どうも、はちごろうです。

明日、土曜日なんですが仕事が休みです。
こういうときに観たい映画が公開されてないことが
映画ファンにとってどんなに悔しいか。
まぁ、そういう困った時はリバイバル上映って手もあるんで
午前10時の映画祭にでも行ってこようかと思ってます。
さて、映画の話。

「インサイド・ジョブ」

本年度アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞。
2008年のリーマンショックを発端とした金融危機がいかに発生したのか。
その真相に迫るドキュメンタリー。

劇映画みたいにストーリーがあるわけではないんだけど、
サブプライムローンなどの金融商品でいかに富裕層が儲けたのか?
その内幕、その手口の巧妙さはまさに犯罪映画のようである。

簡単に説明すると、事の発端は30年前にさかのぼる。
1970年代まで、米の金融業界には様々な規制がかかっていた。
ところが80年代、メリルリンチ証券の重役だったリーガンという男が
レーガン政権の財務長官に就任したことをきっかけに、
金融業界の規制緩和が進みさまざまな金融商品が登場した。
それと同時に金融関係者の所得も天井知らずに上昇。
同時に政治への圧力も強大になっていった。
さて、リーマンショックの直接的な原因となったのは
CDOとCDSという二つの金融商品。
CDOとは簡単に言うと「住宅ローンの返済金を証券化したもの」である。
この金融商品の購入者が儲かるためには
「債務者が月々ローンを返済し続けること」が前提となるので、
証券業界にとっては「完済する能力の乏しい債務者」の方が望ましく、
結果、CDOは債務不履行に陥りやすいハイリスクな金融商品となっていた。
もう一つの金融商品CDS。これは金融関係者でも説明困難な商品である。
大ざっぱにいえば「債券が債務不履行になった際の保険金を証券化したもの」。
つまり債権を踏み倒される事態を想定して債権者が掛けた保険。
その保険金を証券化したものがCDSというもの。
ところがこのCDS。販売した証券会社自らが購入していたのである。
つまり証券会社は自分たちの保有する債権が債務不履行になることを
あらかじめ理解していた可能性があったという。
この二つの金融商品は投資信託に組み込まれる形で
世界中の証券会社で売られていった。
そんなハイリスクな金融商品、本来なら誰も買いたがらない。
だが金融機関は格付け会社や大学の経済学者にまで金を渡し、
この金融商品が安全であると宣伝したのである。
しかし2008年、ついに米の住宅ローンバブルがはじけ、
リーマン・ブラザース証券と米保険最大手AIGが倒産。
世界的な金融危機と景気後退が始まった。
すると米の金融機関は自分たちの経営責任を取ることなく、
逆に米政府に7000億ドルの公的資金の注入を要求したのである。
この世界的な影響を及ぼした金融危機に対して
責任を取って逮捕された金融関係者はいない。
なぜなら取り締まるはずの米の財務担当者が
そもそも民間の金融機関から「天上り」しているからであり、
全ての金融商品をあらかじめ「合法」にしてから販売するからである。

この作品、パンフレットが製作されていないので、
内容をきちんと説明できているかは実は怪しい。
特にCDSの説明は自分で書いてても自信が無い。
だが、ここ30年の米の金融関係者の用意周到な手口は
敵ながらあっぱれ!というほかない。
なにしろ犯罪を犯す前にその犯罪そのものを「合法化」してしまう。
そのための人材を取り締まる当局に派遣し、
しかもトップに据えてしまうわけだから。
もう怒りを通り越して勉強にすらなった。
作品自体の出来はどうかというとこれもまた実に巧妙。
前半は米金融業界のこの30年の儲けのからくりを
金融アナリストや経済学者などのインタビューで解明していくのだが、
後半には、実はその専門家たちも業界から顧問料をもらっていた、
この金融危機の片棒を担いでいたという事実にまで迫っていくのである。
金融危機の責任者は誰か?答えは「関係者全員」である。
証券会社、銀行、保険会社、格付け会社、評論家、大学教授、
そして米政府の財務当局まで全員がグルだったのである。

実に腹立たしく、そして興味深い作品だったんだけど、
これを観ていてひとつ気になったことがある。
作品の中でインタビューされている人物は
当然ながらアメリカ人が多いんだけど、
フランスの財務大臣とか、シンガポールの首相とか、
世界的な事件だっただけにアメリカ人以外の人物も多く出てくる。
ところがこの作品の中に日本人が出てこないのである。
これはどう考えたらいいんだろうか?
日本の金融当局が優秀で比較的被害を受けていないので
インタビューしても意味が無いのか?
それとも日本の金融当局があんまりにもアホだから
興味深い意見は出ないと思われたのか?
まぁ、日本はアメリカの言いなりだからねぇ・・・