どうも、はちごろうです。

家財道具大移動計画の続き。


「テレビ箪笥の下の収納部分を捨てずに使ったら?」


7月1日。何を思ったのか母親が突然こんなことを言い出した。

テレビ箪笥を処分することは前々から家族には伝えていた。
一人では部屋から運び出すことも出来ないし、
粗大ごみの捨て方なども訊いておきたかったからである。
それに対し母親は、そのまま粗大ゴミとして処分するのは金がかかるから、
屋上まで運んでいって電動のこぎりで細かく切れば
普通の可燃ごみとして処分できる、と提案。
「それではその案で・・・」ということで、
解体計画を固めていた矢先にこの発言である。

どうやらテレビ箪笥を処分することが惜しくなったようである。
自分がその家具が惜しくなったからといって
その家具を日常的に使っていたのは僕である。
使用者である僕が処分すると決断し、
自分もその処分作業を手伝うと言っていたはずなのに、
自分の気が変わったからという理由で
突然他人の計画をぶち壊す権利はない。
だいたい、使えと言い張る分離した収納部分を
他人の部屋のどこに置くというのか?

「確かにもったいないという気持ちはわかるが、
 実際に使う本人がいらないと決断しているわけだし、
 具体的に僕の部屋のどこにそれを置くつもりなのか?」と、
その提案が無茶なものであることを努めて冷静に説得したのだが、
本人は「どうせ最初から使う気なんてないんでしょ!
だからアタシの提案を考えようとも思ってないんでしょ!」と
なぜか突然逆切れしてきたのである。
もはやこれ以上何を言っても無駄だと判断し、
「とにかく箪笥は予定通り日曜日に屋上で解体するから!」と言い張り
この不毛な議論を打ち切ることにしたのである。

ところが、翌2日の土曜日、事態は急転する。
隣の部屋を使っている親父が「そのテレビ箪笥を使う」と言い出したのである。
どうやら母親が「あれを捨てるのはもったいない」と親父にぼやいたらしい。
何度も言うようだが、他人が何を処分しようがそれはその人の判断の結果であり、
「もったいない」なんて意見はたとえ家族だろうが大きなお世話なのである。
だが親父は「お前が使わないなら俺が使う」と言い張り、
「明日俺が出かけてる間に部屋に運んでおいてくれ」とまで言い出したのである。

この提案に対し、僕は内心ラッキーと思ったのである。
捨てると決断したとはいえまだ使えることは確かであり
それに対する罪悪感が無いわけではなかったし、
なにより屋上まで運んで解体する手間と時間を省くことができる。
というわけで、この親父の提案を受け入れることにした。

年寄りは思いつきで動く生き物であるなぁ、と
つくづく思い知ったのである。


(続く)