東博「最澄と天台宗のすべて(前期)」後編 | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2024年9月現在の国宝の総数1,143件。そのうち、美術工芸品912件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。


」前期展示のレポート後編です(^_^)/


・国宝 智証大師(円珍)坐像 御骨大師

園城寺所有の国宝。平安時代(9世紀)の作。

園城寺とは三井寺のことです。

こちらのお像も、レア物ですよ〜!
智証大師 円珍の坐像は三井寺に2体あり、2体とも国宝です。もう1体 中尊大師は毎年10/29に公開されます。
で、この御骨大師は、円珍 自らの遺言により彫られました。円珍の遺骨が胎内に納められていることももあってか、なかなか公開されません!!
10年に1回くらいじゃないかな?

なおかつ、お寺では厨子の中なので、見づらいのですが、博物館では独立展示ケースに入っていて、間近で、しかも背中まで、覗き込んで見ることができます。

円珍は卵型の尖った頭が特徴、天台宗第5代座主です。最澄→円仁→円珍と、唐に渡った入唐僧の一人でもあり、持ち帰った経典等多数が国宝にも指定されていますよ。

クチビルが赤いですねぇ〜(^_^)
肌色や眉毛、目の瞳など、彩色も良く残り、保存状態も良好です。
この機会にぜひ見ておきましょう(^_^)/



・国宝 五部心観 前欠本【~10/31まで】

園城寺(三井寺)所有の国宝。平安時代(11世紀)の作。

五部心観は2巻の巻子本です。
1巻は円珍が唐で貰ってきた完本。もう一巻は、それを日本で書写したものの、前半を失ってしまった前欠本です。
今回展示は、前欠本です。

五部心観は、善無畏(ぜんむい)が表した、金剛界の仏様の一覧表みたいなものです(^_^;)
お姿・真言・印・法具が、主にイラストで表されています。彩色の無い線画なのですが、キレイに描かれています。筆というより、ペンで描いたかのようです。
巻末4mほどを展示していて、最後に柄香炉を持つ善無畏の姿を描いています
ここでの注目は、この善無畏の姿。髭モジャで描かれていますが、くるりと振り返って、国宝 聖徳太子及び天台高僧像の方の善無畏とは同一人物なのに、似ても似つかない顔です。



・国宝 智証大師関係文書典籍より福州温州台州求法目録【~10/31まで】

園城寺(三井寺)所有の国宝。中国は唐時代 大中8年(854年)の作。

巻頭3mほどを展示しています。
円珍が唐に渡って1年目に、福州・温州・台州で入手した、典籍や法具の目録。円珍の自筆です。
細身のヒョロッとした字で、あんまり上手くありません(^_^;)



・国宝 六道絵
人道浄相幅【~10/31まで】
人道苦相 I 幅【~10/31まで】
人道苦相 II 幅【~10/31まで】

聖衆来迎寺所有の国宝。鎌倉時代(13世紀)の作。

昨年、大津歴史博物館で全15幅見ましたね。
その時よりも、光量が多いのでよく見えます!
なので、詳しくレポートします!
本物は現地で見てください(^o^)

人道浄相幅【~10/31まで】
向かって左の絵です。
女性の遺体が腐乱し、朽ち果て、白骨化するまでを、季節の移ろいとともに描いています。
こちらは、上からジグザグに見ていけば良いので、わかりやすいです。
ポイントは遺体の横にある木。遺体の腐乱具合とともに、春→夏→秋→冬と変化していることに着目してみて下さい。

人道苦相 I 幅【~10/31まで】
向かって右の絵です。
産み・老い・病・別れの苦しみを描いています。
こちらは、左下から上方向にジグザグに上がって、見ていきましょう。
一番下の段。
屋敷の中で、出産です。壁を隔てた縁側で弓の弦を弾いている男は、魔を払っているようです。屋敷の手前では、陰陽師が裁断を前に祈祷しています。
下から二段目左。
屋敷の中で、鏡を見て嘆いている老婆。鏡に顔が写っています。芸が細かい!老いの苦しみです。
下から二段目中央。
垣根のところに、子供に手を引かれているヨボヨボの老人。
下から二段目右。
束帯姿の老人も、寄る年波には勝てません。若人に付き添われています。
下から三段目左。
左の木の下、戸板の影で病人が子供と喋っています。その上を見てください!鬼が病人に小槌を打ち振るっています!病の原因はコイツでした!
下から三段目右。
屋敷の中で、嘔吐する老婆。病の苦しみです。
一番上の段。
葬送の場面です。

