どうも、はちごろうです。

先週からの風邪もなんとか治まってきまして、もう少しってところですね。
本当はブログ書いてないでさっさと寝て体力回復させればいいんですけどね。
さて、映画の話。

「スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団」

「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ」のエドガー・ライト監督が
全米で人気のアメコミを映画化。主演は「Juno/ジュノ」のマイケル・セラ。
カナダのトロントに住む無職の青年スコット・ピルグリム。
彼は仲間とバンド活動をしながら女子高生のナイブスと交際中だった。
ところがある日、彼はラモーナという女性に一目ぼれする。
ライブハウスでのバンド対決に向けて練習しなければいけないのに
スコットは彼女のことが気になって練習に身も入らなければ、
ナイブスとのデートも全然興味が無くなってしまった。
バンド対決当日、ラモーナやナイブスの目の前で演奏するスコットの前に
ある男が派手に乗り込んでスコットに決闘を申し込んだ。
それはラモーナの元カレ、マシューだった。
なんとかマシューとの決闘にも勝利し、バンド対決も制したスコットだったが、
ラモーナと結ばれるためには7人の元カレと決闘し
倒さなければならないことを知るのだった。

ここ数年、日本の漫画・アニメ・ゲームに影響されて
それを作品に生かす海外のクリエイターが増えた。
ちょっと前になるがウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」や、
最近では「キック・アス」や「エンジェル・ウォーズ」などがそれ。
本作の原作であるアメコミの作者ブライアン・リー・オマリーは、
週刊ビックコミックスピリッツで連載されていた
相原コージ・竹熊健太郎の「サルでも描ける漫画教室」に影響を受け
この作品を執筆したというんだけど、本作と「さるマン」とは全く毛色が違う。
いや、「さるマン」では漫画製作の例として
ヒーローものの漫画を作品中で連載していたから
まるっきり似ていないわけではないんだろうが。

この作品はいわゆる日本の「オタク文化」、
特にテレビゲームからの影響を色濃く受けている。
本編始まってすぐに「これでもか!」とばかりに主張してくるので
それは観てもらって一笑いしてくれればいいんだけど、
物語の中心となる主人公と元カレ達とのバトルシーンは
完全に格闘ゲームのような作りになっている。
相手を攻撃したり、物を派手に壊したら擬音が文字で出るし、
相手を倒せば点数とともにコインが出てくる。
他にも、スコットとナイブスがデート中にゲーセンでやる体感ゲームが
コナミのダンスダンスレボリューションをモチーフにしていて、
「こんなのあったらやってみたい!」と思うくらいの出来だった。

ただ、作品全体がそんな感じなので、チラシやパンフなんか読んでると
「日本人こそ楽しめる!」なんて書いてあったりするんだけど、
個人的にはこの映像表現は評価が分かれるところだと思う。
一般的に他国の文化に憧れる人が意外に気付いていないことに
「他国が羨む文化と、その国が誇る文化の違い」というのがある。
つまり日本の漫画・アニメ・ゲームといった文化というものが
多くの日本人にとってはあまり「誇り」だと思っていないことに、
その文化を愛する外国人が気がついていないのである。
だから「僕らは君たちの発明したオタク文化が大好き!」って感じで
日本のアニメやゲームの影響を見せつけられても、
日本人にとっては逆にこっ恥ずかしくもあるわけですよ。
例えて言うなら、日本にプロモーションに来た外タレが
「いいとも!」なんかに出演した際に、
受けを狙おうとして日本で流行ってる一発ギャグをやる、
あれを見たときの気恥かしさとでもいうんでしょうか。
そういった意味でも、この映像表現を素直に楽しめるかどうかが
この作品の世界にすんなり入っていけるかどうかの分かれ目になると思う。

じゃあ、ただ「オタク文化」に憧れただけの作品かといったらそうではない。
この作品の核には恋愛における「真実」がきちんと提示されている。
物語の中で、主人公はヒロインの愛を勝ち取るために、
次々と現れるヒロインの元カレ達と文字通り「決闘」をしていくわけなんだけど、
例えば誰かを好きになって勇気を出して告白するということは
自分というものを相手の価値判断に委ねることなわけです。
その際、相手が基準にするのはその人自身の「恋愛観」であり、
具体的には「過去の恋愛遍歴」だったりするわけです。
つまり告白をした時点で、いや、おそらく出会った時点から
自分と過去の恋人とのバトルがまさに相手の中では行われているわけです。
当然、相手が魅力的であればある程その対戦相手は手強いわけだし、
またそうした魅力的な相手と釣り合う存在になるためには
自分自身のレベルアップも重要になってくるわけで、
そのためには自分自身の過去の恋愛も振り返る必要だって出てくるわけです。
つまり、誰かを愛し、愛されるためには常に自己を研さんし、
来るべき戦いに備える必要があるってことを、
この作品は訴えていたようにも思います。

でも、この映画の主人公って「オタク」なんだけど女にモテるんだよね。
無職で、バンド活動してて、でも意中の人と女子高生と二股かけてて。
その辺も日本のオタクには感情移入しづらいようにも思った。
日本で「オタク」やるにはまだまだいろいろと覚悟がいるもんなぁ。