どうも、はちごろうです。

なんか最近みんな風邪をひいてるようですね。
今年は11月になっても暑い日があったりして、
体温調節がなかなか思うようにいかないですね。
くれぐれもお体にお気をつけください。
さて、映画の話。

「ランゴ」

主演ジョニー・デップ、監督ゴア・ヴァービンスキーの
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のコンビが再びタッグを組んで送る3DCGアニメ。
ヒーローになることを夢見る一匹のカメレオン。
引っ越しのためハイウェイを走る飼い主の車の荷台に水槽ごと積まれ、
今日も今日とてヒーローごっこに明け暮れている真っ最中、
運転中の車が事故を起こし、カメレオンは水槽ごと車から放りだされてしまう。
灼熱の砂漠の真ん中に置き去りにされたカメレオンは
ハイウェイの向こう側に渡ろうとしているアリクイに言われるまま砂漠の中へ。
フラフラになりながらたどりついたのは「ダート・タウン」という寂れた町。
飲み物を求めて入った酒場で「何者か?」と尋ねられたカメレオンは、
自分を「ランゴ」という名の流れ者と説明。
ヒーローになりきり数々の悪党どもをやっつけてきたと嘘をつく。
なりゆきで町にやってきたならず者たちと決闘をする羽目になったランゴだったが、
そこに町中の動物たちが恐れるタカが飛んでくる。
タカの追跡をかわそうと町を逃げ回るランゴは、
運よく逆にタカを撃退してしまい一躍町の英雄に。
ついには町長から保安官バッジまで受け取ることになるのだが・・・



「アニメ制作会社」としてのILM


アメリカでは主流となっている3DCGアニメなんだけど、
今回は「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスが設立した特撮技術集団
「ILM」が初めてCGアニメ制作に挑戦した作品でもある。
世界最高レベルのCG製作技術を持っているILMが担当しているだけあって、
登場する動物たちの肌や羽根の質感はもちろん、
冒頭、車から放り出されて粉々になる水槽のガラスや、
劇中に出てくる水や砂、雲の動きなど
まさに「実写と見まがうほど」に精巧に作り込まれたCGの数々。
そして撮影スタジオで実際にキャラクターの動きを出演者に演じてもらい、
その映像を元にキャラクターの動きを作り出すという手法を用いて
どこまでも写実的なアニメーション作りがなされている。
その技術は非常に高度で素晴らしいのは確かだし、
今後ILMが本格的にアニメ制作に乗り出したら
それはそれで面白いことになるのではないかと思うんだけど、
この「写実的なCGアニメ」という手法に関しては
観客によって好き嫌いがはっきり分かれると思う。
特に「アニメ=2Dのセルアニメ」という刷り込みがなされている日本人にとっては
3DCGアニメというものに対してまだまだ拒否反応みたいなものがある。
「これは自分たちが知ってるアニメじゃない!」みたいな。



カメレオンが演じる王道の「西部劇」


ストーリーに関して言えば典型的な「ヒーロー誕生話」です。
ヒーローに憧れるだけの、何者でもないただの男が、
ひょんなことからヒーローに祭り上げられ、
調子に乗っていたら本当の悪党に自分の真の姿をばらされ、
ヒーローの肩書きから信じてくれた人たちの信頼まで全部奪われたのち、
今度は自分の力でもって本物のヒーローになろうとする話。
こういう話は例えば同じ西部を舞台にした名作コメディ「サボテン・ブラザース」とか、
SFコメディの「ギャラクシー・クエスト」なんかもそうだし、
あと視点は違うけどピクサーの「バグズ・ライフ」もこんな感じ。
だから話自体はそんなに斬新なものってわけじゃないんだけど、
実はこうした「何者でもない男が結果的に真のヒーローに成長する」話って、
「西部劇」にはよくある展開なんですよ。
個人的にあんまり西部劇を見た経験って少ないんですが、
例えばケビン・コスナーがアカデミー賞を獲った「ダンス・ウィズ・ウルブス」も
南北戦争に従軍した中尉が自ら志願して未開の地に赴任し
最終的にはインディアンたちとともに土地を守るために戦ったし、
クリント・イーストウッドが初めてオスカー監督賞を獲った「許されざる者」も、
家族を守るために小さな農場主になった年老いたアウトローが
最後は町を牛耳る保安官一味を倒す話だったし。
だからCGアニメという手法はイレギュラーなんだけど、
意外に王道の「西部劇」だったりします。



「探す」ことが生きる目的の人たち


でまぁ、何度も言うようにこの主人公のランゴというカメレオンは
何のとりえもない、ただのお調子者のカメレオンなわけです。
そういった意味ではこのランゴというキャラクター、
同じジョニー・デップの当たり役ジャック・スパロウに近いんですよ。
この作品の中でも後半の非常に重要なシーンの中で、
まさに「ワールド・エンド」にもあったような心象風景が出てくるんですけどね。
考えてみればジャック・スパロウって海賊船の船長というわりに
何か特別な能力があるわけでも、世界征服などの野望があるわけでもなく、
ただなんとなくその場しのぎで生きているような感じがしてたんですよ。
こいつの生きる目的は本当はなんなんだろう?と。
けどこの作品を見たことで、結局はジャックもまたランゴと一緒で、
海に出ることで「何者か」になろうとしていたのではないだろか?
その「自分が何者かを探すこと」自体が生きる目的だったのではないかと感じました。
一つの映画を見ることで別の映画の解釈が深まるというのは妙な話ですが、
この作品に「パイレーツ・オブ・カリビアン」と似た雰囲気を感じるのは
おそらく監督のゴア・ヴァービンスキーという人が
そういう「自分探し」話が好きだからなのかな?とも思います。


まぁ、作画能力はとてつもなく高いし、話の展開も悪く言えばありきたり、
でも良く言えば安心して観ていられる王道の展開なので
観て損することはないと思いますよ。
爬虫類が嫌いじゃなけりゃ、の話ですが。