奈良博「空海 KUKAI (前期)」第4章② | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

前回


からの続きです。


今回紹介する国宝は、以下の3件です。


・国宝 金剛般若経開題残巻【〜5/12まで】

・国宝 大日経開題【〜5/12まで】

・国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅 <伝真言院曼荼羅>)【〜5/12まで】

胎蔵界金剛界


では、ひとつずつレポートします。



・国宝 金剛般若経開題残巻

【〜5/12まで】


↑過去の奈良博での展示の際、撮影

奈良国立博物館所有の国宝。平安時代(9世紀)の作。

"あらゆる執着を断つ知恵を解く"という「金剛般若経」。それを解説した、空海自筆の書です。

草書で巧みに、流れるように、書いています。考え抜いて書き出した……というより、溢れ出る言葉を、淀み無く書き連ねた……というのが、私の印象です(^o^)
空海の才能ってヤツが、溢れてます!
あのね、"界線"が無いんですよ。つまり、字を真っ直ぐに書こうなんて、考えずに、ただただ考えを文字にしたら、出来上がったって感じじゃないでしょうか?
全巻130cmほどを展示しています。
実はこれ、途中から始まり途中で終わるんです。全巻残っていなくて、一部だけ残ってるんですね~
なので、"残巻"と名が付いてるんです。
さらに、同名の国宝がもう1件あります。京都国立博物館所有のものです。そちらは、後期に展示されますが、元は一巻だったものが、分割されたんです。"空海自筆の文章"ってことで、これを何としても手に入れたい権力者がいた訳ですね~
奈良博本は、有栖川宮家、高松宮家に伝わったものです。

↑巻末の緑でマークした、この部分。
↑エントランスの、一番右の段幕。
↑この部分を、ピックアップしてます。
ん〜、書かれてる意味は、
「智恵の浅い深いの程度は、計り知れないほど限りない。詳細 簡略の程度も、また限りない。"大日経"によると、菩薩の位に達していない者は、言葉の浅く簡略な意味しか理解できないが、菩薩仏は1つ1つの言葉から、計り知れない意味を理解する……」
みたいな感じ(^_^;)
↑また、行間に書き込みなどがあるため、推敲のための"手控え"だと考えられています。

せっかくの機会ですので、ぜひ実物をご覧ください😊






・国宝 大日経開題【〜5/12まで】


醍醐寺所有の国宝。平安時代(9世紀)の作。


密教の根本経典、「金剛頂経」「大日経」。このうち「大日経」は、インドの僧 善無畏と唐の僧 一行が、漢訳しました。

その「大日経」を、善無畏の弟子である一行が、筆録した注釈書。それが「大日経疏(だいにちきょうしょ)」です。

その、「大日経疏」から、空海がメモ的に要文を抜き出したものが、「大日経開題」です。ん?わかりにくい?


「大日経」(善無畏+一行)

「大日経疏」(一行)

「大日経開題」(空海)←今ここ


こんな感じ。


メモ9枚を、1本の巻物に装丁しています。紙質もバラバラ、字粒の大きさもまちまち、斜めになったりしてます。まさに、"メモ"です。

若き日の空海が「大日経」を学ぶにあたって、要点を抜き出してまとめたものです。





・国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅 <伝真言院曼荼羅>)【〜5/12まで】

胎蔵界

Wikipediaより

金剛界

Wikipediaより

教王護国寺(東寺)所有の国宝。平安時代(9世紀)の作。


"彩色"曼荼羅では、現存最古のものです。ようは、カラーの曼荼羅では一番古いそうですよ。

(線描だけの曼荼羅では、前回レポートした国宝 高雄曼荼羅が最古だそうです。)


 <伝真言院曼荼羅>→は、内裏の真言院で行われた、後七日御修法で使用されたと伝わるため。

(西院曼荼羅)→は、空海の住居とも伝わる、東寺の西院(御影堂)に収められていたと伝わるためです。


胎蔵界金剛界、両方を並べて展示してあります。

今回、照明が良くて、微細な部分までよく見えます\(^o^)/

縦180✕横160cmほどの大判のものですが、先に国宝 高雄曼荼羅を見た後だと、小さく見えますね。


私のおすすめは、胎蔵界の、

青で囲んだこの部分にいる、死鬼衆と鬼衆女です。
↑なんと!死体の足や手を、食べてるんですよ!そんな仏様いる〜?

今回、非常に見やすい展示なので、ぜひ見てください\(^o^)/


今回紹介した作品は、すべて5/12(日)までの展示なので、見ておきたい方は、お急ぎください💨


次回は、やっと最終章。第5章で〜す(^_^)/~~