京博 特集展示 「国宝 「日本書紀」 と東アジアの古典籍」(後編) | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

京都国立博物館で現在開催中の、特集展示 「国宝 「日本書紀」 と東アジアの古典籍」のレポートの続きです(^-^)/

前編のレポートはこちら 



そちらで展示されている国宝は、


ここまで前回レポート 。

以下、今回レポート。

・国宝 稿本北山抄 巻第十  藤原公任筆
の8件10点。

では、続きをレポートします。



京都国立博物館所有の国宝です。
全8巻ありますが、そのうち巻第四を展示しています。
この巻第四は、飛鳥時代 慶雲3年(706年)に書かれたもの。中国 隋で書かれたものを、日本で書写しています。
すごいですねー(^o^;)飛鳥時代のものが、しかも紙製のものが、未だに残っているんですね。

全8巻のうち、この巻第四と巻第六の2巻のみが飛鳥時代のもので、他の巻は平安・鎌倉時代に補完されています。
紀年(今で云う和暦)で年代が書かれた最初の書物だそうです。
巻末に記されているので、そこを展示しています。

内容は「維摩経」の解説書となっています。



・国宝 稿本北山抄 巻第十  藤原公任筆

京都国立博物館所有の国宝。平安時代(11世紀)の作。
和漢朗詠集の撰者で、小倉百人一首にも載る、歌人として有名な藤原公任(ふじわらのきんとう)の自筆です。
藤原道長や紫式部と同時代の人ですね(^_^)

"北山抄(ほくざんしょう)"は、今風に云うと、藤原公任がまとめた、宮中での"事務処理マニュアル"です。当時はこういったマニュアルを組織が作ると云うことはあまり無く、個人(一族)が作って代々伝えるのが基本でした。
誰もが一定レベルの仕事がこなせる様になるのは、良くなかったんです(^_^;)
その人(一族)だけができる仕事にしておかないと、他の人(一族)に乗っ取られるから……
公任も同様に、一族の永続と繁栄のため、この"北山抄"をまとめました。

"北山"の名は、京都の北山が、公任が過ごした地であることに由来します。
"稿本"と付いているのは、"草稿"だったから。しかし、草稿ゆえに、公任の自筆だったため、現存唯一の自筆本として価値が高まりました。(草稿なので字が汚い(^_^;)
国宝の北山抄は2件あり、もうひとつは前田育徳会が保有していますが、自筆ではありません。(過去のレポートはこちら 


)

面白いのは、こちらも紙背文書になっている点です。
公任がやり取りした「手紙」の裏に、北山抄を書き付けているため、手紙の内容が見てとれます。それが見えるよう、うまぁ~く展示してくれています!見事な展示方法です!

検非違使別当を務めていた時期の手紙には「犯人」などの文字も見え、リアルです。




旧三菱財閥の本家 岩崎家に伝わったものですが、現在は京都国立博物館所有の国宝。平安時代(10世紀)に書写されたものです。

巻第二十二と第二十四のみが、残っていて、巻第二十二は推古天皇紀、第二十四は皇極天皇紀です。

巻第二十二
推古天皇の事績が書かれています。
女性天皇といえば推古天皇。推古天皇といえば聖徳太子(^o^)
この巻には私たちがよく知っている、聖徳太子の事績が書かれていますよ。
ちょっと、見てみましょう。
こちらには9~11行目に、冠位十二階の制のことが書かれています。大徳・小徳・大仁・小仁・大礼・小礼・大信・小信・大義・小義・大智・小智の12階の冠位が並んでますね。
15行目には十七条憲法のことが書かれてますね。
こちらには、遣隋使 小野妹子のことが書かれています。最初の行に名前が見えますね。
ちょうど、これらの部分が展示されています。
薄い界線が引かれ、流麗な楷書で見やすい字です。

巻第二十四
皇極天皇の事績が書かれています。
大化の改新のちょい前くらいの時代なので、蘇我蝦夷・入鹿が台頭してきた頃です。
こちらを見ると、「入鹿」「中大兄」「中臣鎌子(鎌足の初期の名)」があちこちに見られます。
展示されている部分に必ずあるので見つけてみてね♪

歴史で習ってきたことの元ネタを、肉眼で見て確認できるのは、感慨深いです。
さすが国宝\(^o^)/

薄い界線が引かれ、楷書で書かれていますが……さっきの巻二十二の方が、字がキレイf(^_^;
京都国立博物館の門の題字は、この国宝 日本書紀 巻第二十二・第二十四(岩崎本) から取ったものだそうです。




日本書紀は天智天皇が、
「日本の歴史書を作ろう!
唐(中国)の人でも読めるように漢文で書いてね」
と言って作らせたのが始まりです。

全30巻で最初の2巻が「神代巻」といって、神話の時代の話し。後は、1巻1天皇で年代順に書かれています。起こった出来事を年代順に記していくのを「編年体」というそうです。

そして、その最初の2巻「神代巻(かみよのまき)」が、今回展示されています。
京都国立博物館が所有する国宝。
卜占(ぼくせん)を司る 卜部(うらべ)家に伝来した鎌倉時代(13世紀)の写本です。
"卜部"家は、途中で"吉田"姓に変わるため、「吉田本」の名がつています。

上巻は、巻初から5mほどの展示です。
出典:ColBase 

巻初に「卜兼方」のサインがありますね。卜部兼方の筆によるものです。
↑緑の囲みがサイン。
「日本書紀巻第一……」から文章が始まっています。
「岩崎本」に比べ、幅広の界線に大きな字で書かれ、ものすごく多くの注釈が入ります。

下巻の方は、巻末5mほどの展示です。
紙背のも注釈が付され、それも卜部兼方の筆によるものです。


うん。良かったです(^_^)
やはり、肉眼で直接見るのは良いですね♪
ネット全盛の時代で、国宝も画像で見られるものもありますが、
「鎌倉時代、平安時代、飛鳥時代に生きた、生身の人間が書いたものを、やはり生身の自分が見る」
ことに、醍醐味がありますね~

これだから、国宝鑑賞はやめられない。