パウル・クレーの抽象画「砂の植物」
 
学生の頃、吉行淳之介を読み漁ったことを思い出し、図書館で探したが単行本はなかなか見つからず、ようやく全集を見つけた
もはや忘れ去られた作家になってしまったのだろうか
小説の中身はほとんど覚えていなかったが、読み進めていくうちに「流れる精神」を思い出してきた
 

内容
中年の化粧品セールスマン伊木一郎が、偶然知り合った18歳の津上明子に求めるもの、明子に頼まれて誘惑する姉京子に求めるもの、そして妻の江美子に求めるものも、心ではなくただ女体であった。疚しさとも歪んだ心持ちとも無関係な、常識を破るショッキングな肉体の触れ合いの中に、真の性的充足を探り、性の根源にメスを入れた野心的長編。
 
男女の間の性を淡々と?生なましく描いている
早世した父に支配される主人公伊木が、女性と出会い常識を越えることによって性の充足を獲得する
そして己の孤独感と、生命の充実感の中で自立していく
 
大学生になったばかりの私には吉行淳之介のエッセイを読み、男性サイドに立った思考が自分の考えを後押ししてくれるような気がしていたが
今読めば、男性側に偏り思い描く女性の姿だと思えた
作品が発表された当時としては性に正面から向き合った作品を捉えられたのだろう
 
淳之介は飲食店に入る時は、入口のショーケースであれこれ迷うのではなく、入る前から決めておくべきだ…と書いていたが若いころはそれに賛同していた(笑)
 
後に淳之介の母が美容師のさきがけの「吉行あぐり」で、妹は俳優の「吉行和子」と
作家の「吉行 理恵」だと知った
 
 
昭和な日活の映画(1964年公開)ポスター