返りを求めない生き方――

それは理想的な生き方の一つといえるが、そう簡単にできるものではない。

でも、身近にそういう人がいると、やる気が出るというか、その人のまねをしたくなったりするものだ。

幸い、ぼくのまわりには、そういう生き方を実践している人がいる。30年ほど前から自分の土地に文字通り埋もれていた史跡を自分の手で掘り出し、地域の歴史を見直すうえで大きな貢献をした人だ。

その人がよくぼくに言う。

「あのね、いいかい。お金とかなんとか、見返りを求めて行動したらダメだよ」

その結果、彼の人生で何が起きたかというと、彼の打算のない行動を見て感動する人、大きく評価する人が出てきて、その史跡を核としてさまざまな動きが生まれているのである。

純粋で無垢な気持ちに裏付けられた行動が人々の感動を呼んでいるわけだ。

彼には遠く及ばないにせよ、ぼくもそういう気持ちで今の仕事に取り組みたいものだ。