京都文化博物館「近衞家 王朝のみやび陽明文庫の名宝⑩(後期)」 | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

全国の藤原道長ファンの方、お待たせしました(^_^;)  (いないんだろうなぁ……)

京都文化博物館で開催中の「近衞家 王朝のみやび陽明文庫の名宝⑩」の後期展示へ行ってきました。

陽明文庫は、公家の名門で「五摂家」の筆頭である"近衛家"が保有している古文書類を保管・管理する施設。近衛文麿が創設したそうです。

天皇が京都を離れ、東京に移られた後も、京都に残り代々受け継いだ資料を管理してきました。
京都に残った事が幸いし、東京大空襲などの被害にあわず、現代にその貴重な資料を残してくれています。
その陽明文庫の秘宝の中から、今回展示されていた国宝は、

・国宝 御堂関白記 自筆本(寛弘四年下巻)

の1件のみ。

附指定の 国宝附 御堂御記抄(長徳元年)
の展示もありました。

では、レポートします。
国宝 御堂関白記は、このブログをご覧の皆さんなら既にご存知、平安時代 摂関政治で頂点を極めた、藤原道長(ふじわらのみちなが)の日記です。

「この世をば 我が世とぞ思ふ望月の 欠けたることも 無きと思へば」
の句でも有名ですね(^_^;)
(この世のなかは、完全に私の世だ。まるで満月のように、欠けたところなど無い)
とまで言わしめ、権勢を振るいました。

その出世街道を駆け上がって行く様子を、この国宝 御堂関白記には道長が自筆で記しています。
陽明文庫の中でも、"国宝"かつ"ユネスコ世界記憶"の2冠を持つのは、この御堂関白記のみです。

国宝 御堂関白記の自筆本は、巻子(巻物)形式。今回展示部分は、寛弘4年(1007年)11月28日~12月19日まで、1mほど展示されていました。

ピックアップされていたのは、12/2と12/10でした。
この日、何があったかと云うと……

12/2
「二日、甲午。寅時を以て、女方を具し、木幡寺に詣づ。塔の会なり。」
女房 倫子と不幡寺の塔供養に行った。

12/10
「十日、壬寅。・・・法性寺、未だ額を懸けず。僧都の示すに依り、之を書きて及ぼす。本より能書に非ず。度々、堪へざる由を示すと雖も、云ふ所の功徳に依りて故らに之を書く。」
法性寺の額を書いた。

という、とてつもなくつまらないエピソードです(-_-;)

スペースが足りなかったのでしょう。書ききれなかった部分は裏に書き込んでいます。紙の裏に書き込みがあるのが、うっすらと見てとれます。

法性寺の額については、「自分は字がきたないからイヤだ」と云ってますね(^_^;)
うん。知ってる。
1000年後に、あなたの直筆の日記見てるから(^o^)/
国宝附 御堂御記抄(長徳元年)

御堂関白記の古写本の断巻です。長徳元年(997年)の巻が出てました。
巻初の1m、5・7・9・12月の部分が展示されていました。ピックアップされていたのは、
5/11
「十一日。宣旨。」とあります。
道長に"内覧の宣旨"が下った事を意味しています。
"内覧の宣旨"とは、天皇のがご覧になる文書を、天皇より先に見ることのできる職の事をいいます。
それは、天皇に"見せる見せない"を選択できるということ。つまり、天皇への情報操作ができるということです((( ;゚Д゚)))
国宝の御堂関白記では失われている部分、道長が権力を握ることとなる第一歩の部分です。

以上が国宝絡みの展示でした(^_^)/
これだけでは寂しいので、国宝ではありませんが、陽明文庫のお宝をいくつか紹介しますね~


先に書いたように、近衛家は「五摂家」の筆頭で公家の名門。
"五摂家"というのは、摂政・関白を排出することができる家柄。
近衛家・九条家・二条家・一条家・鷹司家が、該当します。

一番の有名人は、藤原道長ですが、近衛文麿も有名ですよね。

最近だと……

その、近衛前久の直筆の書も展示されています!

展示No.7「近衛前久 和歌懐紙」です。
近衛前久の晩年の詠です。出家し名を"龍山"と改めています。

「詠梅近聞鶯」のタイトルで、

「聞くからにちとせ(千歳)の春を含みつつ
軒はの むめ(うめ)に
き鳴くくうくひす(うぐいす)」
と詠んでいます。んー雅ぃ~(^_^;)

ぜひ、実物を近衛前久の直筆を見てください!
展示No.16「消息」
"消息"とは、お手紙の事です。
内容は、孫から届いた和歌、その上達を喜ぶお爺さん近衛基熙(このえ もとひろ)って感じです。
「和歌が上達していて、お爺さんはとても嬉しい。それに甘んじる事無く、精進しなさい」という文章の後に、返歌を詠んでます、それが……
「冬草に 今朝 珍しき 雪よりも
ことばの花を
見るがうれしき」
公家といえど、なんとも微笑ましくないですか?(^o^)/
最後に紹介したいのが、
展示No.5「春日権現霊験記 巻第十七」

宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の皇室御物、春日権験記絵の江戸時代の摸本です。
う~ん。これねぇ~。なんかね~。メチャクチャなんです(>_<)
オリジナルは鎌倉時代の作なんですが、現代人と中世の人は同じ日本人でも、メンタリティーが違うってことが良くわかります。
内容も変ですが、描いている絵も変。
巻第十七の最後は、女の人がおしっこしてる場面(第十七軸の15/15)で終わりますからねぇ(>_<)
(どうして、おしっこしてると断言できるかって?それは、高下駄を履いてるから。隣の親子は草履を履いてるでしょ。中世のトイレ事情は、こちら


を参考にしていただければ幸いです)

まあ、京都文化博物館へ、実物を見に行ってください。

10/18までの展示です(^_^)/~~