中央の絵です。
死・病・別れ・貧困・災厄の苦しみを描いています。
こちらも、左下から上方向にジグザグに上がって、見ていきましょう。
まずは、一番下左から。
夫婦の間に幼い子供の亡骸、夫婦は泣いています。
一番下右。立ちすくむ僧の視線の先には、死んでしまった母親。乳を求めて赤子がしがみついています。(この赤ちゃん、ぜひ見つけてください)
小屋の上のカラスが不気味です。
下から二段目右。
屋敷の中です。妻を膝枕する夫。病で亡くしてしまったのでしょうか?
下から三段目。
馬に乗り、戦へ向かう武者。家族が屋敷の中から、別れを惜しみます。
下から四段目。
合戦です。憎み合い、殺し合います。
下から五段目右。
貧困。つっかえ棒で、なんとか倒れずにいる小屋の中には、植えた家族がいます。その目には何も写っていないのでしょう。
一番上の段。
火事です。大きな屋敷ですが、火は燃え広がり、為す術もありません。



・国宝 法華経(浅草寺経) 巻第二

こちらで画像 


が見られます。

浅草寺所有の国宝。平安時代(11世紀)の作。

巻頭から2mほど展示されています。
華麗な装飾経です。料紙は表裏ともに、金のちらし箔が撒かれていて、とてもゴージャス。金の界線が引かれています。("界線"はお経を真っ直ぐ書くための罫線)
本文のお経は、1行17文字で書かれている、オーソドックスなスタイル。

特徴的なのは、きらびやか過ぎる見返し絵。
「三車火宅」の例えが描かれているのですが、金泥で描かれているので、見えにくい見えにくい(^_^;)
さらに、絵全体に金箔が撒かれて、より見づらくなっています。
かろうじて、屋敷と3つの引き車が確認できます。




慈光寺所有の国宝。鎌倉時代(13世紀)の作。

"法華一品経"とは、法華経28品を各1巻に仕立てたもの。そのため、1巻あたりの長さが短かったりします。今回展示品は1.5mほどを全巻展示しています。

こちらも装飾経ですが、趣が異なります。
見返し絵は、墨のように真っ暗の下地に、金泥で絵が描かれています。
絵は、屋敷の中で法華経を読み書きする僧侶たち。外には天部たちがそれを守護しているようです。
一転して本文の料紙は、金銀箔、野毛、砂子を散らしたきらびやかなもの。楷書で1行17文字が墨書されています。



・国宝 普賢菩薩像【~10/31まで】

豊乗寺所有の国宝。平安時代(12世紀)の作。

三面鏡のような額で展示されています。
白象に乗った、普賢菩薩像です。
菩薩の光背が、とても細かく截金(きりかね) や金泥で描かれていますよ。
(截金は、金箔を細〜く切って貼り付ける装飾技法)

目を引くのは、やはり白象。鼻で未敷蓮華を持ってます(カワイイ)
(未敷蓮華は、咲きかけの蓮の花)
普賢菩薩の乗る白象は牙が6本なのですが、見づらいですねぇ(^_^;)
仏が蓮華座に座しているのと同様、このゾウさんも、それぞれ蓮台に足を乗せています。鼻と尻尾も蓮台に乗っけてる!



・国宝 釈迦如来倚像(しゃかにょらいいぞう)

深大寺所有の国宝。飛鳥時代(7世紀)の作。

初めて見る国宝です(^_^)
これ、見たかったんですよ〜
もっと大きいお像を想像していたのですが、意外と小さかった……

いい顔してます。
優しい気持ちになれる、像ですねぇ。

非常に珍しい、椅子に座っているお姿。銅像の倚像って初めて見ました。
衣文線が単純で、飛鳥仏っぽいですね。しかし椅子にかかる衣が、裳懸座のようになってます。

独立展示ケースで展示されているので、背中まで見られます。お寺では、絶対ムリなので、ぜひ見ておいてください。(何が見えるって訳でも無いですが…)

国宝の紹介は以上です。
そして、展示室内では、比叡山延暦寺 根本中堂内にある「不滅の法灯」が再現されていました。
法灯の灯が消えてしまう事の無いよう、毎日お坊さんが油をついでいます。
うっかり忘れると灯が消えちゃう!
これを「油断する」といいますが、この「不滅の法灯」からきているそうです(^_^)

今回は、文字多めですね(^_^;)

後期も訪問予定ですので、また、レポートしま〜す(^o^)/