速翌年のチーム作りに着手する。
しかしヤンキースのように潤沢な資金力がないばかりか、
今シーズンいっぱいで主力選手3人がFA権を取得し退団。
選手層は薄くなる一方であった。
ある日、ビリーはトレードの交渉をしに他球団に出向いた際、
そこで一人の若きフロントスタッフ、ピーター・ブラントと出会う。
有名大学で経営学を専攻した全く畑違いの人材ながら、
彼は膨大なデータを集めて選手を客観的に査定するという
独自の選手選定方法を実践していた。
しかしスカウトの勘と経験が重要視されていた当時、
その理論に耳を傾ける人は少なかった。
しかしビリーは彼の才能に目をつけ、早速彼を自分の部下にする。
ビリーはかつて学生野球の有名選手で、スカウトの勧めて大学進学をあきらめ
ニューヨークメッツに選手として入団したものの大成しなかった過去があった。
そのため昔ながらのスカウト方法に不信感を持っていたのである。
ビリーはピーターのサポートの元、全米中のメジャー選手の中から、
客観的に考えて過小評価されている選手を見つけ補強していった。
しかし、そのやり方に長年球団に在籍してきたスカウトたちはもちろん、
監督のアート・ハウまで反対の意を示すのだった。



もし大リーグの貧乏球団のゼネラルマネージャーが
マネーボール理論という革新的な選手査定方式を学んだら



のちに「セイバーメトリクス」と呼ばれるようになる、
選手の能力を客観的に判断する手法を用いて、
貧乏球団でも効率的な選手の補強が可能だということを証明した実話なんだけど、
小説というよりはルポルタージュ、むしろ経済書を元にした作品なので、
そもそもこの作品には物語というものが無かったわけです。
そこで、今回はこの「マネーボール理論」を本格的に実践した
オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンの活躍という、
いってみれば主役を理論そのものではなく、
その理論を使って成功した人に移した作品だといえる。
そういえば似たような作品が日本でもありましたね?
なんか長ったらしい名前の、原作の表紙ばっかり人気が出ちゃって、
映画もアイドルを起用した割に大してヒットしなかったような・・・。



過小評価される者たち


さて、作品は先述したように革新的かつ客観的な方法を用いて、
過小評価されていた人材を雇って一定の成功を収める物語なんだけど、
どうしても腑に落ちなかった点がある。
この映画の評判をネットなんかで見ていると
主人公のビリーの先見性を称賛している人が多いんだけど、
この成功の要因をつきつめていくと一番称賛されるべきはビリーではなく、
むしろ膨大なデータで彼らが過小評価されていると判断したピーターであり、
もっといえば彼が用いていた「マネーボール理論」そのものと、
それを提唱した研究家ビル・ジェイムズではないだろうか?ということである。
(ちなみに、実際にはピーター・ブラントという人物は存在しない。
 ビル・ジェイムズやビリーの前任者であるAsのGMサンディ・アンダーソンなど
 複数の人物を組み合わせて作られた架空のキャラクターである)
ところが作品を観るとビル・ジェイムズの話はもちろん、 ピーターもあまり活躍しない、
むしろビリーが過大評価されているようにすら感じるのである。



もっと評価されるべき存在


そしてその「過小評価されている存在」は作品自体にも存在する。
この作品の演技で評価されるべきはブラピではなく、
むしろピーターを演じたジョナ・ヒルだったのではないだろうか。
彼はいま全米で注目される若手俳優の一人なのだが、
「スーパーバッド/童貞ウォーズ」や「寝とられ男のラブ・バカンス」など、
コメディ映画での出演がほとんどのため日本での知名度は皆無。
だが今回彼は元々多かった体重をさらに増やして
「過小評価されていた男」の見本であるピーターという男を好演したのである。
他にも選手役で起用された俳優たちは基本的に野球経験のある人ばかりで、
中には実際に大リーグで選手として活躍していた人物までいるのだが、
そんな中、作品の中で重要な役割を果たす選手
スコット・ハッテバーグを演じたクリス・プラットは、
野球経験がほとんどない状態から猛特訓で役作りをし、
実際のハッテバーグの歩き方まで体得するほどの名演を見せたのである。
だから、もっと彼らを評価してもいいと思うし、
もっと彼らのシーンを増やしてほしかったと思う。

確かにこの原作に惚れこんで製作を推し進めたのはブラピだし、
彼が前面に出ないと集客が見込めなかったのは確かだけど、
きちんと「真の主役」にスポットを当てた作りをしてほしかったと思います。
試合に勝って、選手ではなく監督ばかりが称賛される。
そんな状況はやっぱり間違っていると思う。