どうも、はちごろうです。

実は映画「ヤバい経済学」を観に行った先週の土曜日、
本編上映後に場内でトークショーが行われました。
登壇したのは作品の中の一編「純粋さの崩壊」に出演した
ジャーナリストの武田頼政さんと板井圭介さん。
板井さんは80年代に活躍した元小結・板井関である。

「純粋さの崩壊」は日本の大相撲の八百長疑惑に迫った一遍。
7勝7敗の力士の千秋楽での勝率が異常に跳ね上がることから
「大相撲に八百長が存在する」ということを突き止め、
そして相撲界全体の利益のために八百長が長年必要悪とされてきたこと、
しかもそのことをファンも含めた多くの日本人が黙認してきたことを紹介していく。
武田さんと板井さんは、元横綱・曙や元大関・小錦などとともに作品に出演。
日本の大相撲に組織的な八百長制度があったことを証言している。

映画の興奮冷めやらぬ状態の場内に登場した二人。
時間にして15分ほどのトークショーだったが、
話された内容は作品で暴かれた事実を軽く超えるものだった。
二人は当初、「日本での劇場公開の予定が無いこと」を知り、
それならばと取材に応じて喋りたい放題喋ったため、
今回の劇場公開について「正直困惑している」という。
だが、二人の舌鋒は止まるどころかさらに鋭かった。

「80年代の相撲界は幕内力士のほぼ8割が八百長をしていた」
「戦後、語り継がれる名取組はほとんどが八百長だった」など、
板井さんの協会内にいたからこそ伝わってくる八百長の実態。
「千代の富士との対戦では1番70万円が相場だった」という
リアルな数字に会場は静まり返った。
「九重親方(千代の富士)は僕がこれだけ証言しても
 一度も名誉棄損で訴えないでしょ?
 訴えたら真相が明らかになるからですよ」とも語った。

一方、武田さんからはここ30年の八百長の実態が語られる。
80年代はガチンコ勝負を探す方が難しいほど八百長が多く、
それについて果敢に追及するスポーツ記者もいた。
ところが80年代末にいわゆる「若貴フィーバー」が起こり、
相撲界が芸能ニュースに取り上げられるほどの注目を集める。
幸い、若貴の二人は八百長をやらなかったのだが、
彼らの人気が過熱しすぎたため八百長疑惑の追及の手が緩む。
盛り上がってる相撲人気に水を差すことを避けたのである。
ところがバブルが崩壊して相撲界全体も金回りが悪くなると、
各部屋は手っ取り早く稼げる力士、つまり強い力士を求めて
海外から積極的に力士を呼び寄せるようになる。
これがモンゴル力士の増加の一因であり、
その中にいたのが横綱・朝青龍である。
これは映画の中でも語られているのだが日本の八百長制度というのは、
早い話が、位が下の力士が星を譲ることで「人気力士」を作り、
人気力士が儲けを下の力士に還元することで成り立っていた。
しかし朝青龍は八百長制度を利用するだけ利用して横綱になったにもかかわらず
儲けを全て自分のものにするなど好き放題やって帰国してしまう。
これが結果的に既存の八百長制度崩壊の引き金になった、と武田氏は語る。

最後に二人は今回の技量審査場所にも触れ、
「世間の目が厳しい今こそ真剣勝負が見られる」と語る。
だがそれでもやはり全ての八百長が無くなったわけではなく、
板井氏によれば千秋楽の取り組みでも2番ほどあったという。
さらに板井氏は白鵬の連勝記録にも触れ、
「あいつが双葉山の記録を抜こうとしたのは許せない。
 双葉山の記録は全部真剣勝負のたまものだった。
 だがあいつはどれだけ星を買ったことか」と語った。

日本の大手マスコミでは絶対に語られない
実に有意義なトークショーでした。