どうも、おささです。

昨夜第83回アカデミー賞の候補作品が発表になり、
「英国王のスピーチ」が最多12部門ノミネートを獲得しました。
これの続くのが10部門にノミネートされた「トゥルー・グリット」。
これまでの賞レースをぶっちぎっていた「ソーシャル・ネットワーク」は
「インセプション」と並んで8部門のノミネートにとどまりました。
アカデミー会員は保守的で、高齢者が多いので、
現代の若者の青春群像を描いた「ソーシャル・ネットワーク」よりも、
比較的わかりやすい感動作の「英国王のスピーチ」の方が
受け入れられやすかったのではないかという意見もあるようです。
さて、アカデミー賞とは全く絡まない別の映画の話を。

「グリーン・ホーネット」

70年代にTVドラマ化された人気アメリカンコミックを
人気コメディ俳優セス・ローゲン主演でリメイク。
ロサンゼルスの新聞社デイリー・センチネルの経営者、
ジェームズ・リードが庭でハチに刺されたことが原因で急死。
彼の莫大な遺産と新聞社は放蕩息子のブリットに引き継がれる。
父の葬儀の翌日、使用人を全て解雇したブリットは
毎朝飲んでいたコーヒーがその日に限ってまずいことに激怒。
それまでコーヒーを入れていた使用人を雇い直すことに。
その男の名はカトーという。上海生まれで孤児院で育ち、
ストリートで暮らしていたところをジェームズに引き取られ、
運転手として働いていたという。
しかも彼には機械いじりの才能と格闘の心得があった。
その才能にほれ込んだブリットは一気に彼を気にいり、
二人で話し合ううちに一つの計画を考え出す。
それは腐敗した町にはびこる悪党たちをやっつけること。
しかも二人は敢えて悪党に扮して悪党たちに近づき、
油断したところでやっつけるというものだった。
早速カトーは完全武装した車「ブラック・ビューティー」を作り、
グリーン・ホーネットと名乗ってスラム街で悪党たちと戦いだす。
しかもその様子をデイリー・センチネルで大々的に報道。
たちまち彼らの悪名(活躍)は世間に知れ渡ることに。
しかも二人は、新しく雇った敏腕秘書で犯罪学に精通する美女、
レノアの助言を参考に、より計画的に悪党をやっつけていった。
一方、町の犯罪組織を支配していた黒幕チュドノフスキーは
早速手下たちにグリーン・ホーネットの素性を探らせるが、
一向に彼らの正体がつかめないばかりか、
他の手下たちも「ホーネットのように独自にビジネスをしたい」と
彼に反旗を翻そうとしはじめたことに激怒する。
ついにチュドノフスキーは奥の手としてある人物に協力を依頼し、
ホーネットの殺害を企てるのだが・・・。

主人公のブリット(=グリーン・ホーネット)を演じるのは
現在全米でトップクラスのコメディ俳優セス・ローゲン。
ここ数年、なかなかアメリカンコメディが公開されないため、
日本での知名度は一部の映画ファンだけにしか伝わってないが、
全米では主演作品が順調にヒットしている。
彼が得意とするのはいわゆる「プアホワイト」とまではいかないか、
いい年してまともな職業についていないような
大人になりきれないボンクラ白人のキャラクターが多い。
だから今回のリメイク版も彼のパブリックイメージに合わせて、
昨今主流のシリアスなヒーローものとは正反対の
かなり能天気な作風になっている。

平たく言えば主役のブリットとカトーはその発想や行動が
子供っぽいというか、もっといえば「ガキっぽい」。
例えばブリットはカトーにいろいろと提案するんですが、
「コミックに出てくるヒーローってさ、ヒーローだって名乗るから
 あとで悪党に弱みを握られてピンチになるじゃん。
 だから悪党のふりをすれば逆に大丈夫じゃね?」とか、
「ブラック・ビューティーに緊急脱出機能とか付けたら
 すっげぇクールじゃん!ちょっと付けてみてよ」みたいに、
正義の味方になることに対してあんまり深く考えてない。
だから彼らが犯罪者と戦う姿もどこか「ごっこ」感が漂う。
すごく金のかかっていて危険も伴う「ヒーローごっこ」。
でも彼らが軽々しく正義を振りかざすこの無自覚さは
一昔前のハリウッドアクションの典型だし、
頭空っぽにして楽しめる娯楽作品としては王道だと思う。

ただ、問題点はいくつかある。
例えば主人公のブリットが放蕩息子になった説明が乏しい。
子供の頃は社会正義のために尽力する父親を見習って
学校でけんかを止めるほどの正義漢だったのに、
あることがきっかけで父親に失望してその正義を封印する。
この経緯はもう少しきちんと描いておいた方が、
後に彼が正義の味方として行動する理由づけに
より説得力が出たような気がすると。
もう一つは、ヒロインのキャスティング。
ヒロインとなる女性秘書レノアを演じるのはキャメロン・ディアス。
この作品の出演者の中で日本で一番知名度が高いのは彼女。
だから米国版のポスターと異なり日本版のポスターには
彼女が真ん中にプリントされているんだけど、
主役の二人に比べると明らかに年齢が高すぎる。
(実際セス・ローゲンが28歳、カトー役のジェイ・チョウが32歳。
 一方キャメロン・ディアスは今年で39歳)
そもそもガキっぽいキャラである主役二人に比べると、
彼女は見た目の面でもかなり大人なため不釣り合いに見える。
のちにブリットとカトーが彼女を巡って大ケンカをするのだが
二人からすれば恋愛対象として年上に見えすぎるので説得力もない。
だからここはもっと若い女優さんを起用するべきだったと思う。


ただ、今年のアカデミー賞で候補になった「インセプション」の
クリストファー・ノーラン監督の前作「ダークナイト」が、
「バットマン」という古典的アメコミを題材に
硬派な犯罪映画を作り上げたことにより、
アメコミ映画全体が堅苦しくなってしまった反動として、
この作品の存在は逆に貴重だなと思う。