週金曜日に取材で訪れた「Region」の編集者から「昔の写真を貸してください」とお願いされたので、さきほど昔の写真が入った箱の中を調べていたら、おもしろいものが出てきました。

昔の手帳です。

日付はあるものの年号が記されていないので正確なところは不明ですが、内容からしてどうも1990年代初めの記録のようです。

懐かしい記録ばかりです。

それはともかく、その手帳の中におもしろい記述が出てきたのです。

二つ紹介します。

まず初めはタイのある島を訪問したときのことについて書かれた箇所です。

「人々が平凡な日常生活を営むところこそ、人生または命の息吹というものが感じられる。この島のように観光地化されてしまった土地には、そのような純粋な意味における人々の暮らしは感じられない。そこにあるのは日常を逃れ、つかの間の『楽園』を楽しむ西洋人の集団と、観光客から金を巻き上げようとする現地人との非日常的な関係が存在するにすぎない。すべてが『虚構の世界』だ。虚構の世界に真実の生は存在するのか?」

次は(こちらは年号を覚えていて)1991年春に初めてオーストラリアを訪れた際に記した一文です。

「昼食時、イタリアから移住したという夫婦とテーブルを伴にした。定年退職した後、ブリスベンに住む3人の息子を訪れたという。ゆったりとした話しぶり、話好きのおばさんに、実に表情豊かなご主人。人生を楽しんでいる様子がありありと感じられる。両親の世代には、生活するだけで精いっぱいという状態、生活を楽しむ余裕はなかったという。おじさんも言っていた。『お金をかけなくても人生を楽しむ方法はあるんだ』――本当にそうあるべきだと思う」

どちらも20年以上も前に旅先で書かれたものですが、今やろうとしていることと直結していることに驚かされます。

スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式のスピーチで話していた「点をつなげる」、そのものではないですか。

そのときは、なぜそのようなことをしていたのかわからなくても、時がたてば、それが今につながっていることがわかる――20年以上もたってから、旅先のタイやオーストラリアで感じたことが今につながるなどとは、当時は思ってもみませんでした。

過去の数々の「点」が今このようにして少しずつつながりつつあることを実感できるのは、とてもハッピーなことといえます。

これからそうした点がどんどんつながり、面となり立体となるよう、努力を続けていきたいですね。



$いなかパラダイス―辺境からの問いかけ-フィリピン、バシラン島にて
フィリピンのバシラン島を訪れた際に撮影した写真(おそらく1996年か97年ごろに撮影)