2023 四天王寺 新春名宝展で、国宝「扇面法華経冊子」「懸守(桜折枝文)」を見る | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

四天王寺 


に行ってきました(^_^)/


目的地は、
↑伽藍東側にある、宝物館。

こちらでは、現在「新春名宝展」と銘打って、寺宝の展示が行われています。
お正月の「新春名宝展」では、国宝 扇面法華経冊子が出展されるのが恒例になっています。
↑今年のテーマは「きんきらきん」。
新春にふさわしい華やかなテーマですね。
入館料は500円。
↑こちらがパンフレットですが、全22ページもあってフルカラー、なかなか立派なものです。

四天王寺 さんの名宝展のパンフは、いつも立派なんですよね〜(^_^)


展示されている国宝は、
・国宝 扇面法華経冊子より
巻七扇11「市場図」(1/1~14)
・国宝 懸守より
「桜折枝文」(1/1~18)
の、2件です。

では、レポートします。




・国宝 扇面法華経冊子より
巻七扇11「市場図」(1/1~14)

平安時代の作。

扇形の料紙に下絵を描き、その上に法華経の経文を書いたものです。
いわゆる"装飾経"の1種です。
上の画像は見開きの状態で、たたむとこの半分になります。
このような絵とお経が書かれた料紙を、いくつか綴じた"冊子本"なので、扇面法華経冊子と呼ばれています。

四天王寺では、この扇面法華経冊子を5冊保有しています。
「法華経」巻一
「法華経」巻六
「法華経」巻七
「無量義経」
「観普賢経」
の5冊です。
今回は、その中から「法華経」巻七のうち、「市場図」の展示です。
では、詳しく見ていきましょう。
まず、特徴的なのはお経の書き方。
お経は縦書きなので、扇型の紙に書いていくと、同じ大きさの文字だと書ききれないんです。
扇の端から中央の要(かなめ)に行くにしたがって字を少しずつ小さくしていっているという……芸の細かさを細かく見てみましょう(^_^)
↑紙の上の方は大きな文字で、
↑下に行くに従って、小さい文字にしてあります。そうしないと、下の方は、文字が重なって見えなくなりますからね~

もう一つの特徴は、下絵の上に経文を書くことに由来するのですが、下絵の「黒」の部分に墨で経文を書くと、黒同士で見えなくなることの解決策です。
↑画像中央の女性の後頭部を見てください。漢字の「一」が金泥で書かれていますね。墨から金泥に変えて、文字が潰れないよう工夫しているんですね(^_^)

次は、下絵を見ていきましょう。
扇面法華経冊子は、平安時代の他の装飾経と違って、貴族たちのきらびやかな生活以外に、市中の人たちの生活場面を描いているのも特徴です。
今回展示の〈市場図〉も、市場の賑やかな様子が描かれています。
↑画面右側には、高貴な女性たちが4人連れ立って市場を訪れていますね。
画像左から、①笠をかぶった黄色い衣の女性②扇を頭にかざした女性③笠をかぶった女性④横を向いた女性です。
高貴な女性の必須アイテム"扇"を持っていて、顔は引目鉤鼻(ひきめかぎばな)で描かれています。高貴な人物は引目鉤鼻で描かれます。
↑市場で働く女性と見比べると、明らかですね。左の市場の女性は、"ブタ鼻"に描かれています。

さて、市場では何が売られているのでしょうか?
↑机の上には、カゴに入ったオレンジの丸いのがありますね。"柿"でしょう。その横のシマシマな何だかわかりません。さらに横には白い反物がたたまれています。
床には四角いカゴに入った、丸いスイカみたいなのも見えます。瓜でしょう。
↑右上の四角いカゴには、里芋やナスが沢山入れられています。
↑画面左では、一段高いところにいる男性に、少女が何か話しかけてますね。

セレブ女子たちが、街にショッピングに出掛けた様子です。

平安時代の日常が伺い知れる、楽しい画面です\(^o^)/

今回の展示では、たたんだ状態でこれを保管しておく"カバー"も併せて展示してありました。
このカバーは初めて見ました(^o^)
カバーなんてあるんだ〜

しかし、残念ながら展示は1/14で終了しましたm(_ _)m




・国宝 懸守より
「桜折枝文」(1/1~18)

平安時代12世紀の作。

「懸守」とは、昔の人が首から懸けていたアクセサリー(御守り)と考えられています。


珍しい美術工芸品で、国宝ではこの四天王寺の1件(7点)と、熊野速玉大社の国宝 古神宝類に1点だけが、指定されています。
↑過去の名宝展のチラシです。全7点あります。
現在は、丸で囲った「桜折枝文」を展示しています。
↑「桜折枝文」の形状は、俵型を五つ積み重ね、断面が桜の花びらを模すようデザインされています。

懸守本体は木製で、その上に豪華な錦が貼られています。錦の劣化がありますが、7つの中では良く残っている方です。
細かく見てきましょう。

↑首からかけるために、リングが2つ付いてますね。

そして、桜を透かし彫りした精緻な金細工があしらわれています。桜の花の中には八重桜もあり、薄い銀を三重に重ねて表現しています。

一重の桜は、金の透かし彫りで、八重桜は銀で三段重ねで作られています(^o^)
凄い超絶技巧です。単眼鏡でじっくり見てくださいね♪


しました。
その仏龕を3Dプリンタで出力したものをベースに、復元模造したものも展示されています。
↑高さ5.5cmほどのとても小さな円筒形で、縦にスパッと切って横開きにできるようになってます。それぞれを内側にくりぬきつつ、一方に仏像を彫刻し、もう一方には香炉と花瓶2つを乗せた卓を彫っています。
仏像の大きさは3cmほど。それを分解せずに再現させる現代技術スゲー(^o^;)

懸守「桜折枝文」は1/18まで展示されてますので、現物を見に行って下さい。

また、1/19~2/5には、「花菱七宝文」に展示替えされます。

以上です(^_^)


昨年末は、遠出することが多く、出費がかさみ過ぎてしまいました……
そこで、今月は近場での国宝鑑賞が中心です。