2021年 陽明文庫講座 | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

またまた、京都は北山にあります、京都学・歴彩館 へ行ってきました(^_^)/

今年に入って3回目だ(^_^;)

京都学・歴彩館 で毎年行われている、陽明文庫講座 に今年も参加しました。

陽明文庫は、時の首相 近衛文麿が設立した、近衛家伝来の書籍・資料を保管する施設で、私の好きな国宝「御堂関白記」をはじめ国宝8件、重要文化財60件を所有しており、現在は公益財団法人となっています。

近衛家は公家の最高位のひとつで、摂政・関白になることのできる「五摂家」の筆頭。このブログでも度々書いているように、公家にとって朝廷での行事・儀式を抜かり無く執り行うことが最も肝心。各家で伝承し、家の永続と繁栄を図ります。
そのため、数万にもおよぶ、文書類が残されています。
さて、この陽明文庫講座 、昨年から参加しているのですが、今年はコロナの影響で開催が約一ヶ月ほど遅れ、3/14開催となりました(^o^;)
事前申込者のみの限定で、座席の前後左右を空席にして、コロナ対策をとっての開催となりました。

講座は、
〈1部〉
「孔林楷杯」
陽明文庫 名和 修 文庫長

2部は、
「院政期の紙背文書から」
東京大学史料編纂所の田島 公 教授
「修理を終えた史料から」
東京大学史料編纂所の尾上 陽介教授
「豊臣秀次に関する書状から」
東京大学史料編纂所 遠藤 珠紀 准教授
という構成でした。
↑いただいた資料類。

1部は、本講座のキービジュアルにもなっている「孔林楷杯(こうりんかいはい)」についての紹介。

内側が金色に塗られた、奇妙な器(^_^)?
これ、お酒を入れて飲む、杯(さかずき)なんです。
奇妙な形なのは、木の根っこだからで、内側をくりぬいて漆を塗り、外は白木の状態です。
素材の木の根は、中国にあった孔子の一族の廟(びょう)に植えられていた木の根だそうで、中国と交流のあった琉球士族であった"程 順則(てい じゅんそく)"が、近衛家熙(このえ いえひろ)に献上したものです。
この「孔林楷杯」が近衛家に伝わった経緯を、陽明文庫の文書と共に紹介されました。


2部は、東京大学史料編纂所の教授陣による陽明文庫の文書の研究です。
いずれもアカデミックな内容で、エンターテイメント性は無いので、一般受けはしなさそう(^_^;)

遠藤 珠紀 准教授の「豊臣秀次に関する書状から」が、若干一般受けしそうだったかな?


」で衆目を集めた、近衛前久(このえ さきひさ) 


の書状が紹介されました。
近衛前久が「豊臣秀次、殺されちゃったってよ、近しい者たちも京の三条河原で、市中引き回しの末、斬首だよ~お前も気を付けろよ!」と、息子に宛てた手紙です。誰がどんな殺され方をしたのか、かなり詳細に書いてました。(女子供ばかり)
この時、前久の息子 近衛信尹(のぶただ)も豊臣秀吉に睨まれていた頃だったので、かなりヤバヤバな感じです(^o^;)
文中に「火中 火中」と何度も書いています。「火中」とは、火の中にくべろ!つまり、読んだらすぐに燃やせ!ってことです。
この手紙を秀吉に読まれたら、俺達もヤバいぞっ!
って、前久の心中が伺えます(>_<)


昨年、広島の筆の里工房で開催された「陽明文庫展」

 


に行ったので、近衛家熈(いえひろ)がどんな人物で、「槐記」はどんな書物で……といった、陽明文庫の予備知識があって理解が助けられました。

国宝の話しは、ありませんでしたが、ちょっとだけ、国宝 倭漢抄 下巻について、新しい知見を得ました。
↑図録によると、国宝 倭漢抄は上巻を無くし、下巻のみが伝わっていますが、この下巻は、上巻・下巻の2巻あるそうです。

そこで、筆の里工房での「陽明文庫展(前期)」で、私が見たものを確認すると……
下巻の"下巻"でした(^_^)


なかなかに、アカデミックな内容でしたが、いろんな知識が得られました。